法医学者である娘と刑事の父を中心に、家族のかけがえのない日々を描く『監察医 朝顔』第2シーズン(フジテレビ系/毎週月曜21時)で、主人公・朝顔を好演している上野樹里。月9ドラマとしては初の2クール放送がスタートし、視聴者からは家族を思う気持ちや行動に胸を打たれ「号泣した」という声が相次いでいる。第1シーズンの放送から約1年。再び朝顔を演じる上野に、ドラマへの思いや家族の絆、そしてこれまでの女優人生について聞いた。

【写真】優しいほほ笑みを見せる上野樹里 撮り下ろしショット

■前向きに生きようとする“朝顔”の姿は失いたくない

 2019年夏クールに放送された第1シーズンでは、さまざまな事件で遺体から“生きた証”を捜す一方、母・里子が東北の実家に帰省中に東日本大震災で被災し、行方が分からないという癒えることのない悲しみを少しずつ乗り越えていく家族の姿が大きな感動を呼んだ本作。第2シーズンは、前シーズンの翌年5月から描かれる。父・平(時任三郎)、夫・桑原真也(風間俊介)、娘つぐみ(加藤柚凪)らと変わらない日常を過ごす一家だが、朝顔は手にケガを負った父の代わりに、東北へ母の遺体と“生きた証”を探しに行く。

 新型コロナウイルスの影響により、放送日が後ろ倒しになったりと放送までには苦労も多かった本作だが、上野は「撮影がスタートしてからは止まることなくやってこれました。長い期間に渡って、皆さまに観ていただけることはうれしいです」と笑顔を見せる。そして、「(2021年3月に)東日本大震災から10年という節目を迎える今だからこそ、やる意味があるのかなと思います。さまざまな感情と向き合いながら、皆さんと一緒に過ごせたら」と真摯(しんし)に語った。

 今シーズンでは、朝顔の成長した姿もポイントの1つ。「朝顔は、(前シーズンで)母の死を乗り越えて、母親になって、やっと母の故郷(東北)にも行けるようになりました。今回は『前を向いて生きる』ことに自信がついた朝顔の姿や法医学教室のみんなと仲を深めた姿を届けられると思います」と話す。

 「法医学教室のみんなとはギャグを言い合えるくらい、朝顔にも心の余裕が出てきました。この先も朝顔にはいろいろなことが起こると思いますが、前向きに明るく生きようとする朝顔の姿は決して失いたくない。何があっても、乗り越え、くじけずに生きていってほしいという思いを持ちながら演じています」。

■改めて感じた家族の絆「なんてすてきな家族に嫁いだんだろう」

 先週までの放送では、父が書いた東北への転出届を朝顔が見つけるシーンもあり、今後2人の関係にも変化が見られる。

 「朝顔は、本当はお父さんとずっと一緒に暮らしていたいけれども、同時に、お父さんには自分で自由に選択をした人生を生きてもらいたいとも思っています。愛情があるからこそ、お父さんの決めたことは寛大な気持ちで受け入れたい。そして、お父さんが困ったときには、自分の休みを削ってでも手助けしようと思っているんです」と朝顔の思いを代弁した。

 朝顔と平の関係に代表されるように、“家族の絆”は本作の重要なテーマとなっているが、上野自身が感じた“家族の絆”を尋ねると、義父の和田誠さんとのエピソードを教えてくれた。

 「誠さんがお亡くなりになられたとき、大きなお葬式をしてほしくないという願いがあるだろうと家族だけで見送らせていただいたのですが、みんなが誠さんのために持ち寄ったものがすごくすてきだったんです。夫(和田唱)は大事にしていたオリジナル版のフランク・シナトラのレコード、(義母の平野)レミさんは誠さんが大好きなものを詰めたお重を作ってきて…。誠さんはデニムが大好きで、いつも履かれている方だったので、お見送りの際にはみんなでデニムを履いて、大好きだったシナトラの曲をかけながら、温かい雰囲気の中、お見送りできました。その時に、なんてすてきな家族に嫁いだんだろうって強く感じました」。

■「スターを目指さなくていい」「普通がいい」17歳で心に留めた言葉

 2021年には、女優デビュー20周年を迎える上野。改めてこれまでの女優人生で「一つとして無駄な出会いはなかった」と振り返る。「全部が今の私を作っていると思う」と話す中でも、上野が17歳のときに撮影を行い、翌2004年に公開された主演映画『スウィングガールズ』は特に思い入れが深く、「大事な出会いだった」といい、心に留めた言葉があった。

 「(『スウィングガールズ』の)矢口史靖監督との出会いは、特に私にとって大きなものでした。監督から当時、『スターを目指さなくていい』という言葉をいただいて、ハッとさせられたのを覚えています。どうしても、主演を務める回数が多いと、自分が人よりも何か一つでも優れていなきゃいけないという気持ちや焦りが出てきてしまいがちなのですが、監督は『スターになるとつまらない。普通がいいんだ』と言ってくださった。その言葉は、私に今でも大きな影響をもたらしていると思います」。

 矢口監督の「普通がいい」という言葉は、本作のヒロイン・朝顔にも当てはまる。上野は「朝顔は特別に何かが優れている、カッコいいヒロインじゃないというのも、私にはうれしい。朝顔を演じることができて幸せだなと改めて思います」とほほ笑んだ。

 2020年から2021年まで年をまたいで放送される本作。上野は、改めて2020年を「当たり前の日常が奇跡の連続だったことを改めて意識した1年でした。より人に優しく、より周りの人たちと支え合うことを考えさせられました」と述懐。そして、「新年は気持ちよく迎えたい。そして、震災を含めて、忘れてはいけない心はしっかりと抱えていきたいです」と前を見据えた。(取材・文:嶋田真己 写真:高野広美)

 月9ドラマ『監察医 朝顔』第2シーズンは、フジテレビ系にて毎週月曜21時放送。

上野樹里  クランクイン!