米アマゾン・ドット・コムは、年末商戦が本格的に始まるのを前にEC(電子商取引)商品の店頭受け取りサービスを拡充していると、米CNBCが報じている。
「サプライズを台無しにしないために」
直営の書店「Amazon Books」や売れ筋商品を集めた「Amazon 4-star」、食品スーパー「Amazon Fresh」などの実店舗の中に受け取り専用のカウンターを設置。注文時に配達先として最寄りの店舗を選ぶように促している。
また、「Amazon Hub」と呼ぶ、セルフサービス式キオスクと有人の受渡カウンターも協力店舗内や集合住宅内に設置。これらの施設でも商品を受け取れると案内している。
アマゾンは声明で、「今年は特別な年。新型コロナウイルスの感染拡大で皆が外出を控える中、家族などの大切な人へのプレゼントを秘密にしておくのは難しい。サプライズを台無しにしないためにも利用してほしい」と説明している。
アマゾンには、複数回の注文を1つの梱包にして指定曜日に届ける「Amazon Day」と呼ぶサービスもある。その目的は、配達回数や使用段ボール箱の量を減らし、地球環境に配慮すること。だが、この配達オプションもサプライズ品の受け取りに向いており、積極的に活用するようにと勧めている。
年末売り上げ最大5.2%増、EC30%増へ
こうしてさまざまな配達方法を用意するのは、物流の逼迫が予想されるからだと、CNBCは報じている。「ラストマイル」と呼ばれる、物流最終拠点から顧客宅までの配送負担の軽減を狙っているという。
全米小売業協会(NRF)が11月23日に公表したレポートによると、今年11月と12月の米小売業の売り上げ(自動車や外食を除く)は最大で7667億ドル(約80兆700億円)となり、前年に比べて5.2%増加する見通し。うちECが最大2184億ドル(約22兆8100億円)で、同30%増加すると見込んでいる。
米国では今年春から多くの店が休業した。店舗はその後再開したものの、多くの中小小売業者の売り上げが回復していないという。一方、小売業全体で見ると6月から前月比、前年同月比ともにV字回復を果たしている。
とりわけECが好調で、今年7~9月期は前年同期比36.7%増となった。多くの消費者は今もネットに頼る傾向にあり、年末商戦はECが活況を呈す見通しだという。
NRFは「今年はいつもと異なる。厳しい状況が続いたため、家族や友人を元気づけられるような贈り物を用意しようと考える人が多い」と述べている。
年末商戦を1カ月前倒し
今年は在宅勤務や自宅待機の広がりでEC需要が急増し、アマゾンの物流業務が逼迫した。同社は対策として、雇用や拠点を拡大。物流能力の強化を図った。
3月と4月には、計17万5000人の期間従業員を採用。5月末にはこれら臨時雇用の約7割に当たる12万5000人を正社員に登用すると発表した。9月には、米国とカナダの物流拠点で10万人を追加採用し、発送・仕分センターや宅配ステーションなど計100施設を新設すると明らかにした。10月には米国とカナダの物流拠点で10万人の期間従業員を追加採用することも明らかにした。
こうした中、同社は年末商戦を約1カ月前倒しした。ホリデーシーズンの物流混乱を避けるためだ。今年は会員向け大型セール「プライムデー」を10月に延期したが、同セール終了直後の10月16日から「ホリデー・ダッシュ」と呼ぶセールイベントを開催。一足早く販売攻勢をかけた。
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