「1日8時間の冷蔵庫アルバイトは体力的にキツくはなかったんですが、面倒でした。バイトで物を運んだり、走り回るよりも、一人の女性を家に連れ込んで殺害し、解体をして遺棄する方が楽でした。(殺害して、解体することは)負担にはなったが、引き換えで得られる(失神後の強制性交の)快楽のほうが勝りました」

一貫して「楽をして生活をしたい」と語っていた

 2017年神奈川県座間市アパートから男女9人の遺体が発見された事件で、裁判員裁判が東京地裁立川支部(矢野直邦裁判長)で11月24日に行われ、強盗・強制性交等殺人などで起訴された白石隆浩被告(30)は被告人質問でこう答えた。これまでに9人の殺害に関する証拠調べが終わり、それを踏まえた総括的な質問が行われた。また、白石被告の母親の供述調書も読み上げられた。

 これまでの被告人質問では、弁護人に「黙秘します」という回答を連発していたが、この日は、すべてに答えていた。白石被告はこれまで一貫して「楽をして生活をしたい」と語っていたが、逮捕前の仕事である、SNSを使っての風俗のスカウトの仕事をしていたことについて弁護人から「自宅にいて、楽に稼げる仕事だと思ったのか?」と聞かれ、「はい、そうです」と答えた。しかし、売春をすることを知りながら風俗店に斡旋した職業安定法違反で逮捕されたことについて、「人生こんなこと、というか、出来事があるのか」と思ったようだった。

成功体験となった高校時代の”家出”

 事件前について、弁護人が質問をした。職業安定法違反事件で有罪判決が出た後、一時、父親と一緒に実家で暮らすことになったが、父親との関係はうまくいかず、父親からお金を無心しようとして、希死念慮があるように装っていたという。

「落ち込んだふりをしました。具体的には、『死にたい』と言ったり、『働いていく自信がない』などと言いました。また、父親が家にいることを知りながら、ロープを横に置いて寝たり、ロープをベランダのつり革にぶらさげて首を吊るふりをしました。父がこれを知って、心配させました。公園で首を吊ろうとしたり、20メートルの高さの橋まで行ったこともあります」

 なぜこんなことをしたのか。実は、白石被告にとって、成功体験となる出来事があった。それは高校生のときの家出だ。3回している。場所はそれぞれ北海道、北陸、山陰地方だった。このときは、両親に自殺系サイトを見て、練炭自殺をするグループに参加したことがあると伝えていた。

「父親とは不仲でしたが、家出後、態度が軟化し、お金を引っ張ることができました。お小遣いを引っ張れたのです」

「解体している間も、DMのやりとりをしていました」

 事件を起こす1ヶ月前には、遺書のようなメモを書いている。家族と、通っている病院に宛てたものだった。内容は「意識不明になったら、治療をせずに殺してください」「今日こそ、自殺するので、殺してください」などだ。

「私が自殺する意思がある内容を示すものです。しかし書くだけで、未遂はしていません。死のうとしたわけではありませんから。そのメモは、自分の部屋の、目立つところに置いていました。父に対して、私が精神的に弱っていることをアピールしたのです。自殺しそうな状態でお金を無心すれば、お金を引っ張れると思ったのです。メモを読んだかはわかりませんが、父は態度を軟化させました。お金を引っ張ることが目的です。創作の文章であり、私が強い希死念慮を持っているように、父に印象付けをしたかったのです。その目的に沿って書きました」

 その結果、「効果を発揮」して、市民税や国民健康保険料を全額支払ってもらうことができたという。

 また、弁護人は、9人の遺体を解体している間のことについても質問した。

「解体している間も、他の人と(TwitterのDM等で)メッセージのやりとりをしていました。解体中にメッセージが来ても、追われている感じではありませんでした。解体しているときは、一回、一回、目の前のことに集中していました。一方で、やりとりをしながら、相手からお金を引き出せるか、引き出せないなら、レイプして殺害できる相手を探していました。寝る時間はありました。(メッセージのやりとりは)肉体労働とは違って、布団の中で寝ながら携帯を触っているだけでした。半睡眠状態のような感じです」

「一人あたり、大きな骨が8本出ます」

 遺体解体では、「血抜きをしていれば、肉をそぐときには血はほとんど出ません。食肉を切ったり、魚をさばくときの心境とはまったく違います。やらなければ、つかまってしまうという必死な面と、こうすれば効率的に作業ができるなとも考えていました」と白石被告は述べる。その上で、頭部遺体は猫砂を入れたクーラーボックスに入れているが、弁護人から「表情は目に入ったのか?」と聞かれて、こう答えている。

「目に入りました。こんな顔をするのか、という感じでした。ただ、全員のことは思い出せません。(今日のやりとりでは)最後の方、Iさんの表情は思い出しました

 その後、匂いを消すために、腕や足、肋骨などの骨を鍋に入れた。

「一人あたり、大きな骨が8本出ます。両側を煮ます。そのため、16回、煮ることになります。2~3時間で終わりましたので、1回10分ぐらいだったと思います。その後、冷蔵庫に入れて、乾燥させました。長くても30分ぐらいだったと思います。

 肉片はジップロックに入れて、新聞紙で包みました。新聞紙に包むジップロックは1つのときもあれば、2つのときもありました。4つぐらいにわけて、ゴミ袋に入れました。40リットルや50リットルの大き目な袋です。1回では4~5袋になりました。一度では捨てられないので、2~3回にわけて捨てました。朝になって、出勤する人や通学する人がいるときに捨てれば、怪しまれないと思いました。他の住民が捨てて、ゴミがたまり、匂いがあるような時に捨てたのです」

「協力した女性に対する恨みは……」座間9人殺害事件・白石被告が法廷で声を荒らげた瞬間 へ続く

(渋井 哲也)

白石隆浩被告 ©文藝春秋