いま再び猛威をふるう新型コロナウイルス。日本全国の新規感染者が2000人を超える日が続く。菅義偉首相は21日、「GoTo」事業にかんしても内容を見直しすると発表した。

 これは“第3波”がきているのかもしれない……。今年1月、日本国内で初めて新型コロナウイルス感染者が確認された時、果たしてどれほどの人が今の状況を予測していただろうか?

 想像以上にコロナ禍が長引いたことで、自身でも「まさか」という状況に追い込まれた人々がいる。

◆再就職先が見つからない料理人

「育った家庭が貧乏だったので。食べ物を扱う仕事につけば絶対に食い物には困らない、そう思ってこの店に就職したんです」

 こう話すのは、関西の仕出し割烹店に20年以上勤務していた原田泰夫さん(仮名・40代)。和食専門の料理人として腕をふるっていたが、コロナの影響によりこの夏、店が倒産した。

 絶対に食いっぱぐれはない、と思っていた自分が「無職」になったことが信じられなかった。

「いつの間にか、仕事は絶対にあるもの、弁当や料理が必要とされないことなんてありえないと思っていたからすごくショックで。2週間ほど寝込んでしまった」(原田さん、以下同)

 店では料理人のチーフを務め、腕には自信があった。これまでにも、同業他店から「うちに来ないか」と誘われたことも1度や2度ではない。気を取り直し、再就職を目指して活動を始めたが……。

◆飲食店はどの店も雇う余裕がない

「旧知の店も結局コロナで火の車、私みたいに経験があって、それなりの給与を支払わなければならない人間を雇う余裕はどこにもなかったんです」

 実際、原田さんの若い部下たちは、レストランチェーンや食品工場などで働き、生計を立てているというが、原田さんがそうした職場に履歴書を持って訪ねていっても、反応は冷ややかだったという。

「まるでいらない人間だ、と言われているようでツラいです。コロナで、社会から無駄が削ぎ落とされていくようで、私の仕事も、存在も、余分なものだったのかもしれないと考えるようになりました。

 少しでも早くお金を稼がなければならず、ホームヘルパー(訪問介護員)の研修を受けて、すでに現場に出ています。この仕事も、向こう何十年は食いっぱぐれないでしょうし」

 コロナがきっかけで、自分自身が「いらない人間」なのではないかと感じていたのは原田さんだけではない。

◆コロナの影響で夢が消える

 東京都内の高級セレクトショップで長年店長を務めてきた町田ゆき子さん(仮名・30代)は、この1年で「天国から地獄に落ちた」と振り返る。

「去年の今頃は買い付けでロスにいました。その後、休暇も兼ねてヨーロッパに遊びに行って帰国。年が明け、夏には店のオーナーの支援を受けて、やっと自分のお店が出せる予定だったんです」(町田さん、以下同)

 町田さんが働いていたのは、富裕層向けの女性向けアパレルを取り扱うショップだ。一流ブランド品はもちろん、日本にはまだ入ってきていない、海外セレブの間で密かに人気のアイテムを直接買い付け、販売した。20歳そこそこの頃から15年以上勤務し、店長という責任ある立場も任されていた。

「お給料は悪くなかったと思います。同年代の男性サラリーマンの平均よりもずっとよかった。独身だし、お金も自由に使えたし……」

 ところが、今年2月頃からコロナの影響で客足がパタリと止んだ。常連客に支えられている店であったが、皆一様に「外出の予定がないから服は必要ない」と口を揃えた。

「3月の売上で前年比の半分以下。在庫も売れず、キャッシュフローが回らなくなり、夏前にはオーナーが店を畳みました。もちろん、私のお店の話も立ち消え、何もすることがなくなり、ボーッとしていると自然と涙が出てくるようになりました」

 この時「私も、私の仕事も、必要がないのだ」と強く感じるようになり、眠れなくなったという。そして、地獄のような苦しみが始まった。

◆自暴自棄の生活へ転落

「睡眠薬に頼るようになり、そのうちいくら飲んでも効かなくなり、お酒に頼って……。友人のすすめで精神科に行ったところ、うつ病だと診断されました」

 また、並行して就職活動も行っていたが、町田さんのキャリアに合ったポジションの募集は、コロナの影響でゼロ。接客のテクニックとファッションセンスには自信があったが、そういった仕事が、たったひとつすら、なかったのである。

 頼れる家族がいない町田さんにとって、自身で稼ぐ手段を失えば、それは命にも関わることだ。

「医師や役所の勧めで、ケースワーカーさんのお世話になり、とりあえず生活保護を受けることになったんです。絶対に嫌だ、と思っていましたが、とりあえず住むところと食べ物がある、という安心感は本当に大きい」

 町田さんがぽつりと言う。

「第3波がきたら、私のような境遇の人は増えるはず……」

 この2人だけではない。コロナのせいで、ほんの数ヶ月前には予想もしていなかったような「転落」の最中にいるという人々が多くいて、その数は今なお増え続けている。<取材・文/森原ドンタコス>