染色体の本当の姿

3D組織の撮影で明らかとなった染色体の姿 image by:Xiaowei Zhuang lab

 22対の常染色体と1対の性染色体でなる人間の「染色体」――誰の体にも備わっているものだが、それがどんなものかと聞かれたら、どのような形を想像するだろうか?

 生物の本などに掲載されているイラストでよくあるのは、X字の染色体だ。これはDNAの複製が起きてから細胞分裂が完了するまでの、2本の染色分体が合体した姿を可視化したものだ。

 だが専門家に言わせれば、それは少々正確ではないようだ。「9割の時間は、染色体はそのような形ではありません」と、米ハーバード大学ス・ジュンハン氏は話す。

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染色質の3D組織を撮影

 ス・ジュンハン氏らは人間の細胞の中にある「染色質」(真核生物のDNAとタンパク質の複合体のこと)の3D組織を撮影する「MERFISH(multiplexed error-robust fluorescence in situ hybridization)」という方法を考案し、『Cell』(11月17日)で発表した。

 新しい高解像度撮影法では、DNA鎖に沿った遺伝子座(遺伝子の位置のこと)をいくつも撮影し、これをつなぎ合わせる。

 これによって染色体をこれまでになかったほどアップで可視化することが可能になった。得られた画像からは、転写が行われる様子すら垣間見ることができるという。

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MERFISHによって撮影された染色質のマルチカラー画像
image by:Xiaowei Zhuang lab

染色体の分子レベルのメカニズム解明に


 染色体の構造を3Dで把握することは、その背後にある分子レベルのメカニズムやゲノム機能を調整する仕組みなどを理解する上で大切であるそうだ。

 そのデータはこちらで公開されており、自由に分析することができる。染色体がX字というイメージは、そのうち世の中から消えてゆくのかもしれない。

References:eurekalert/ written by hiroching / edited by parumo

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52296740.html
 

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