
米アマゾン・ドット・コムは11月24日、偽ブランドなどの偽造品の流通を食い止めるため米国の知財当局などと共同作戦を実施すると明らかにした。
米国内への侵入を水際で防ぐ
アマゾンと連携するのは、米国土安全保障省が所管する移民税関捜査局・全米知的財産権調整センター(IPRセンター)や税関・国境警備局(CBP)など。
通関施設でデータ分析したり、集中検査を実施したりして、偽造品が米国の流通網に侵入するのを未然に防ぐという。
アマゾンのカスタマートラスト部門担当バイスプレジデントのダーメッシュ・メータ氏によると、同社ではEC(電子商取引)サイトで扱う商品のうち、外部業者が販売するマーケットプレイスの商品を徹底的に調べており、疑わしいものがあればサイトから削除しているという。
しかし、偽造品販売業者はアマゾン以外の小売流通網にも商品を忍び込ませている。アマゾンとIPRセンターなどの政府機関の情報力を組み合わせることで、違法商品の侵入を水際で防ぐという。
専門家で構成する「偽造品犯罪対策チーム」
アマゾンには法令遵守監視チームがあり、出品業者に提出させた商品や製品安全書類を確認している。また、自然言語処理や機械学習といった技術で商品詳細ページの更新情報も調べている。
同社は昨年、不正行為対策に5億ドル(約520億円)以上の費用を投じた。8000人以上の従業員を対策に充て、不正が疑われる60億点以上の商品と250万件以上のアカウントを削除したという。
今年6月には元検察官や元捜査官、データアナリストなどの専門家で構成する「偽造品犯罪対策チーム」を発足させた。これは、各国のメーカーや当局と協力し、民事訴訟や刑事告発などを通じて、悪質事業者の法的責任を追及する専門組織。今回、この組織とIPRセンターなどが協力するという。
違法業者の法的責任追及する動き
米CNBCによると、アマゾンがマーケットプレイスを本格展開したのは2000年。同社は収益性の高い外部業者の商品を積極的に扱う戦略を打ち出しており、今はその販売額がアマゾンの物品販売総額のほぼ6割を占めるまでになった(ドイツ・スタティスタのインフォグラフィックス)。
同社は現在、世界に200万社以上の出品業者を抱えている。うち米国サイトで活発的に事業展開している業者は46万1000社。アマゾンの各国マーケットプレイスの中で米国は世界最大規模だという。
しかし、そこには、偽造・模倣品や製品安全不適合品、期限切れ商品が多数あると指摘されている。こうした中、同社は違法商品を根絶する取り組みを進めており、最近は前述した専門組織が訴訟に持ち込むケースが増えている。
例えば今月は、高級ブランド品の偽物をマーケットプレイスで販売していた11業者と、業者と共謀してフェイスブックやインスタグラムなどで業者の偽造品を宣伝していた2人のインフルエンサーを提訴した(アマゾンの発表資料)。
「ノーブランドの商品をアマゾンで注文すると、高級ブランド品がもらえます」と宣伝するもので、アマゾンの販売ページへのリンクが設けてあった。実はその高級ブランド品は偽物。アマゾンにはノーブランド品のみを出品し、偽造品対策を回避していたという。
また、6月には、医療用マスクの偽造品と疑われる商品を本物の18倍の価格で販売したとして、メーカーの米スリーエム(3M)が提訴した。米ウォール・ストリート・ジャーナルにとると、この訴訟にアマゾンが協力した。
このほかロイターによると、同じく6月、知的財産権を侵害されたとしてアマゾンとイタリア高級ブランド、ヴァレンティノが共同でニューヨークの靴・鞄メーカーを提訴したという。
(参考・関連記事)「米アマゾン、出品者の名前・住所の公表を義務化」
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