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スズキ・ソリオ 「二刀流」と別れ

なぜ、新型ではマイルドハイブリッドだけなのか?

スズキは2020年11月25日、同社として初めて実施したオンライン新車発表会に登場した新型「ソリオ」と「ソリオ・バンディット」。2020年12月4日から全国で発売される。

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新型スズキ・ソリオと鈴木社長。今回はマイルドハイブリッドのみになった。    スズキ

開発の背景について、「お客様の声」や「販売店の声」に耳を傾けることを最重要視したという。

その中で、要望が多かったのは、「後席を快適にしてほしい」、「荷室を大きくしてほしい」、そして「安全装備を充実してほしい」という3点だった。

別の見方をすると、「もっと燃費を良くしてほしい」とか、「EVを出してほしい」といった声はゼロではなかったはずだが、ソリオのモデルチェンジで主要な要件にはならなかったといえる。

その上で、ハイブリッドの採用が見送られた。

先代ソリオ(3代目)では、軽自動車でも採用しているISG(モーター機能付き発電機のISG)を用いたマイルドハイブリッドがある。

さらに、先代発売の11か月後にMGU(駆動用モーター)を備えたハイブリッドを追加設定した。

ハイブリッドマイルドハイブリッド

「選べる、2つのハイブリッド

カタログにはこうした表記で、スズキと他社との違いを強調してきた。

それがどうして、今回はマイルドハイブリッドのみになったのか?

スズキの鈴木社長に聞いてみた

オンラインでの会見が終わり、一般向けのユーチューブ配信が終わった後、オンライン会議システム「ズーム」で視聴していた筆者を含む報道陣向けに、新型ソリオとソリオバンディットに対する質疑応答がおこなわれた。

その中で、鈴木俊宏社長に対して、筆者から質問した。内容は「なぜ、マイルドハイブリッドだけになったのか?」である。その上で、スズキの電動化戦略についても聞いた。

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質疑応答をおこなう、鈴木社長。    スズキ

鈴木社長の回答は、とてもシンプルな内容だった。

「ストロンハイブリッドの売れ方を見た結果だ」という。

トロンハイブリッドとは一般的に、モーターがエンジンに対するアシフトをおこなうことに加えて、モーターでのEV走行も可能なタイプのハイブリッドを指す。

トロンハイブリッドの具体的な販売台数について触れなかったが、2016年11月29日ハイブリッド導入に関するプレスリリースにある、ソリオおよびソリオバンディットシリーズとしての月間販売目標台数3500台のうち、少数派になっていたようだ。

トロンハイブリッドスズキ商品名はハイブリッド)の燃費はJC08モードで32.0km/Lとマイルドハイブリッドの27.8km/Lを大きく凌ぐ。

MTとATの特性を併せ持つAGS(オートギアシフト)の効果でスズキらしい走りの楽しさと燃費の良さを実現したのだが……。

ストロングHV、再導入の可能性あり

スズキの独自開発技術を満載し、メディアの中では高い評価があったストロンハイブリッド

その反面、販売実績は思うように伸びなかった。

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新型の開発において要望が多かったのは、「後席を快適にしてほしい」、「荷室を大きくしてほしい」、そして「安全装備を充実してほしい」という3点だった。    スズキ

背景にあるのは、顧客層と価格だ。

今回の会見に同席した、取締役/常務役員/国内第一営業本部長の鈴木敏明氏はソリオとソリオバンディットの顧客層について次のように説明した。

年齢は30代から40代が主流で、そのうち6割を男性。また、ミニバンなどからダウンサイジングでの乗り換え需要が7割を占める。

つまり、より手軽で効率的なクルマとして、ソリオを検討する顧客が多く、結果的にリーズナブルな価格で実用的なマイルドハイブリッドの需要が主体となったといえる。

これに関連して、別の記者たちが、今後のストロンハイブリッド開発と市場導入のかの可能性ついて鈴木社長に聞いた。

鈴木社長は「ストロンハイブリッド(の販売)を止めたのではなく、コンパクトカーメーカーとして、どのようなストロンハイブリッドが向いているのか考えていく」

「他社の売れ方を参考にして、必要と判断できれば再導入するが、現状考えるとこのクラスではユーザー要望がない。まずは、販売動向を見ていきたい」と答えた。

さらに注目される発言もあった……。

EV化、スピードが加速気味と社長

鈴木社長は、ストロンハイブリッドの再導入に際して、トヨタと連携についても触れた。

トヨタハイブリッドを使う可能性もある。価格や車格などを考慮し、トヨタの(ハイブリッド関連)パーツを使って、スズキ独自の開発もあり得る」と今後の開発について含みを持たせた。

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永田チーフエンジニア    ダイハツ

では、さらにその先、スズキの電動車の全体像はどうなっていくのか?

筆者は、スズキが2020年11月18日に公表した「スズキ環境ビジョン2050」に関連して、今後の電動化戦略について具体的な方策について聞いた。

鈴木社長は「マイルドハイブリッドPHEVプラグインハイブリッド)、EV(電気自動車)と、2050年に向けてステップを踏んでいく」

「ただし、昨今はEV化について、(各国の動きなどの)スピードが加速気味とも感じる」

「CASE(コネクテッド/自動運転/シェアリングなど新サービス/電動化)という観点で、今後どのように進めるべきか(社内で)議論している」として、具体的なモデル導入時期などは明らかにしなかった。

その上で、EV化することで車両価格の上昇、充電インフラの問題、また電池のリユースやリビルトなど社会全体で広い視野に立った議論も必要だと強調した。

時代の流れの中で、EV化を推進することは必要不可避とし、人と自然との折り合いを考えていくべきだとの姿勢を示した。


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