文在寅ムン・ジェイン)韓国政権における三人目の駐日大使に、姜昌一(カン・チャンイル)国会議員が内定した。姜昌一氏は1952年生まれで、済州道(チェジュド)を政治基盤とする4選目の国会議員2017年から韓日議員連盟の会長を歴任し、現在は同連盟の名誉会長として活動している。80年代東京大学へ留学し、修士と博士号を取得した姜氏は、政権与党内で最高の「知日派」とされる人物だ。

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姜昌一氏の大使起用は「日韓関係の改善へ向けたメッセージ」?

 韓国大統領府は姜氏の大使選任に対し、「姜内定者は東京大学で修士・博士号を獲得し、学界で長い間日本について研究してきた歴史学者」「日本の新内閣を迎えて韓日関係を改善したいという大統領の意志が反映された人事」「正統外交官よりは政治家出身が適していると判断した」と伝えた。

 韓国メディアは、姜氏の日本政界での人脈や韓日議員連盟会長としての活動を集中的に紹介し、日本通の姜議員の駐日大使への抜擢について、「菅義偉新内閣に対する文在寅大統領の関係改善のメッセージだ」と評価した。

韓国メディアは姜氏の過去の言動を不安視

 その一方で、いくつかのメディアでは、姜氏の過去の行動で日本政界の一部で反発の機運も出ていると紹介している。

「姜氏がこれまで日本に対して強硬発言を辞さなかっただけに、日本の一部では不満な空気もあるという。姜氏は日本が輸出規制措置を取った昨年8月、韓日議員連盟所属で日本を訪問したが、自民党側との面談が実現しないと、『われわれは乞食じゃない。どんでもない無礼を受けた』と話した」

「日本政府の事情に詳しい消息筋は『姜元議員が2011年に日本がロシアと対立している北方領土を訪問し、日本政府が強く反発したこともある』と説明しながら、『徴用問題解決がさらに難しくなるのではないかと思う』と述べた」(以上、東亜日報11月24日

「姜氏は2011年5月、国会独島特別委員会委員長の資格で議員2人と韓国の政治家としては初めてロシアが主権を行使する千島列島の国後島を訪問した。当時、この島を含む北方領土4島を北方領土と呼び、領有権を主張する日本が強く反発したことがある」

「こうした背景のため、自民党の強硬派議員らは姜氏に対する不快感を表明しているという。自民党内部の事情に詳しいある関係者は、『文大統領が韓日関係改善を望むと言いながら、反日的人物を大使として送ったのは矛盾』と述べた」(以上、朝鮮日報11月25日

「(姜氏に対する)否定的な見方も少なくない。第一に、まるで前任大使に失策でもあって更迭するかのように、姜氏発表1時間前に日本に通知するなど、韓日いずれにも苦い後味を残した。第二に、日本通だが日本で評判が良くないという点だ。強制動員問題で政府と調整されていない発言を何度もしたように『自分の政治をしている』というイメージが強い。第三に、文大統領と直接話せるほど近くないという点が決定的だ。このため日本では『韓日最大の懸案である強制動員問題の解決に役に立たない人物を送っておいて、日本に誠意を見せたと言ってもらっては困る』という酷評も聞こえる」(ソウル新聞11月24日

日本批判の先頭に立ってきた人物

 韓国メディアが指摘したように、姜氏はこれまで日本との対立局面ではいつも先頭に立って日本を強く批判してきた。韓国内では、「親日派の清算」を主導する人物でもある。

 彼は2010~2012年まで韓国国会内の独島守護特別委員会委員長を務める間、前出の韓国メディアが指摘した通り、ロシアと日本の領土紛争地域の北方領土を訪問し、日本政府から強い反発を呼び起こした。2011年8月には、特別委員会委員たちを率いて独島(竹島)において全体会議を開催するという野心満々な計画を立てたが、悪天候で2回延期された末に結局中止となった。当時、姜氏は連合ニュースとのインタビューで、「独島で行われる全体会議では、韓国政府が独島領有権侵奪を画策する日本の極右人物らをチェックして管理することを求めるつもり」と話した。いわゆる、独島関連のブラックリストを作って管理するという意味だ。

 2019年日本国民を激怒させた文喜相(ムン・ヒサン)国会議長の「慰安婦問題について天皇が謝罪せよ」という発言についても、複数回、ラジオ番組に出演して日本側の無礼を指摘した。

「文喜相議長としては極めて常識的な、韓国人の常識的な次元で言った話だと思う。なのに、日本でそれでしきりに政治争点化するなという話だ。揚げ足を取る政治はやめろ。本質を歪めるな。(日本に向かって)こんな話がしたい」

河野太郎という日本の外務大臣が『無礼』という用語を使った。とても無礼な発言だ。どこの外交官が他国の立法府首長である国会議長に無礼という用語が使えのか。河野太郎という人は大変失礼な人物だ」(2019年2月14日、CBSラジオに出演して)

 日本からの輸出規制強化が問題化していた2019年8月には、韓国の国会議員を率いて日本を訪れたが、手ぶらで帰国。その直後、韓国メディアに訪日成果について次のように説明した。

「(韓国に対する輸出規制強化措置について)今回警告しておいた。ボールはあなた側に投げたと。韓国は外交交渉のテーブルで外交的に解決しようとしてここに来ている。ところが、こんなふうに強硬に出るようになれば、今後の韓日関係は非常に硬直するはずで、責任はすべてあなた方にあると!」

「厳しい状況に悲壮な覚悟を文大統領が語ってくださり、今大韓民国のすべての国民が厳しい状況であることを知り、悲壮な覚悟をしていると思う。韓国民族は日本の植民地支配下でも克服してきた。草を食べて、木の根を食べながら耐えてきた。そうして日本に抵抗して生きてきた民族じゃないか。私は安倍首相ほか右翼政治家に言いたい。『歴史をしっかり勉強しろ』と」(YTNインタビュー2019年8月2日

 韓国内では、過去に親日行跡がある人物を国立墓地から改葬する「親日派掘墓法」成立に向けて先頭に立ち、尹美香(ユン・ミヒャン)議員の不正事件では「尹美香議員を攻撃する勢力は土着倭寇」という声明を発表した民主党議員として名を馳せた。

国内での政治的基盤、万全ではない

 だが、ソウル新聞が指摘したように、姜氏は4選議員ではあるが、与党内では鄭東泳(チョン・ドンヨン)派に属する極めて少数派であり、重量感が絶対的に足りない。文大統領と個人的な縁や親交も皆無だ。2019年、共に民主党の議員総会で徴用問題について発言している最中、李海チャン(イ・ヘチャン)当時与党代表から指で「×」を示され、すぐに口をつぐんで大人しくなったエピソードは有名だ。

 数々の反日発言や政治的影響力を考慮する限り、姜昌一新任大使に日韓関係の改善や徴用問題の解決を託す文大統領の「本気度」は、意外と高くないのかもしれない。

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文在寅大統領(写真:YONHAP NEWS/アフロ)