大規模診療データベースを用いた分析で、新型コロナウイルス感染症COVID-19)流行時、新生児集中治療の入室日数および早産の件数が減少傾向にあったことが明らかになったので、お知らせします。

本研究は国立成育医療研究センター(東京都世田谷区) 周産期・母性診療センターの前田裕斗医師、小川浩平医師、左合治彦医師、東京大学大学院医学系研究科・公衆衛生学教室の宮脇敦士助教、メディカル・データ・ビジョン株式会社(同千代田区)取締役の中村正樹、および株式会社データック(同千代田区)代表取締役の二宮英樹らのチームで共同で実施しました。本研究の論文は小児科分野をカバーしている英国医学雑誌ADC(Archives of Disease in Childhood - Fetal and Neonatal Edition)のオンライン版
( https://fn.bmj.com/content/early/2020/11/22/archdischild-2020-320521.full?ijkey=UDrsFt0f0fi9vv1&keytype=ref)に掲載されました。
【弊社代表取締役 医師 二宮のコメント】

COVID-19によるロックダウン中に、デンマークで早産が減ったという報告やアイルランドで低出生体重児が減ったという報告がありました。

本論文で利用させていただいたデータはDPCという医事会計に使われるデータです。DPCに代表される医療現場で生まれるデータで研究を行うときには、そのデータが生まれる背景を理解して研究をデザインする必要があります。そのためには、現場の臨床家やその領域を深く知る臨床疫学者と連携が大切です。

最初に思いついたクエスチョンだと解析出来ないことも多いです。当初はデンマークアイルランドの報告をうけて、早産や低出生体重児の増減を知りたいと思いました。しかし正常分娩は自費診療であるためDPCにはデータとして記録されず、解析が出来ませんでした。

データベースに紐づく制約は、時に大きいこともあります。しかしそういった制約を考慮しても、医療現場で生まれ続ける大規模データがある以上は最大限活用したいです。私たちは臨床疫学者、現場の臨床家、データエンジニアでチームを組んで大規模データを解析し、医学エビデンスに貢献していきます。

【発表の概要】

COVID-19流行により、当初、妊婦の心身ストレスが増加し周産期疾病や新生児集中治療の件数が増えると懸念されていました。しかしながら、海外ではむしろ極低出生体重児(出生体重 1500g 未満児)が減少しているとの報告もあり、日本でも同様の結果を示すかどうか本研究により分析しました。全国186のDPC病院を対象にしました。

当社が保有する診療データベースを使用し、2020年の第2~9週(1月6日に始まる週から、政府がCOVID-19への基本方針を策定した2月25日から始まる週まで)と2020年の第10~17週(3月2日に始まる週から、政府が緊急事態宣言を全都道府県に拡大した4月16日を含む4月13日に始まる週まで)のNICU(※1)、GCU(※2)各入室日数、および早産(妊娠34-37週および34週以前)を年・月のトレンドを調整し比較することで、 COVID-19流行第1波期間中の変化を分析しました。

その結果、NICU入室日数は2020年第2~9週目から2020年第10~17週目で24%減少(95%CI, 11%-35%)、GCU入室日数は29%減少 (95%CI, 25%-34%)しました。病棟の閉鎖や利用控えなども理由として考えられますが、妊娠34週未満の早産は29% (95%CI, 0%-50%)、34-37週の早産は、15% (95%CI, 2-26%)減少しており、少なくとも、新生児集中治療を要するような新生児の数が減ったことも一因として示唆されます。宮脇助教は「今後、なぜこのような減少が見られたのか、さらなる研究が期待される」と述べています。

※1 NICU: 新生児特定集中治療室。早産児や低出生体重児、または何らかの疾患のある新生児を集中的に管理・治療する部門
※2 GCU: 回復治療室。NICUで治療を受け急性期を脱し、状態が安定してきた新生児が引き続き治療を受ける部門


【本件に関するお問い合わせ先】
本リリース記事について:二宮英樹(株式会社データック) staff@datack.jp
研究内容について:宮脇敦士(東京大学) amiyawaki-tky@umin.ac.jp

配信元企業:株式会社データック

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