(舛添 要一:国際政治学者)

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 全国で新型コロナウイルスの感染が急激に再拡大し、危機的な状況になりつつあると専門家たちは警鐘を鳴らしている。現状をどう見るのか、そして、どのような対応を採るべきなのか。諸外国の例も参考にしながら考えてみたい。結論から先に言えば、あらゆる感染症対策の基本である「検査と隔離」の原則に戻るべきだということである。

無症状者による市中感染を防げ

 まず現状認識であるが、深刻な状況であることは間違いない。それは、11月25日に開かれた政府のコロナ対策分科会でも強調され、とくに感染急増地域として札幌市東京23区名古屋市大阪市が挙げられた。また、感染拡大をこの3週間で抑えることができなければ、緊急事態宣言も視野に入るという認識すら西村担当大臣は示している。

 26日には、感染者が全国で2504人と急拡大している。東京481人、埼玉160人、千葉82人、神奈川254人、合計977人と首都圏で約1000人もの感染が判明している。また、関西でも、大阪326人、兵庫184人、京都33人、奈良22人と500人を超える状況である。

 とりわけ問題なのは、重症者の数が増えていることであり、26日には重症者が410人、死者は29人となっている。そのため、医療資源が逼迫してきている。とくに医療スタッフの不足が問題であり、病床使用率が示すよりも深刻な事態が各地で発生している。また、軽症者用のホテルなども余裕がなくなりつつある。

 なぜ、今になって感染が再拡大しているのか。

 第一に、春の緊急事態宣言のときのような緊張感がなくなり、人出が急増しているからである。コロナに感染してしまった人でも、発症前ならその事実に気づかない。そしてそうした症状が出る前の人が、これまた気づかぬうちに他人にウイルスをうつしてしまう。そのために無症状の人からの感染が増えているのである。こうなってくると、従来のクラスター対策では限界がある。「市中感染」にどう対応するかを考えなければならないのである。

 私は、このこと、とくにPCR検査の重要性を年初から警告してきたが、政府の対策の主流とはならなかった。当初、クラスター対策主体の対応が何となく上手く行ったというだけで、結局は第二波、そして第三波を招いてしまったのである。

 緊急事態宣言によって経済の冷え込みを招いてしまったため、政府は経済と感染防止の両立を政策目標に掲げた。これは、日本のみならず、ヨーロッパなどでも同じである。

 欧州では、夏のバカンスに大勢の人が出かけ、国境を越えてウイルスが拡散し、秋以降の感染者増となっていった。マスクを装着せず、人との距離もとらず、夜遅くまで大声で喋りながら飲食を楽しむといった光景が日常となってしまったのである。

 日本でも、各種のGoToキャンペーンによって、観光地や飲食店などが賑わったが、それが感染を広げたことは否めないであろう。

 札幌市ススキノは、その代表例であり、北海道は感染が深刻な状態になっている。北海道は冬の到来が早く、寒冷地であるため、住居も外気を入れないような設計になっている。それで、寒さ、乾燥、密閉空間という条件が揃い、感染の拡大に繋がっていったと思われる。

 本州以南も次第に寒くなってきており、東京23区名古屋市大阪市も同様な状況になっている。いずれも、感染状況が2番目に深刻なステージ3になっていると考えてよい。

厳しい規制を回避したフランスは都市封鎖

 第二の問題は、コロナ対応として、日本政府が、中国や台湾型ではなく英仏などの欧州主要国型を採用したことである。

 前者は、徹底的な「検査と隔離」を実行した。中国は共産党独裁体制ということもあって、強力な都市封鎖も厭わない。しかもPCR検査を徹底的に行い、陽性者を炙り出して隔離した。たとえば北京市では2000万人の全市民の半分1000万人にPCR検査を行っている。その結果、ウイルスの封じ込めに成功したのである。

 そこで新たな発生の主たる原因は、外から流入する者が持ち込むウイルスである。それは水際対策を徹底すれば防ぐことができる。

 後者のヨーロッパ型では、経済のことを考えて、夏以降は厳しい規制措置を差し控えてきた。そのためマスクを使用しない人が増え、コロナ感染前と同じような日常に戻ってしまった。

 確かに経済は一時的に回復したが、10月以降、急激な感染再拡大になってしまった。そして各国ともまた都市封鎖といった厳しい規制措置を講じざるをえなくなったのである。

 たとえば、フランスは、10月30日都市封鎖に踏み切っている。もちろん、飲食店の経営者たちは反発し、各地で抗議のデモを繰り返したが、政府は強硬策を維持した。それが功を奏して、感染は2〜3週間でピークアウトした。

 11月7日に8万6852人だった感染者が23日には4452人にまで減少した。26日は1万3563人である。グラフで感染者数の推移を見ると、ピークは11月7日で、それ移行は減少傾向にあることが分かる。

 その結果を受けて、11月24日マクロ大統領は、今後3段階で、規制緩和をする方針を明らかにした。具体的には、(1)11月28日から20km圏内、3時間以内の外出を許可する、(2)12月15日、一日の感染者5000人以下を条件に都市封鎖を解除する、(3)1月20日から飲食店、ジム、高校を再開するといった内容である。

 レストランの経営者たちは、「あと2カ月も店を閉めていたのでは干上がってしまう」と猛反発して、街頭で抗議行動に出ている。

12月中のピークアウトは可能か

 日本は欧州型を採用したが、今後ヨーロッパと同じようになるのかどうか、注意して見る必要がある。問題なのは、このフランスの例と違って、日本政府が、感染防止対策について規制強化や規制緩和の基準を明確に示していないことである。フランスの場合、約5万人というピーク時前後の感染者数の10分の1の5000人という数字を提示していている。この例を真似るとすると、「1日の全国の感染者が今は約2500人であるが、250人に減ったら営業停止を解除する」という基準になる。

 なぜ日本はこういう基準を明示しないのか。目標数字があれば、国民もその達成のために努力するであろう。しかし、それは示されないまま、一連のGoToキャンペーンは継続する姿勢である。

 フランスについても、今後の推移を見守る必要があるが、今のところ、再度の都市封鎖の効果は上がっている。つまり、いったん感染が急激に再拡大したら、緊急事態宣言のような強力な措置をとると、2〜3週間で感染を抑え込むことができるということである。そして、都市封鎖前の状態に戻すには、規制解除後、約2カ月が必要だということである。

 これから強力な感染対策を講じて、12月半ばにピークアウトできるかどうかが最大の注目点である。規制強化によって確実に成果が上がるのなら、国民は我慢するであろう。営業停止になった店などには、政府が税金で休業補償をすれば済むことである。

 逆に、中途半端な対策を続けていけば、危機はズルズルと長引く。多くの感染症の専門家はその危惧を表明しているが、菅首相は「GoToキャンペーンと感染者数の増加には因果関係がないと」表明するのみで、フランスのような強力な対策を講じる考えはない。

まだまだ日本のPCR検査は不十分

 第三の問題は、諸外国に比べて、PCR検査がまだ不十分なことである。政府は、一日に20万件可能だと言っているが、誰もが簡単に検査できる状況とはほど遠い。検査の相談が可能な病院の名前も、風評被害を恐れて公表できないでいる。この不況のときに、自費で何万円も捻出して検査を受けようという人はあまりいない。ワクチン接種の無料化を言う前に、検査の充実に予算を使うべきではないか。

 ドライブスルー検査を導入すれば、病院が風評被害を受けることもない。しかし、10カ月経ってもほとんど実行していない。

 人口当たりで見ると、日本のPCR検査数は、ドイツの10分の1である。今でも、誰でも、気軽に、安価に、好むときに検査ができる体制にはほど遠い。

 感染防止対策を困難にしているのは、新型コロナウイルスが無症状者を感染させるという特性を持っているからである。米CDCの調査でも、新型コロナウイルスの感染の多くは無症状者によるという結果が出ている。日本でも同様に、市中感染が拡大しているのであって、クラスター対策だけでは感染は防げない。やはり検査なのである。

 世田谷区は、高齢者施設や保育園などで全職員を対象にPCR検査の実施を開始した。11月13、14日に、ある特養で61人の職員に検査を行ったところ、無症状の職員10人の感染が確認された。もし検査をしていなければ、彼らは業務を続けていたはずであり、高齢の入所者に感染させていた可能性がある。

 遅きに失したが、11月17日、田村厚労相は医療施設や高齢者施設で一斉にPCR検査をするように指示した。PCR検査が進まないのは、厚労省や感染研の情報独占、情報隠蔽、権限死守といった体質が背景にあることは何度も指摘してきたところである。

 医療や介護の関係者だけではなく、スーパーの店員、郵便や宅配便の職員、公共交通機関の職員、警察・消防・自衛隊海上保安庁職員などエッセシャルワーカーには無料でPCR検査ができるようにすべきである。

 感染症対策の原則は「検査と隔離」であり、この基本に戻らなければ、事態の悪化は防げないであろう。

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