筆者は子どもの偏食や小食に悩む保護者の相談に乗ったり、園や学校向けに給食指導の研修を行ったりしています。そうした中、ある保護者から、「4歳の子どもが偏食なので身長と体重がともに同年齢の平均以下です。それでも、食べることを子どもに強要はしない方がよいですか?」という質問が届きました。子どもが偏食で周りの子どもよりも体が小さい場合、保護者は不安になりがちです。偏食と子どもの成長には何らかの関係があるのでしょうか。関わり方のポイントをお伝えしていきます。

「偏食で体が大きくならない…」は間違い?

 子どもに偏食があり、さらに体が周りの子に比べて小さいと「偏食だから体が小さい…」と思うかもしれません。しかし、「偏食だから体が小さい」というのは一概には言えません。実際、太っている子でも偏食の子はいますし、元々体が小さい子の場合、偏食が改善されたからといって、身長と体重の伸びが目に見えてよくなるわけではないのです。

 なぜなら、そもそも、偏食の子が好むものの多くは白米やパンなどの主食類、あるいはお菓子類などの「少しの摂取量でも大量にカロリーが取れてしまうもの」であることが多いからです。その場合、好んで食べるものだけで十分にカロリーを摂取できています。一方で、たくさん食べてもカロリーの摂取量が抑えられる野菜などを苦手として食べられないことが多いのです。

 具体的な数値で表すと、白米100グラムの168キロカロリーに対して、ホウレンソウ100グラムは20キロカロリーです。白米と同じカロリーをホウレンソウで取ろうとした場合、1600グラムものホウレンソウが必要になります。

 また、偏食が改善されたとしても全体的な食事量が増えるわけでもありません。そのため、「偏食だから体が小さい」というのは一概には言えないのです。比較的何でも食べる子でも体が小さい子はたくさんいます。

体が小さい子どもに言ってはいけないこと

 体が小さい子が傷つく言葉に「食べないから体が小さいままなんだ」「いっぱい食べて周りみたいに大きくなれ」などがあります。そのように言われれば言われるほど、自分の体が小さいことをコンプレックスに感じてしまいます。そうすると、自信が失われたり、食べること自体が嫌いになってしまったりということもあります。

 嫌いなことや苦痛に感じることを人は自分から進んでできませんから、このような声掛けは逆効果です。そもそも、「好き嫌いはわがままだからよくない」というのは「昔の常識」であって、今は「好き嫌いはあるもので、改善には適切な支援や対応が必要」というのが常識です。

 食べられない子どもを責めることは、食べられるようになることには一切つながらないのです。

強要はどんな形であれNG

 さて、この記事の冒頭で紹介した質問は「身長と体重共に平均以下です。強要はしない方がいいですか?」という内容でした。この質問への回答もやはり、「強要」は必要なく、むしろ、逆効果だということになります。

 そもそも、「食べられない」には何かしらの理由があるものです。筆者は著書やセミナーなどでそれを(1)見た目(2)味覚鈍麻(3)刺激(4)食感(5)香り・風味(6)飲み込みやすさ(7)精神的な理由――という7つの理由に分けて伝えています。これらは1つだけではなく複数にまたがる場合がほとんどであり、これに加えて「お菓子の与え過ぎ」などの日々の習慣も深く関わってきています。

 そのため、「食べられないことを解決しよう」と考えたときは、頭ごなしに怒ったり、根性論を押し付けたりするのではなく、まずは理由を把握した上で適切な支援・対応をするということが大切になります。

 食事を提供する側としては「せっかく作ったものを食べてくれない!」となると、ついイライラしてしまうこともあると思います。特に、子どもの年齢が小さければ、食べられない理由を自分の口でうまく説明できませんから、「これはイヤ!」くらいしか教えてくれないものです。

 そういうときは今回の話を思い出して、「食べたくない」のではなく「食べられない」のだと捉え、何が理由で食べられないのかを考えてみることを最初の一歩にしてみるとよいですよ。

日本会食恐怖症克服支援協会 山口健

偏食だと体が小さい?