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はじめに

コンセプト面からみれば、アウディS3としては第4世代となる新型が、1999年に登場し、プレミアムなスポーツコンパクトというジャンルを打ち立てた初代に見劣りするところなどまったくない。

上質なインテリアと4WDシステム、そしてもちろんハイパワーといった、まさしくアウディらしい要素を兼ね備えるS3。しかし、なによりすばらしいのは、それらがファミリーカーサイズのハッチバックにまとめられていることだ。ただし、最新モデルには3ドアがなく、5ドアのみの設定なのが少し残念だが。

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テスト車:アウディS3スポーツバック    OLGUN KORDAL

ともあれS3は、現代のアウディをみごとに体現しているし、しかも扱いやすいスモールなパッケージにそれを凝縮している。さらにいうなら、実力の高いスポーツコンパクトのS1が消滅したことで、アウディのSモデルでもっとも身近なラインナップという立ち位置に返り咲いたことにもなる。

となると、歴代モデルがあまりエンスージアスト受けしなかったのが不思議にも思えてくる。いまや魅力的なネオクラシックカーとみなされるようになった210psの初代でさえ、批判の的になったものだ。その理由は、アウディが不用意にもクワトロの名をこの車に与えてしまったことにある。

そのシステムの実態は、ハルデックスカップリングを用いたオンデマンド4WDで、アウディの伝統的なトルセン式フルタイムの、いわゆるクワトロではなかった。以降、その重さや無感覚なステアリングは非難され続けてきた。

ましてや、メカニズム的には大差なく、最近では性能で上回る兄弟分、すなわちフォルクスワーゲン・ゴルフRに比べてしまうと、バリューは物足りなく感じてしまう。

はたしてそういったもろもろが、8Y世代のS3でも繰り返されているのかを確かめたいところだ。しかしそれ以前に、大きな見方をすれば、世界におけるS3の立ち位置が変化していることは理解しておかなければならない。

1999年のS3は、ランチアデルタインテグラーレ・エヴォルツィオーネに肩を並べるペースと、イタリア車には望めない豪華さやソリッドさをあわせ持つクルマだった。しかしながら新型は、弾丸のような速さをみせつける必要性が薄くなった。

なぜなら、かつてS3はスポーツプレミアムコンパクトの頂点にいたが、いまや別の存在に取って代わられているからだ。それはアウディ自身が送り出したRS4はもちろん、その競合モデルであるメルセデスAMG A 45も含む、400ps級のスーパーハッチバックにほかならない。

そんな2020年にあって、S3が成功を収めるには、完成度や洗練度、守備範囲の広さで他を圧倒する、全天候型ホットハッチであることが求められる。それを見極めていこう。

意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆

4本出しエキゾーストを備え、派手なオプションペイントを用意するS3は、どうみても控えめとは表現できない。とはいえ、それほどアグレッシブなスタイリングではなく、ベースモデルのA3、とくにSラインと比べて、見た目の差は大きくない。

鋭い観察眼の持ち主だけがボンネットの下に詰め込まれた先進技術に気づくというのは、1984年にもあったことだ。そう、あのスポーツクワトロを思い出させる。

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MQBにEA888を積む新型S3は、パワー/トルクや変速機の段数、タイヤサイズなど先代と同じ数字が並ぶ。しかし、メカニズムは細部までリファインされている。    AUDI AG

だが、上位モデルに限らず、どのA3にもアウディの多ければ多いほうがいい的なアプローチを示すハニカムグリルと、満載された後付け感のあるトリムは付いてきてしまうのだが。結果として、S3には好ましい緻密さも、はっきりわかるおもしろみもないと、われわれは感じた。

スティール素材のボディは、スポーツバックとセダンが用意される。その下にあるのは、よく見知ったメカニズムだ。フォルクスワーゲングループで広く使われるエンジンとプラットフォームの組み合わせ、ということである。

MQBプラットフォームをベースに、2.0L直4ターボのEA888を搭載し、先代モデルと同じ310psと40.8kg-mを発生する。エンジンとダイレクトに接続されたトランスミッションは7速の、SトロニックことDCTで、これも先代と変わらないが、スロットルオフ時にクラッチを切って惰性走行できる機能が加わった。付け加えるなら、この4代目はMTが設定されない初のS3だ。

後輪への駆動力分配を司るセンターデフも、おなじみの電子制御多板クラッチ式。ただし、クラッチプレートは軽量化され、作動スピードが速くなった。その制御は、新採用のモジュラー・ダイナミック・ハンドリング・コントロールシステムが行う。

このシステムは、主にステアリング入力とESCセンサーの情報を用い、またオプションのアダプティダンパー装着車ではそのデータも加えて、S3のアキュラシーや俊敏なフィールを高める。

残念ながら、テスト車はアダプティダンパー非装着車で、標準的なA3より車高を15mm下げるパッシブダンパーを備える仕様だった。とはいえ、どちらのダンパーを選んでも、駆動系はトルクのすべてを後輪に送ることが可能だ。

ブレーキを使ったトルクベクタリングも備わる。コーナリング時に内輪側の回転を制限して、アンダーステアを抑えるデバイスだ。

プラットフォームは、先ごろ発表されたばかりのゴルフRと同じMQBで、サスペンションはフロントがマクファーソンストラット、リアがマルチリンクのセットアップを採用する。

アウディでは新型の電動ブレーキブースターを採用し、既存のものより作動が早いと謳う。ブレーキディスクはエンジンルームを通過してきたエアで冷却する方式だが、これはアンダーボディのダクトから走行風を引き込むよりドラッグを抑えられるという。

タイヤサイズは、新型でもこれまで通りの225/40R18が標準装備。テスト車には、オプションの235/35R19が装着されていた。

内装 ★★★★★★★☆☆☆

堅固な構造、わかりやすいデザイン要素、そしてリッチなマテリアルは、歴代S3のインテリアの特徴だった。しかし、それも過去の話だ。たとえこの4代目S3が、ライバルより感心するような上質感を備えていても、である。

エクステリア同様に、表面形状は必要以上に複雑で凝りすぎている。それは3D的な造型にも、数多くの独特なマテリアルにもいえることだ。

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3本スポークのステアリングホイールは驚くほど小径で、リムは硬い握り心地。フラットボトム形状は好き嫌いが分かれそうだが、ホットハッチの舵輪としてはおおむね上出来だといえる。    OLGUN KORDAL

送風口は、アウディがまともなレイアウトがわかっていないのではないかと疑いたくなるような場所に設置されている。また、ダッシュボードとドアトリムは、以前のようなドライバーが落ち着いて過ごせる空間を作り出してはいない。

トランスミッショントンネル上のなにもないスペースや短いシフトセレクターにはプレミアム感がなく、目に付くところにも多用された硬いプラスティックにはガッカリさせられる。

そうしたもろもろが重なってコストダウンの影響を匂わせキャビンは、BMWがM135i xドライブで提供してくれるそれよりうれしくないスペースだ。

そうはいっても、エクセレントな要素もまた見つけられる。ステアリングホイールは扱いやすい小ささで、リムの硬さにも満足感を覚える。また、熟成を感じさせるドライビングポジションは、S3のパフォーマンスの高いポテンシャルに見合ったものだ。

ドアハンドルなどの手が触れる場所は、オーナーが3万7000ポンド(約518万円)級のハッチバックに求める高級感を味わえる仕上がり。アンビエントライトは、アウディの上位モデルにも通じる雰囲気を醸し出す。

室内空間は、少なくとも前席は広い。ナッパレザーを張った新デザインのスポーツシートを長距離乗っても快適だと評したテスターは少なくなかった。このクルマのグリップレベルを考えたなら、サポート性はもう少しほしいところではあるのだが。

標準装備の内容が充実しているのも、高評価したいポイントだ。スマートフォンのミラーリングやアウディ・バーチャルコックピット、いくつかの先進安全装備が、追加出費なしで手に入る。

走り ★★★★★★★★★☆

パフォーマンス、というものについての意見には、多少なりとも個人差があるだろう。われわれの中でも、ほどほどの加速が続くことや不合理さがないことを望むものもいれば、合法的な速さよりも0-100km/h加速が5秒を切ることこそ正義と信じ続けてきたものもいる。

いずれにせよ、2名乗車+満タンでも発進から4.8秒で97km/hに達するS3は、客観的にみてもかなりの速さだ。ホンダシビック・タイプRのような、前輪駆動最速レベルのホットハッチを優に凌ぐ。

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ターボが効いてからのパワーとトルクは強力で、発生域も広いのだが、エキサイティングな性格ではない。ブレーキフィールはいいが、重量がかさむこともあって、制動性能は期待したほどではなかった。    OLGUN KORDAL

ゼロヨンのタイムは13.4秒で、こちらはフォードフォーカスRSやメルセデスAMGの初代A45といった、最近まで現役だった4WDメガハッチ以上だ。

トランスミッションのわずかなスリップさえなければ、このS3はさらに速くなれたはずだ。おそらくそれは破損を防ぐための保険だろうが、2組あるうちの第1クラッチは、4000rpm付近を使ったローンチコントロールでのスタート時にやや滑るのだ。

それを除けば、トラクションや、ピッチとスクオットへの耐性は抜群にいい。総じてこのS3は、なかなかのやり手だという印象を与えるクルマだ。

では、エキサイティングなクルマかというと、その点ではそれほどではない。2.0Lターボエンジンが確実にそうした数字を生み出すさまは、テスター陣にはおなじみのそれだった。

アウディが設計したEA888ユニットは、フォルクスワーゲンをはじめセアトやスコダも含めたグループ内のブランドが、さまざまな仕様で10年以上使い続けてきた。その中でも、このS3のフィールは慣れ親しんだもののひとつだ。

ターボチャージャーは2000rpmで唐突に効きはじめ、そこからのパワーとトルクは均一で、エンドレスに思えるほど広い回転域で非常に実用的なデリバリーをみせる。ただし、徐々に盛り上がっていくような演出はない。ギアボックスもまた、滑らかだが夢中になれるような感覚はない。とりわけパドルシフトでは、手応えが感じられない。

いっぽう、新型の電動ブースターを得たブレーキは、驚くほどナチュラルなフィールで、これまでのアウディには期待しなかったほどの踏みごたえがある。それでも、制動性能に関しては、もっと軽量な前輪駆動ホットハッチのようにはいかない。

エンジンのサウンドアクチュエーターも、賛否が分かれるところだろう。コンフォートモードでは、キャビンは静かすぎるくらいだが、ダイナミックモードに切り替えると唸りがやや強調され、スポーツモデルらしさを味わせてくれる。とはいえ、エンジンの実質的な部分に変化はないのだが。

燃費については、ツーリング時で13.8km/Lをマークした。悪くない数字だが、特筆すべきほどではない。問題は車両重量だ。5ドアで2組のクラッチと4本のドライブシャフトを備えるS3は、1500kgを優に超えるのだ。

使い勝手 ★★★★★★★★☆☆

インフォテインメント

アウディはあえて、インフォテインメントシステムの操作をタッチ式画面と音声入力に集約し、それ以外の手段を排除したが、おそらく彼らが満足するような成功は収められていない。

たしかに、A6やA8などのより大きなモデルでは、ほとんどの実体スイッチをなくしている。その結果、使い心地は直観的でなくなり、インテリアはおかしなほどスパルタンに感じられるものとなった。

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インフォテインメントシステムは、タッチ式画面か音声入力でしか操作できないが、ディスプレイのレスポンスは鈍いときがある。エアコンなどの実体スイッチが残されたのがありがたい。    OLGUN KORDAL

しかし、S3のキャビンはそれほど質素ではない。BMWのような扱いやすいダイヤル式コントローラーや、メルセデスAMGが使用する操作にすぐ慣れるタッチパッドは備えていないが、エアコンや音量のスイッチなど使い勝手のいい操作系は残されている。

そうはいっても、10.3インチのタッチ式ディスプレイ自体は、もっとも使いやすいアイテムとはいいがたいもので、とくにレスポンスは遅いときがある。

とはいえ、スマートフォンのミラーリングはAndroid AutoとApple CarPlayがいずれも標準装備されているので、手持ちのモバイル機種に合わせて切り替えできる。また、それらを使う際にも、メーターパネルへのナビ画面表示はそのまま使用できる。

燈火類

LEDヘッドライトは標準装備だが、マトリックスライトへのアップグレードは有料。とはいえ、標準ライトは十分に鮮明で光量もあるので、わざわざ出費を増やす必要性はあまり感じない。

ステアリングとペダル

ドライビングポジションは良好だが、秀逸というまででもない。MQBベースのクルマの例に漏れず、エキサイティングな走りよりも長距離走行での快適性に配慮されている。

操舵/安定性 ★★★★★★★★☆☆

予想したように、新型S3スポーツバックは長距離移動にかなりの実力を発揮する。しかし、同時に困惑も覚えた。

おそらくそれは、このシャシーの新たな仕掛け、モジュラー・ダイナミック・ハンドリング・コントロールを構成する重要なピースが欠けていたからだ。そう、テスト車にはアダプティダンパーが装着されていなかったのである。

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アウディが目指した新型S3の走りは、19インチタイヤとパッシブダンパーの組み合わせでは十分に発揮されないようだが、アダプティダンパーはなかなかに高額なオプションだ。    OLGUN KORDAL

パッシブダンパーでは、乗り心地は硬い。それに気づくのに、時間はかからない。サスペンションは低速でシャープな突起を越えるのに苦労し、走っていると無駄に過敏なフィールだ。

ハードウェアは、難易度の高いB級道路で制限速度までペースを上げると、すばらしいレベルのコントロール性を発揮する。しかしそれと引き換えに、走りのなめらかさや快適性を高める平穏さやロール耐性が失われる。しかも、テスト車は19インチにサイズアップしたホイールを履く仕様。状況をよくするどころか、S3の本分にもあまりマッチしていないようなところがある。

従来モデルに、そしてライバルたちにも勝るのは、鼻先の向きを変える動きだ。ステアリングは、このクラスではほかにないだろうほどコミュニケーション力がある。だけでなく、ラックの重みがある手応えとギアリングが、自信を持って走らせることを可能にする。

そのコンフィデンスを支えるのが、これまでにないほどノーズを外へふくらませないシャシーだ。先代モデルと同じく、後輪へ駆動力を積極的に送るが、コーナーの脱出ではオーバーステア傾向ではなく、揺るぎないニュートラルさをみせる。

そう、このS3のハンドリングをひとことで言い表すなら、ニュートラリティ、すなわち中立性というのがピッタリだ。コーナーの進入では、ブレーキを残したほうがいいと思うことがあまりなく、頑固なほどに選んだラインをなぞって旋回し、最適なギアを選んでいれば、次のストレートへ平然と飛び出していく。

そのうえ、スロットルを臆せず踏み込んでも、シャシーの電子制御をスタンバイさせておけば、このクルマはおどろくほど天候に左右されることなく、その走行性能を遺憾なく発揮してくれるのだ。

快適性/静粛性 ★★★★★★★☆☆☆

しつけのいい走りを望むなら、スイートスポットは標準装備の18インチホイールに、オプションのアダプティダンパーを組み合わせた仕様にあるといえそうだ。

先代モデル以来、アウディは硬すぎる磁性流体テクノロジーを捨て、トラディショナルな油圧式を選ぶと公言している。より角の取れた乗り心地と、モードの違いをより明確にできる許容範囲の広さを得るためだ。

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洗練された乗り心地を望むなら、18インチタイヤ+アダプティダンパーを選びたい。ポテンシャルは高いが、テスト車はそれを最大限引き出せる仕様の対極にあるスペックだった。    OLGUN KORDAL

残念なことに、テスト車にはオプションの19インチホイールと標準仕様のパッシブダンパーが装着されていた。おそらく理想的と思われるセットアップとは、正反対だったというわけだ。

この仕様のS3は、もっとも軽やかなタッチだとはいいがたい。とりわけセカンダリーライドは過敏で、轍や舗装の隆起の影響が、ハイパフォーマンスカーとはいえども大きすぎるように感じられることもしばしばあった。

ダンピングを劇的に硬く、もしくは柔らかくする機能がないことには、このサスペンションに最適な状況はきわめて限定的なものとなる。すなわち、不満なく走れるのは、舗装のスムースドイツの国道を、100km/h前後で流す場合にのみ限られるだろう。英国の荒れた道を日常的に走るなら、BMW M135iやメルセデスAMG A35のほうが、寛容さに不安を覚えずにすむ。

ただ、少なくとも静粛性は高い。ダイナミックモードでの人工音がなければ、クルージング時にエンジン音はほとんど耳に届かない。さらに、ロードノイズや風切り音もかなり抑えられている。

予想通り、このクルマの騒音レベルはより大きく高価なV6ディーゼルを積むS4と大差ない。期待はしていたのだが、それにしてもあまりにも開きがないことには感心するほどだ。

結局のところ、この新型S3スポーツバックは、おそらくもっとも洗練された高級ハッチバックになれるポテンシャルの持ち主なのだ。ただし、今回はそのベストな状態を確かめることができなかった。

購入と維持 ★★★★★★★★☆☆

やがてA3のラインナップにはS3より高価なモデルが登場するというのに、3万7000ポンド(約518万円)という値付けが高いと思うなら、現在、プレミアムブランドが販売する300ps級の4WDハッチバックがどの価格帯にあるか思い出してほしい。

BMWのM135i xドライブやメルセデスAMGのA 35 4マチック+は、500ポンド(約7万円)くらいの差に収まる。さらに、この3台はいうまでもなく、高い残価率が見込める。

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短期的には、S3の残価率はプレミアムブランドのライバルをわずかに上回る。しかし、3年後にもっとも高い価値を維持しているのはA 35となるだろう。

また、さらに上位のメガハッチ、つまりはA 45 Sや来年にも登場するRS3へランクアップするには5万ポンド(約700万円)以上の予算が必要になる。それだけの余裕があれば、M2コンペティションのような正真正銘のスポーツモデルにも目移りするところだ。

もちろん、3万6975ポンド(約518万円)の標準仕様を購入するケースは少ないはずだ。LEDヘッドライトやバーチャルコックピットといった、役立つアイテムのいくつかは標準装備される。だが、ホワイトかブルー以外のボディカラーは有償だ。

しかも、スタンダードの18インチホイールで満足しないユーザーも多いだろう。電動調整式のフロントシートやバックカメラ、バング&オルフセン製のアップグレード版サウンドシステムなども追加すれば、価格はすぐに4万ポンド(約560万円)を超えてしまう。

スペック

レイアウト

S3の土台となるのは、もちろんフォルクスワーゲングループのMQBプラットフォーム。エンジンは、これもグループ内で広く使われるEA888ユニットだ。

ハルデックス式センターデフを持つ駆動システムは、前輪バイアストルク配分を基本とするフルタイム4WD。前後重量配分は、実測で61:39だった。

エンジン

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MQBプラットフォームにEA888エンジン、ハルデックス式4WDと、S3のメカニズムはフォルクスワーゲングループでおなじみのコンポーネンツで構成されている。

駆動方式:フロント横置き四輪駆動
形式:直列4気筒1984ccターボ、ガソリン
ブロック・ヘッド:アルミニウム
ボア×ストローク:φ82.5×92.8mm
圧縮比:9.3:1
バルブ配置:4バルブDOHC
最高出力:310ps/5450-6500rpm
最大トルク:40.8kg-m/2000-5450rpm
エンジン許容回転数:7000rpm
馬力荷重比:207ps/t
トルク荷重比:27.2kg-m/t
エンジン比出力:156ps/L

ボディ/シャシー

全長:4351mm
ホイールベース:2630mm
オーバーハング(前):905mm
オーバーハング(後):816mm

全幅(ミラー含む):1990mm
全幅(両ドア開き):3540mm

全高:1438mm
全高:(テールゲート開き):2050mm

足元長さ(前):最大1040mm
足元長さ(後):630mm
座面~天井(前):最大1020mm
座面~天井(後):920mm

積載容量:325~1145L

構造:アルミニウム/スティールモノコック
車両重量:1500kg(公称値)/1552kg(実測値)
抗力係数:0.34
ホイール前・後:8.0Jx19
タイヤ前・後:235/35 R19 91Y
ブリヂストン・ポテンザS005
スペアタイヤ:なし(パンク修理キット)

変速機

形式:7速DCT
ギア比/1000rpm時車速〈km/h〉
1速:3.19/8.5 
2速:2.75/13.4 
3速:1.90/19.5 
4速:1.04/26.2 
5速:0.79/34.6 
6速:0.86/43.0 
7速:0.66/56.0 
最終減速比:3.30:1・4.47:1

燃料消費率

AUTOCAR実測値:消費率
総平均:10.6km/L
ツーリング:13.8km/L
動力性能計測時:5.4km/L

メーカー公表値:消費率
市街地:8.5km/L
郊外:14.3km/L
混合:12.4km/L

燃料タンク容量:55L
現実的な航続距離:581km
CO2排出量:178g/km

サスペンション

前:マクファーソンストラット/コイルスプリング、スタビライザ
後:マルチリンク/コイルスプリング、スタビライザ

ステアリング

形式:電動、ラック&ピニオン
ロック・トゥ・ロック:2.2回転
最小回転直径:12.0m

ブレーキ

前:340mm通気冷却式ディスク
後:310mm通気冷却式ディスク
制御装置:ABS、ブレーキアシスト
ハンドブレーキ:電動、センターコンソールにスイッチ設置

静粛性

アイドリング:42dB
全開時:79dB(3速)
48km/h走行時:61dB
80km/h走行時:67dB
113km/h走行時:70dB

安全装備

ABS/ESC/EBD/ASR/EDL
Euro N CAP:テスト未実施
乗員保護性能:成人-%/子供-%
交通弱者保護性能:-%
安全補助装置性能:-%

発進加速

テスト条件:湿潤路面/気温13℃
0-30マイル/時(48km/h):2.0秒
0-40(64):2.8秒
0-50(80):3.7秒
0-60(97):4.8秒
0-70(113):6.2秒
0-80(129):7.7秒
0-90(145):9.5秒
0-100(161):11.6秒
0-110(177):14.1秒
0-120(193):17.2秒
0-402m発進加速:13.4秒(到達速度:173.2km/h)
0-1000m発進加速:24.2秒(到達速度:219.7km/h)

ライバルの発進加速

ライバルの発進加速
メルセデスAMG A45 S
テスト条件:湿潤路面/気温12℃
0-30マイル/時(48km/h):1.8秒
0-40(64):2.4秒
0-50(80):3.2秒
0-60(97):4.1秒
0-70(113):5.1秒
0-80(129):6.4秒
0-90(145):7.8秒
0-100(161):9.3秒
0-110(177):11.3秒
0-120(193):13.6秒
0-402m発進加速:12.6秒(到達速度:167.2km/h)
0-1000m発進加速:-秒(到達速度:-km/h)

中間加速

20-40mph(32-64km/h):1.9秒(2速)/3.0秒(3速)

30-50(48-80):1.8秒(2速)/2.4秒(3速)/3.6秒(4速)/6.0秒(5速)

40-60(64-97):2.4秒(3速)/2.3秒(4速)/4.6秒(5速)/7.2秒(6速)

50-70(80-113):2.6秒(3速)/3.4秒(4速)/4.6秒(5速)/6.0秒(6速)/11.4秒(7速)

60-80(97-129):2.9秒(3速)/3.4秒(4速)/4.7秒(5速)/6.2秒(6速)9.2秒(7速)

70-90(113-145):3.6秒(4速)/4.9秒(5速)/6.5秒(6速)/9.4秒(7速)

80-100(129-161):3.9秒(4速)/5.0秒(5速)/7.1秒(6速)/10.4秒(7速)

90-110(145-177):5.3秒(5速)/7.6秒(6速)

100-120(161-193):5.9秒(5速)/8.1秒(6速)

110-130(177-209):7.0秒(5速)

制動距離

テスト条件:湿潤路面/気温13℃
30-0マイル/時(48km/h):9.8m
50-0マイル/時(64km/h):26.9m
70-0マイル/時(80km/h):52.7m
60-0マイル/時(97km/h)制動時間:3.08秒

ライバルの制動距離

メルセデスAMG A45 S
テスト条件:湿潤路面/気温12℃
30-0マイル/時(48km/h):9.6m
50-0マイル/時(64km/h):26.0m
70-0マイル/時(80km/h):49.8m

各ギアの最高速

1速:59.5km/h(7000rpm)
2速:93.3km/h(7000rpm)
3速:136.8km/h(7000rpm)
4速:183.5km/h(7000rpm)
5速:243.0km/h(7000rpm)
6速:249.4km/h(5806rpm)
7速(公称値):250.0km/h(4455rpm)

7速・70/80マイル/時(113km/h/129km/h):2012rpm/2300rpm

結論 ★★★★★★★☆☆☆

アウディの新型S3に関する限り、判断基準は明確だ。

荒々しすぎて走り屋好みの仕立てあれば、このクルマのユーザーが望むであろう日常使いしやすさに欠けるとして、批判したくなるだろう。いっぽうで、あまりにもリラックスしてメカを感じられないクルマになっていたら、うれしくないとはっきり言うことになるはずだ。

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結論:アウディの新たなホットハッチは高性能ではあるが、あまり好きになれないところもある。    OLGUN KORDAL

車名につくSの文字には、それが象徴するなにかがある。S3の場合、ほどよく走りは楽しめなければならないが、決してマナーを失ってもいけない。そして、全天候性の揺らぎない安心感は必須項目だ。

この最新世代は、確かに平穏さの点では目標に届いている。グリップは抜群に優れ、先代モデルよりアンダーステアは明らかに減っている。そして、ドライバーにうれしくなるような自信を与えてくれる。

このS3はイージーに、そして地味に楽しく、たいていの道を駆け抜ける。それがどんなペースであってもだ。

気がかりはふたつある。まず乗り心地は、標準仕様のパッシブダンパーでは満足いかないものだった。そしてインテリアに、心地よく、これまでのアウディホットハッチにあったような高い質感が欠けている。

ライバルたちにとってもそれは欠点になるだろうが、S3ではとくに際立ったものに感じられる。実際、それはフォルクスワーゲングループ内で、忘れ去られてしまったホットハッチであるように感じられた。

担当テスターのアドバイス

リチャード・レーン

その差が0-100km/hでたった0.3秒とはいえ、先代モデルより加速性能の劣るクルマだったことは驚きだ。もはやそこには拘らないという、アウディの無言の主張、とでも思えばいいのだろうか。

マット・ソーンダース

問答無用でアダプティダンパーを手に入れたいのなら、7000ポンド(約98万円)払ってヴォルスプラング仕様を選ぶといい。高いように思えるが、この必須アイテムのほかにも、魅力的なオプションがセットになっている。

オプション追加のアドバイス

アダプティダンパー非装着車の場合、ホイールは標準装備の18インチのままにするのが得策だ。トランスミッションはDCTのみでMTが用意されていないので、大きな選択肢はサスペンションだけだ。110ポンド(約1.5万円)のアンビエントライティングパッケージを装着すると、キャビンの魅力的なムードがいくらか増す。

改善してほしいポイント

コンフォートモードにおけるギアボックスのチューニングは再調整を。ゆったりしたドライバビリティは求めているが、変速そのものがゆったりしているのは望んでいない。
・新型プログレッシブステアリングのフィールは、まだまだ改善の余地がある。
・運転席側の送風口の問題は、よりよい解決策を探してほしい。あとは、インテリアの全体的な質感向上を。


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