かなり前から、成人女性のヘアカラーリングは珍しいものではなくなっていますが、「髪の毛を染めてみたい」と言われるなどして、わが子にヘアカラーリングを行う保護者も一定数いるようです。中には、未就学児や小学校低学年の幼い子どもにヘアカラーリングをするケースも見られますが、幼い子どもがヘアカラーリングをしても頭皮や髪に悪影響はないのでしょうか。また、子どものヘアカラーリングは何歳くらいからであれば問題ないのでしょうか。

 アヴェニュー表参道クリニックの佐藤卓士院長(皮膚科・形成外科)に聞きました。

アレルギー反応を起こす可能性

Q.幼い子どもがヘアカラーリングをすると、頭皮や髪に何らかの悪影響があるのでしょうか。ある場合、具体的にどのような悪影響が出ますか。

佐藤さん「子どもの頭皮と髪はまだ成長途中で、構造的にも免疫学的にも未熟です。子どもの頭皮は大人よりも薄く、皮脂分泌が少ないため、頭皮を保護する皮脂膜の形成が不十分で表面は乾燥気味になっています。そのため、頭皮の防御機能が不十分で外部からの刺激に弱く、敏感で、ヘアカラーリングをすると悪影響を及ぼします。

また、子どもの髪は大人よりもタンパク質の成分が少ないため、細くて弱く、髪の表面を覆っているキューティクルも未発達なので髪の内部を保護する機能が弱いです。子どもにヘアカラーリングをすると、その染料が頭皮や毛髪のバリアーを越えて体内に浸透しやすく、アレルギー反応を起こす可能性もあります。

これらの症状は大人でも起こり得ることですが、子どもは大人よりも頭皮や髪が脆弱(ぜいじゃく)なため、子どもの方が起こる可能性が高くなります」

Q.幼い頃にヘアカラーリングをしたことで、大人になったときにも悪影響が残ることがあるのでしょうか。ある場合、どのような悪影響が残るのでしょうか。

佐藤さん「ヘアカラーリングの染料が一度体内に浸透してしまうと、その成分に触れるたびにアレルギー反応を起こしてしまう可能性があります。アレルギーは頭皮が赤くなったり、皮膚炎を起こしたりするものから、触れただけで呼吸困難やショックなどのアナフィラキシー症状が起きるものまでさまざまです。

また、ヘアカラーリングで頭皮がダメージを受けると髪の成長を邪魔したり、髪の寿命が短くなったりします。さらには、毛根がダメージを受けて、その毛穴から発毛しなくなると薄毛になってしまう可能性があります」

Q.子どもがヘアカラーリングをするとき、何歳くらいからであれば問題ないのでしょうか。

佐藤さん「ヘアカラーリングのカラー剤の取扱説明書には、年齢に関して規定はありません。もちろん、法律でも、ヘアカラーリングをしてよい年齢は定められていません。人間は赤ちゃんから大人へと成長していきますが、髪も発達段階に伴い、徐々にしっかりとしたものに生え変わっていきます。

乳児期(0~1歳)から思春期前半(小学生高学年~中学生)までの頭皮と髪は未熟であるため、ヘアカラーリングはしない方がよいでしょう。思春期後半(高校生ぐらい)になると頭皮や髪がしっかりしてくるので、ヘアカラーリングを行ってもよいと思います。

ただし、高校生はまだ思春期の段階であり、ホルモンバランスの乱れから髪質も変化しやすいので、ヘアカラーリングは髪の状態に注意しながら行う必要があります」

Q.保護者がまだ幼いわが子から、「髪の毛を染めてみたい」と言われたとします。どのように対応すればよいでしょうか。

佐藤さん「繰り返しになりますが、子どもの髪は体と同じく未発達です。ヘアカラーリングの染料に対する抵抗力が低いので髪の毛が弱くなったり、薄くなったりする可能性があります。また、頭皮がかぶれ、体に害を及ぼす可能性があります。そのため、『大きくなってからにしようね』と説明しましょう。

『どうしても』と聞かない場合は、顔料などを毛髪の表面に付着させる毛髪着色料(一時着色料)や毛髪の表面に塗るヘアチョークなど比較的、体への害が少なく、洗髪ですぐに落とせるものを使用するように促しましょう」

オトナンサー編集部

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