2020年11月25日ネット上でドラマ顔負けの事件が起きた。「自転車を盗まれた」と話す男性が自転車盗難犯との攻防をTwitter上にてリアルタイムで実況したのだ。加藤江さん(@kato0718ko)はSNSマーケティングの会社の経営者。11月26日は自宅の両国で午前中に在宅ワークを行い、昼過ぎに打合せのため自転車で出かけようとした。しかし、普段自宅前に留めている自転車がなかったという。

◆「俺のチャリ盗んでディズニー行こうとすな」

「いつもあるはずの場所になかったのでおかしいと思いましたが、打ち合わせの時間が迫っていたのですぐに電車で向かうことにしました。自転車 には『Tile』(位置情報を発信してくれる忘れ物防止タグ)を装着していたので、電車で打ち合わせ場所まで向かう途中、スマートフォンから位置情報を確認しました」(加藤さん、以下同)

 その時点で、加藤さんの自転車はどうやら葛西臨海公水族園付近にあるらしいことを突き止めた。



 時間が迫っていたこともあり、加藤さんは一旦打ち合わせに集中、打ち合わせは21:30まで続いた。そもそも「Tile」は財布やカギなどに付ける目的で購入する人が多い商品。なぜ加藤さんは自転車に付けていたのだろうか?

「僕は自分が自転車を止めた場所を忘れるタイプで、しかも道をビジュアルで覚えるのが苦手。なので自転車をどこに止めていても地図で見れるようにしたいから、かごの手前にテープで装着していました」

 21:30過ぎ、全ての業務を終え、加藤さんは自力で『Tile』の位置情報をもとに自転車を探し出すことを決意。

「『Tile』は過去の位置情報の履歴も確認ができるのですが、前日の深夜3時~その日の12時くらいまで、葛西エリアのとある住宅街に私の自転車があったことがわかりました。なので、恐らくその住宅街の場所が犯人の自宅なんだろうなと考えつつも、捜索を始めた21:30の時点で最新の自転車の位置情報は、なぜか葛西駅付近に移動していたんです」

 加藤さんは急いで葛西駅に移動したという。しかし、位置情報が示す場所に自転車はなかった。



「『Tile』はこの場所に僕の自転車があることを示しているのに、なぜかなかったんです。後からわかったことですが、実はこの場所は地下に駐輪場があるところで、いくら地上を探しても意味がなかったんですね……」

◆交番に向かうも……

 そこで加藤さんは駅前の交番に向かい、警察官に自転車の盗難被害にあったことを相談。

「だけど『車体番号も防犯登録番号も分からないなら警察は動けない』と言われました。自転車は車両扱いで特殊みたいですね。実は自転車を買ったばかりだったので防犯登録をまだしていなくて……。これは僕の落ち度でしたね」

 困り果てた加藤さんは思い詰め、バスに乗った。前日深夜3時~その日の12時くらいにずっと自転車があったと位置情報が示す場所(=犯人の家と推測)まで移動したのだ!そして犯人の家らしき周辺を歩き続けた。

◆一旦は諦めかけたものの……

 それでも自転車は見つからず、徐々に終電が近づいてきた。午前0時をまわった時点で、加藤さんはついに自転車の捜索を諦める決断をする。

ごめんなさい。今までかなり歩いて探したのですがどうしても見つかりませんでした。たくさんの方に応援いただいていたのに本当にすみません。ですが、僕は諦めたわけではありません。今後も追跡を続けます。」

 こうTwitterに投稿し、電車に乗り帰路につくことに。自宅の最寄り駅付近に到着し落胆の中、空腹を満たすべく牛丼を食べていると、事態は一転する。午前1時21分、自転車の位置情報が突然更新されたのだ!



「深夜1:30なのに位置情報が更新されたので驚きましたが、追跡したい……でも体力的にはしんどいという葛藤がありましたね。翌日も9時から打ち合わせの予定でしたし。ただ、たくさんの人がネット上で楽しんでくれていたので、探しに行った方が盛り上がるのかなと思って。Twitter上で『カーシェアを借りて追跡したら一緒に乗ってくれる人いる?と呼びかけたら葛西に詳しい方2名が名乗り出てくれたんです!」

 加藤さんは追跡することを決意、自宅の近くでタイムズカーシェアを借り、自転車の位置情報が示す位置まで向かうことにした。そして大胆にもTwitter上でLIVE配信を開始する。

「自宅近くの両国駅付近から葛西駅まで向かう途中、位置情報が葛西駅付近の牛丼屋の近くで更新されました。なので急いで向かったのですが到着した時には僕の自転車はなくなっていて……。その瞬間さらに北の場所で位置情報が更新されたので向かったけれど見つかりませんでした。完全に振り回される形となってしまったので諦めかけたのですが、最後にどうしても悔しい、と犯人の家(と思われる場所)の周辺に向かったところ、ついに僕の自転車が見つかったんです!」

◆「ドラマよりも面白い展開」とバズった



 じわじわと犯人?を追い詰める様子はTwitter上でバズり自転車を見つけられそうで見つけられない、犯人と接触しそうでできない攻防戦の様子に「まるでドラマを見ているよう!」との声が続出。深夜の時間帯だったにも関わらず、「これは最後まで見届けたい」と寝れなくなってしまった人も多かったようだ。ついに自転車が見つかったのは明け方4時。にも関わらずTwitter上は大きな盛り上がりを見せた。

「今回はたくさんの応援とコメントをもらえたからこそ頑張れました。Twitterでの応援がなかったら盗まれた自転車のことは諦めていたと思います……」

 今後はまた自転車を盗まれることの無いようにしっかりと防犯体制を整えると誓った加藤さん。犯人もまさか「盗んだ自転車」の動きを逐一Twitter上で実況されているとは思わなかったはず。悪いことはできないものだ。

<取材・文/松本果歩>

【松本果歩】
恋愛・就職・食レポ記事を数多く執筆し、社長インタビューから芸能取材までジャンル問わず興味の赴くままに執筆するフリーランスライターコンビニを愛しすぎるあまり、OLから某コンビニ本部員となり、店長を務めた経験あり。Twitter@KA_HO_MA

画像は加藤江さん(@kato0718ko)Twitterより