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わナンバーにならない高級車アピール

text:Kumiko Kato(加藤久美子)

投資者を募り、ローンを組んで購入させた高級中古車を預かってカーシェア事業を展開していたスカイカーシェアが事業停止を発表して間もなく2か月になる。

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投資者には一切の金銭的負担はなく、契約時に車両金額の1割と毎月1万円程度、契約期間終了後には100万円の謝礼が支払われる契約であった。(謝礼の金額は個々の契約によって異なる)

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埼玉県川口市内にある通称「昭和カートン」駐車場。10月下旬、続々と投資者が自分のクルマの返還を求め、訪れていた。※現在は閉鎖    加藤博人

8月以降、運営会社からの入金はなく、多くの投資者が数百万円の支払いを背負う状況となっている。

高級車専門のカーシェアリングマッチングサービス「SKY CAR SHAREスカイカーシェア)」は10月8日事業停止を投資者に発表した。

10月25日には代理人の弁護士が決定。

11月14日一部投資者への説明会が開催され、運営会社である(株)SERIAS、(株)ランドコアサービス、(株)anchor、(株)コーディアルの4社は11月20日、東京地裁に破産を申請した。

その後、25日頃には破産管財人から債権者に対して車両返却などに関する質問と回答書が郵送されている。

スカイカーシェアは、「『わ』ナンバーにならない高級車」としてレンタカーよりも格安の値段で借りられるとアピールしていた。

自家用車を共同使用するという業態であるから可能なのだとしていた。

「一般のオーナーと個人間で自家用車を共同使用できるサービスです。共同使用とは、個人間において自家用車の使用/管理に関する実質的な権限と責任を分担し、車両を共同で使用するものです」

レンタカーのように貸主と借主の関係で車両の貸渡を行うものではありません」(スカイカーシェア)

しかし、通常エニカなどの個人間カーシェアは、もともとクルマを所有するオーナーが、自分がそのクルマを使わないときに、他者(ドライバー)に使ってもらうというスタイルがベースになる。

1日(24時間)のシェア料金は、購入代金(月々のローン支払い額)、駐車場代金、12か月点検費用、車検費用などの維持費を考慮して運営側から料金の上限額が設定される。

維持費を大幅に超える利益を出すようなシェア料金は認められていない。

国交省「共同使用」とは言えない!?

一方、スカイはシェア車両となるクルマを投資者に購入させる形をとって、クルマを完全に預かってカーシェアとして運用する……というシステムだ。

確かに一般的な高級車レンタカーに比べると料金は安いが、エニカのように個々のオーナーが申告した維持費に基づいて算出された料金ではない。

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「わ」ナンバーにならないことを積極的にアピールしていた。    加藤博人

スカイカーシェアの業態が「個人間カーシェア」として適用されるのかどうか? 「わ」ナンバーにならないことを積極的にアピールしていたが、それは正しいことなのだろうか?

レンタカー事業などを担当する国土交通省 自動車局旅客課に電話をして聞くことができた。

――スカイカーシェアの事業は「共同使用」と言えますか?

「購入したクルマを見たのは契約時のみ。ふだん、自由に購入したクルマを使えるわけではないので、これは、『共同使用』とは言えないでしょう」

「中にはクルマも見ずに契約した方もいると聞いています」

「自由に乗ることもできない、日常的な整備や点検、諸々の管理などもすべて運営会社に託した状態でシェア車両として貸し出す業態では、『共同使用』ではありません」

オーナー自身が『使用』できていない状態では、共同使用とは言えません」

――罰則はあるのですか?

「あります」

「自家用自動車の有償貸渡の規制に違反すると刑事罰の対象となり、罰金100万円以下の法定刑となります(道路運送法98条17号)」

「共同使用」の料金に関してもう少し

ちなみに、国交省は、

「『自動車を使用する』とは、自動車の管理も合せて行うことを常態とするものであり、日常点検整備だけでなく、定期点検整備等も行うものである」

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10月25日には代理人の弁護士が決定。 11月14日一部投資者への説明会が開催され、運営会社である(株)SERIAS、(株)ランドコアサービス、(株)anchor、(株)コーディアルの4社は11月20日、東京地裁に破産を申請した。    加藤博人

としている。

スカイカーシェアは「共同使用」を大前提とする個人間カーシェアの定義からも大きく外れているようだ。

国土交通省に別のカーシェア業者が照会した法令適用事前確認手続の文書に対する、国土交通省自動車局旅客課長の回答(令和2年7月31日)をもとに、道路運送法第80条の適用外となる「共同使用」とは何なのか。改めて確認してみよう。

共同使用料(=カーシェア料金)とは?

車両の維持管理コストとして、ガソリン代、その他車両の維持に必要とされる実費を基礎に按分された額を言う。

その額については車両の所有者と共同使用者の合意に基づき共同使用契約により定めるものとしている。

当該共同使用料の額は、どの時点を基準として算出するのか、また、共同使用者の数は固定されるのか、増減するのかによって変動するものと考えられる。

共同使用の考え方の具体例

・同一の自動車を2以上の者それぞれが、自己の欲求充足のために主体的な立場において使用

使用者が具体的に特定され、自動車の使用及び管理に関して予めの合意が存在している

使用者それぞれが自動車の使用及び管理に関する権限と責任を有する

・共同使用料は営利を目的とせず、自動車の維持費の範囲内である

投資者、クルマの情報どこまで持っていた?

「クルマをローンで購入する形をとって(実際はスカイ側がローン代金+自動車保険料などを投資者の口座に入金)、そのクルマをスカイカーシェアが預かって、カーシェア車両として運用すると言われた」(大阪府20代女性)

「クルマは見てない。車検証のコピーももらっていない。車名も『メルセデス・ベンツ』ということしかわからない。手元にあるのは、自動車保険証書(原本)とローンの契約書だけ」(埼玉県40代男性)

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広告宣伝活動の1つとして2018年~19年頃まではクルマと一緒に写真を撮って公式サイトに掲載されている。

※その後、自動車保険証券に記載されている車台番号と車両ナンバーで、運輸支局で車検証を再発行し、同時に登録事項等証明書(現在・保存記録)を取得し、車台番号からそのクルマがメルセデス・ベンツCLS AMGであることが判明。

「投資者はスカイカーシェアの車両を全車半額でシェアすることができた。自分の契約車両を借りたいと言ったが、届いたクルマは自分の車ではなかった。何度か借りたが結局自分のクルマには乗れなかった」(東京都30代男性)

このような状況では、到底、「共同使用」とは言えないだろう。

そもそも、ローン契約を完了し口座引き落としが行われているのに、納車されていない「未納車」も90台あるという……。

スカイカーシェアのシェア事業は、最初から違法な状態で運用されていたというわけだ。


【じつは最初からアウト!】「わ」ナンバーにならぬ高級車カーシェア投資 国交省に聞くと…「共同使用」の定義から大きく外れていた