(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)

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 新型コロナウイルス感染拡大の「第3波」がやって来た。

 PCR検査が拡充したとはいえ、連日の感染者数の増加は、これまでの最高を記録している。

 感染拡大抑止には人の移動を止めること、飛沫感染防止にはマスクが最適、と専門家が指摘しているのに、Go Toトラベルを推し進め、あえてマスクを外すGo Toイートで経済を回していこうというのだから、感染が再拡大しても不思議ではない。

 政府は、感染拡大の著しい北海道札幌市大阪市を目的地とする旅行をGo Toトラベルの対象外とし、その後付けに菅義偉首相が札幌市大阪市を出発地とする旅行を差し控えるように要請している。そのキャンセル料も負担するという。

 連日500人を超す感染者を出して過去最高を記録した東京都では、11月28日から20日間、アルコールを提供する飲食店とカラオケ店の営業時間を夜10時までに短縮するように要請した。

第1波、第2波のときと同じ「時短要請」しかなす術なし

 またか・・・。そう辟易するのは、飲食店経営者だけではないはずだ。

 時短要請は、これで3回目になる。有り体に言えば、第1波、第2波の対策にやったことと同じだ。つまり、感染拡大が顕著になれば同じことを繰り返して、感染が抑止するのを待つ。それで感染者が減れば、また要請を解除する。そんなイタチごっこが続く。

 私は以前から、経済を優先するのか、感染拡大防止を徹底するのか、目的の曖昧さと二重性は、75年前の敗戦へと戦局を大きく変えたミッドウェー海戦の失敗に通じると書いてきた。

(参考記事)曖昧なコロナ対策、行き着く先はミッドウェーの失敗
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/61452

 やはり、持ち直したかに見えた経済も、これで再び停滞する。元の木阿弥。コロナ禍から抜け出せない精神的ストレスも増す。

 だが、今回は「第3波」と聞いて思い浮かぶのは、ミッドウェーの海戦ではない。ガダルカナル島の戦いだ。

3度失敗した「ガダルカナル島奪還」

 西太平洋ソロモン諸島に浮かぶガダルカナル島日本軍が建設した飛行場が、米国の海兵隊の手に落ちた。これを奪還するため、日本軍は3度の攻撃を仕掛けている。

 最初は1支隊が送られ、1942年8月21日に、900人規模で攻撃を仕掛ける。日本陸軍の伝統でもある白兵銃剣による夜襲攻撃だった。この支隊を率いた一木清直大佐は、それで簡単に相手に勝てると見込んでいた。米軍の兵力は約2000人と見ていた。だが実際には、海兵第1師団を中心に1万3000人だった。日本側は壊滅する。

 次に翌9月、4個大隊からなる総攻撃を仕掛ける。これも伝統に従った夜襲だった。それも密林のジャングルから海側の飛行場に攻め込むものだった。敵兵力は米海兵隊1個師団の1万6000人。日本軍は約5600人。重火力兵器も相手が圧倒していた。

 さらに翌10月、兵力を補充して再び総攻撃を仕掛ける。ところが、これも密林からの夜襲だった。結局、同じことの繰り返しでは成功しなかった。損害だけが増え続けた。

 大本営ではガダルカナル島奪還は難しいのではないか、という考えが強くなった。だが、誰も撤退を言い出さなかった。結局、それから2か月が過ぎて、12月31日の御前会議でガダルカナル島からの撤退が決まる。実際に撤退が行われたのは、それから1カ月後のこと。その間に、補給が立たれた同島では、日本兵の餓死者が相次いだ。

 敵を甘く見ていたこと、帝国陸軍の伝統である夜襲による全軍突撃ばかりを繰り返していたことが、惨敗を招いた。この失敗が本土攻撃への足掛かりとなる。

 新型コロナウイルス感染拡大「第3波」でも、前回、前々回と同様の自粛要請作戦がとられている。

 しかし、今回は少し様相も違う。報道を眺めると、時短営業に応じないという店舗も出てきている。

政府と東京都の責任の押し付け合い

 東京都では、20日間の時短要請に応じた店には、協力金40万円を支払うという。だが、それも1事業主に40万円で、たとえば4店舗を経営する場合だと1店舗当たり10万円になる。それでは家賃にもならず、もはや要請に従ってもどのみち経営が成り立っていかないとの判断だ。

 もっとも、「第3波」の到来には、日常的に気の弛みが蔓延していたように思えてならない。東京の地下鉄に乗っても、マスクをしていない若者を見かけるようになった。スーパーコンビニでもマスクをしていない客が、レジの前で間隔を置かずに並んでいる。夜の繁華街でもマスクを外して歩く大人たちがいる。黙っていれば、それでいいかも知れないが、アルコールが入って大きな声で会話しながら、すぐ傍を通り過ぎていく。驚いたのは、深夜に立ち寄ったコンビニの店員がマスクもしないで接客していたことだ。

 コロナ慣れ、というわけではないだろうが、日本では重症者も少なく、感染してもたいしたことはない、自分は感染しない、とでもいう過信で、“ウイルス”という相手を甘く見たことが、第3波となったはずだ。

 それで経済がまわり、飲食店も売り上げが回復してきたところへ、3回目の打撃が襲う。死活問題に直結する。

 そうでなくても、自殺者が増えている。7月から前年同月の自殺者数を上回るようになり、その傾向がずっと続く。原因が新型コロナウイルスによる経済的な事情が理由だとすれば、餓死者を出したに等しい。

 自粛要請に協力金を払うとしても、財源は無限にあるわけでもない。「全員突撃!」の命令ならぬ「全員自粛!」の要請ばかり、同じことを繰り返しても、いつかは破綻する。

 それどこか、東京をGo Toトラベルの対象から外すかどうか、菅首相も小池百合子東京都知事も言い出さない。かねてより不仲説が囁かれていたふたりだが、小池知事は「国が判断すべきだ」と突っぱねている。インパール作戦も互いに譲り合って上層部の誰も「中止」を言い出さなかったことが、凄惨な末路を招いた。

 同じことを繰り返しても埒は明かない。それでもイタチごっこを繰り返す果てに、ワクチンという“カミカゼ”がやってくるのを待つとでもいうのだろうか。それもいつのことになるのか、まだ先が見えてこない。

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