自分の子供を「ブサイク」「鬼がわら」と言われたーー。

夫や姑からとめどなく浴びせられる言葉の暴力が原因で、不眠症や過呼吸になった30代の木原あゆみさん(仮名)。心療内科へ通院している彼女から、弁護士ドットコムに体験談が寄せられました。

●「ブサイク過ぎて私の友達に紹介できない!」

5年間の交際を経て、彼からのプロポーズで始まった幸せな結婚生活のはずでした。夫が「理想の夫」から「異常なモラハラ男」に豹変したのは、あゆみさんが第一子を出産した後からでした。

忘れもしないのは、あゆみさんの子どもの顔について、姑が「ブサイク過ぎて私の友達に紹介できない!うちの家系の顔ではない、おたくの家系の顔だ」と言ったときのこと。

義姉からも「ブサイク。鬼がわらみたいに泣く」とけなされ、あゆみさんが夫に助けを求めると、彼までもが「確かに俺にも似てない。俺の子?まぁ自分が言われたなら自分で言い返してきなよ」と発言。

頼る相手を失ったあゆみさんは、1人孤独に泣くしかありませんでした。

●奴隷のごとく扱うように

大切な我が子への暴言を皮切りに、義家族からのモラハラはエスカレート

あゆみさんによれば、「物件や家具、お茶碗にいたるまで、買うもの全て姑と義姉が介入、もしくは決定します。歯向かうものなら10倍返して怒られます。旦那も味方をしてくれず、それどころが私を奴隷のごとく扱うようになってきた」のだそう。

挙句に夫は、「俺の一言で10通りの会話返答を推測、思い出しておきな」と言い出す始末。抑圧され、萎縮し続けた結果、あゆみさんは体調を崩し、不眠、動悸、胃腸炎、逆流性食道炎、生理不順などの症状が出るようになってしまいました。

パート代だけでは、子どもを養えないため「自立できない」という不安や、体調面の心配もありますが、離婚に気持ちが傾いているようです。

そこで、モラハラを理由に離婚できるのか質問を寄せています。早川雅子弁護士に聞きました。

●モラハラは離婚が認められることが少ない

離婚は、当事者間の話し合いで成立しなければ、裁判所での調停、訴訟へと話し合いの場所を移すことになります。離婚が認められる理由は、法律で決まっていますので、離婚したい人は法律上の理由に該当するとして、主張します。

では、今回の相談のケースである「モラハラ」も、精神的暴力としてみなされますが、裁判では、離婚が認められることは少ないですし、損害賠償請求も棄却されたり、認容されても極めて少額となったりします。

●離婚が認められるケースは?

しかし、離婚できないわけではありません。

裁判では、離婚理由がモラハラだけでは認められなくても、別居しているなど、客観的に婚姻関係が破綻していると評価されれば、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)に該当しているとして、離婚が認められます。

別居期間は、他の事由にもよりますが、4年を経過した頃、訴訟を提起し、裁判が終わる頃に5年経過していることが目安となります。

●婚姻費用は支払う側にとって負担の重い義務

裁判所では、裁判の前に調停をおこなうことになっています。

相談者には、お子さんがいらっしゃいますが、離婚成立までの期間、養育費より若干高い、婚姻費用を受けとることが出来ます。支払う側にとっては、負担感があることから、離婚を決意する流れになることもあります。

●別居後の流れは?

なお、別居したら「離婚調停」と「婚姻費用分担調停」を同時に申立てて下さい。「離婚調停期日」(調停が行われる日)が決まれば、期日証明書(調停が行われる期日の証明書)を市役所に提出し、児童手当を受取る事が出来ます。

別居後6カ月を経過すれば、0歳から2歳児の保育料は自身の収入を基に算定され下がります。離婚すれば、児童扶養手当を受取ること、安価な公営住宅への入居(自治体によっては、調停などを申し立てて、離婚の意思表明で足りるところもある)、様々な就労支援の制度も利用できます。奨学金で、看護学校などへ通学している方もいます。

相談を寄せた方は「自立できる自信がない」と考えているようです。しかし、離婚後も様々な制度を活用することで、自立していくことはできます。あきらめないで下さい。

【取材協力弁護士】
早川 雅子(はやかわ・まさこ)弁護士
平成21年1月、司法過疎地の法テラス鹿屋法律事務所(鹿児島県鹿屋市)に赴任しました。DV被害者支援団体「アミーチ」の会長として、市と協力して、DV問題の啓発、独自の被害者支援活動を行っております。
事務所名:早川法律事務所
事務所URL:http://www.hayakawahouritsu.jp/index.html

この人でなし! 義実家がわが子に「ブサイク」「うちの家系の顔じゃない」と暴言