「中国政府は恥を知るべきだ!」

JBpressですべての写真や図表を見る

 11月30日オーストラリアスコット・モリソン首相が、中国に対して怒りを爆発させた。

残虐さ強調する合成写真を報道官がツイッター投稿

 中国外交部が、またおかしなことになっている。「戦狼(せんろう)外交官」(狼のように吠える外交官)として知られる趙立堅・報道官が同日、ツイッターに、こんなメッセージアップした。

オーストラリア兵士たちによるアフガニスタン市民や受刑者への殺人にショックを受けた。われわれはこのような行為を、強く非難する。そして彼らに責任を負わせるよう求める>

 そこには、アフガニスタン国旗の上に座るオーストラリア兵士が、子供の首元に血塗りのナイフを突きつけている写真が添えられていた。子供は子羊を抱えている。

 モリソン首相は、怒り続けた。

「この画像は偽造されたもので、われわれの偉大な軍に対するひどい中傷だ!」

 オーストラリア国防軍(ADF)は11月19日、同国の特殊部隊に所属する25人の兵士が、派遣されたアフガニスタンで、39人のアフガニスタン人を不法に殺していたという報告書を発表した。これによって、オーストラリア国民の軍に対する非難が強まり、警察が捜査を始めていた。

 趙立堅報道官のツイッターは、この一件について、オーストラリアを非難したのである。中国はアフガニスタンと国境を接していて、アフガニスタンの最大の貿易相手国となっている。

中国が豪州を攻撃し続ける理由

 中国外交部は、平日の午後3時から3時20分まで、2階にあるブルールームで定例記者会見を行っているが、今週の担当は、「戦狼外交官」の上司にあたる姉御肌の華春瑩・報道局長である。11月30日の会見では、この元祖「戦狼外交官」も、部下をかばって吠えた。

ブルームバーグ記者オーストラリアのモリソン首相は、あなたの同僚のツイッターの文章に対して、中国政府の謝罪を要求している。そのツイッターの文章には、オーストラリア兵士がアフガニスタンの子供の喉元にナイフを突きつけている。モリソン首相はこの写真を、「極度に反感を覚えるもの」であり、また写真自体が合成写真であるとして、ツイッター社に削除を要求している。モリソン首相は、『中国政府はこんなものを載せて恥ずかしい』と述べている。あなたはこれにどう論評するか?」

華報道官オーストラリアの一部の軍人は、アフガニスタンで重大な犯罪行為を犯した。このことはオーストラリアメディアが報じていることであり、オーストラリア国防部の調査報告でも確認されている。オーストラリア国防軍のキャンベル司令官は、この件に関する会見を開き、内容を報告している。報告によって明らかになった詳細は、人々を震撼させ、身の毛もよだつものだった。男性と男の子が集中的に殺戮しされたり、目を潰され、喉をかき切られたり。二人の14歳の少年が、喉をかき切られた後に、袋に詰められて川に流されていた。新兵に、捕虜を殺戮する『練習』をさせていた。オーストラリアは、こうした残虐な暴行について、国際社会の一致した強烈な譴責と非難を受けた。

 オーストラリアが、私の同僚のツイッターに対して、これほど強烈に反応しているのは、オーストラリアの一部軍人がアフガニスタンの無辜の市民を殺害した冷酷な行為には理があって、人々がこうした冷酷な罪行を譴責するのは理がないと説明したいのではないか? アフガニスタン国民の命も、命なのだ! オーストラリア政府はすべきことは、深く反省し、法によって凶手に縄をかけることだ。そしてアフガニスタンの国民に対して正式に謝罪し、永久にこうした罪行を犯さないということで国際社会の承諾を得ることだ。

 あなたはいま、中国政府が『恥を感じなければならない』と言った。オーストラリア軍をアフガニスタンに派遣したのはオーストラリア政府であり、オーストラリアの一部軍人がアフガニスタンで犯した残虐な罪行こそ、オーストラリア政府は『恥を感じる』べきではないのか」

BBC記者オーストラリアメディアの報道によれば、この件に関わった軍人の一部は、すでに解職されている。今後も刑事調査を受け、入獄や懲罰もあり得るという。中国はオーストラリア政府に、どのような措置を求めるか?」

華報道官オーストラリア政府は、成熟した政府と認識している。彼らはこの驚くべき事件に対して、どう対処していけばよいかを、当然分かっているだろう」

 以上である。中国とオーストラリアの対立については、このコラムの5月の第35回レポートで詳述した通りだ。新型コロナウイルスの中国の原因追及を訴えた4月23日のモリソン首相の会見に端を発し、中国側がオーストラリア産の牛肉と大麦に対して、「懲罰的」に関税をかけたり、輸入をストップしたりした。

(参考記事)中国、コロナの真相究明主張する豪州に「報復外交」
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/60537

 11月28日には、オーストラリア産のワインに対して、最高で212.2%の中国税関への保証金支払いを義務づけた。まさに、ここまでやるかという敵対ぶりである。

中国外交部の強硬な対豪姿勢、習近平氏の意図とは乖離か

 だが普段、中国をウォッチしている私から見ると、中国外交部のオーストラリアに対する「戦狼外交」は、解せないものだ。

 というのは、10月下旬の「5中全会」(中国共産党第19期中央委員会第5回全体会議)を経た習近平政権は、「戦狼内交とパンダ外交」、すなわち「内には厳しく、外には優しく」という方針に転換しているからだ。王毅国務委員兼外相が先週、日本と韓国を訪問したのも、その流れである。中国外交部のホームページの表紙では、習近平主席が最近、いかに平和的な外交を積極的に展開しているかを喧伝している。

 その流れで行けば、半年以上にわたって反目し合っていたオーストラリアとも、いまや関係を修復させるべき時なのである。それが再び、オーストラリアに新たなケンカを売っているのだ。

 ここから想像できる一つの仮説は、何らかの理由で、習近平主席が中国外交のグリップを、きちんと握れない状況が生まれていることだ。換言すれば、習主席の意思がきちんと末端まで行き届いていないのである。

 似たような疑問は、11月20日オンラインで開かれたAPEC首脳会議の時にも感じた。習主席が突然、「TPP(環太平洋パートナーシップ協定)への参加を積極的に進めていく」とスピーチしたのである。もしかしたら習主席は部下から、「アメリカ大統領の継承でもたついている間に、2014年の北京APECで主席がお示しになった宣言を推し進めましょう」などとおだてられ、その気になって発言したのかもしれない。

 だが、冷静に考えれば、中国が現行のTPPに入るためには、習近平主席が後生大事に抱えている国有企業を大胆に改革していかねばならないのだ。ところが習主席は、そこまで深く考えて発言したようには見えなかった。

 この先、もし習主席がきちんと外交のグリップを握ったなら、中国はオーストラリアとの関係改善に乗り出そうとするだろう。もしこれ以上、中国とオーストラリアの関係が悪化していくならば、中国の統治システムに、本当に何らかの障害が生じていることが考えられる。

[もっと知りたい!続けてお読みください →]  来日の中国・王毅外相「スマイル外交」に転じた理由

[関連記事]

批判したら経済封殺、日本も中国「戦狼外交」の標的

中国、コロナの真相究明主張する豪州に「報復外交」

中国外交部の趙立堅報道官(写真:ロイター/アフロ)