「理由なく突然に」が暴力のきっかけで最多でした。

日本民営鉄道協会は2020年12月1日(火)、大手民鉄16社における駅係員や乗務員などへの暴力行為の件数が、2020年度上半期(4~10月)は前年同期と比べて約4割減少したと発表しました。

大手民鉄16社(東武、西武、京成、京王、小田急、東急、京急、東京メトロ、相鉄、名鉄、近鉄、南海、京阪、阪急、阪神、西鉄)の暴力行為の件数を集計したところ、2020年度上半期は54件で、2019年度上半期の93件から4割近く減ったことが分かりました。

暴力行為を発生曜日別に見ると、従来は週末に向けて件数が増える傾向でしたが、2020年度上半期は水曜のみ少ない(1件)ほかは、各曜日で7~10件発生しています。発生時間帯は、従来と同様、遅い時間ほど増える傾向です。

発生場所は、改札がほぼ半数の26件で、以下多い順に改札(17件)、通路(5件)と続きます。階段と車内はそれぞれ1件、その他は4件でした。

契機(きっかけ)別では、「理由なく突然に」が最も多く23件で、以下「迷惑行為を注意して」が15件、「酩酊者に近づいて」が10件、「けんかの仲裁」が6件でした。加害者の7割(38件)は飲酒していました。

カッター取り出し威嚇されたケースも

「不明」を除くと加害者の3割は「飲酒なし」ですが、木曜夜(17~22時)に50代「飲酒なし」の人が改札で起こした、以下のような事例も紹介されています。

「駅係員が、旅客同士のトラブルを仲裁した際、一方の旅客が謝罪した為帰宅させた。それに対し立腹した加害者に殴られそうになり、駅係員がよけたところ、加害者が転倒したので取り押さえた。その後、駅係員が少し落ち着いた様子の加害者から離れようとしたところ、カッターナイフを取り出した加害者に『殺してやる』と威嚇された」

加害者の年齢で最も多いのは「40代」と「50代」でともに13件ですが、目立った偏りはなく「20代以下」から「60代以上」まで幅広い年代に分布しています。

日本民営鉄道協会は、2020年度上期において暴力行為は減少したものの、一方で、新型コロナウイルスの感染拡大があり、緊急事態宣言による移動の自粛要請テレワーク推進などの影響で輸送人員が対前年同期と比べて約3割減となったことを踏まえると、発生件数は依然として高い水準にあるとしています。

鉄道89社局が2020年12月7日から駅構内・車内に掲出する暴力行為防止ポスター「酔った勢いで人生はこわれる。」(画像:西日本鉄道)。