11月30日誕生日を前にした記者会見のなかで秋篠宮は、「結婚することを認めるということです」と述べ、事実上、長女・眞子内親王小室圭さんの結婚を認める発言をした。一方で、「結婚と婚約は違いますから」と会見の最後に言及している。これはどういうことなのだろうか。

戦後皇室の「恋愛結婚」神話を加速させた眞子さまと小室さん

 今回の眞子内親王小室圭さんとの結婚問題は、2017年5月にNHKが婚約内定をスクープしたことから始まった。その後、眞子内親王小室圭さんとの出会いなどがメディアで盛んに報じられた。国際基督教大学ICU)で出会ったことは、世間ではとても好意的に受け止められた。上皇・上皇后のいわゆる「テニスコートの出会い」以来、戦後の皇室は「恋愛結婚」の流れが定着していた。

 両親の秋篠宮夫妻や伯父伯母にあたる天皇皇后も、特に男性皇族の強い思いが結婚へと至ったと伝えられ、皇族が自ら強い意思を持ち、自身の伴侶を得ることはまさに象徴天皇制を体現する形でとらえられていた。そして、「海の王子」というキャラクターや、パラリーガルとして勤務していた小室さんの側面も、むしろ現代的な若者像として好意的に見られていた。そうした彼との結婚を選択した眞子内親王に対しても、より戦後皇室の「恋愛結婚」神話を加速させた存在として、歓迎されていた。

 そもそも、平成のなかで、秋篠宮家に対する世間のイメージはよかった。自由闊達に育った秋篠宮は、平成最初の皇室における慶事として婚約・結婚したが、質素な学習院官舎に住む川嶋紀子さん(当時)との結婚は、「紀子さまブーム」とも呼ばれるような現象を起こした。

 1991年10月23日には長女の眞子内親王が誕生、1994年12月29日には次女の佳子内親王が誕生し、次の世代の皇族がいる宮家として注目を浴び続けた。中学生になった眞子内親王はちょうどそのころに興隆してきたネット社会のなかで、「かわいい」存在として注目されてきた。「秋篠宮眞子様御画像保管庫」なるサイトも作られたほか、ニコニコ動画眞子内親王を模した「ひれ伏せ平民どもっ!」という動画が人気になったこともある。高校生になった佳子内親王もやはりネット上でそのビジュアルが消費され、「佳子さまブーム」が起きたこともあった(茂木謙之介『表象天皇制論講義』白澤社、2019年)。

個人の意思を尊重するリベラルな秋篠宮家への期待

 また、眞子内親王佳子内親王もにこれまでの慣習にとらわれずに、ICUへ進学したこと(佳子内親王は一度進学した学習院大学を中退してICUへ)も、秋篠宮夫妻がそれぞれの意思を尊重し、自由に子どもたちの教育を行っているととらえられた。

 皇太子家(当時)が、雅子皇太子妃の病気療養によってなかなか外へのアピールができず、しかもメディアなどで様々な批判が展開されていたことと対比するかのように、秋篠宮家への注目は高まった。2006年9月6日に長男の悠仁親王が誕生したことも大きいだろう。リベラルな秋篠宮家への期待は高かった。

 そして、被災地訪問や慰霊の旅に代表される、いわゆる「平成流」の天皇制が国民から歓迎されて高い支持を得つつ、2016年8月に平成の天皇が退位の意向をにじませた「おことば」を発したことで国民の天皇制への関心が高まっている最中に、眞子内親王小室圭さんの婚約内定が発表されたのである。2017年の九州豪雨のため、いったんは延期されたものの、9月3日に婚約内定記者会見が行われた。ここでも、お互いを「太陽のよう」「月のよう」と述べた二人の姿は慶事として好意的に受け止められた。こうして、結婚まで順調にいくかのように思われた。

金銭トラブル報道により事態は一変

 ところが、2017年末に「週刊女性」が小室圭さんの実家の金銭トラブルに関する記事を掲載(12月26日号)、「週刊文春」や「週刊新潮」、「週刊現代」などの各週刊誌・女性誌も同様の問題を報じるようになった。年明けから週刊誌メディアはこれに関する報道を過熱させ、ネットでも小室圭さんや母親に対するバッシングが展開されるようになった。

 そして、2018年2月7日には宮内庁から「納采の儀を始めとするご結婚関係儀式等は、後日に延期する」との発表がなされた。宮内庁は変更後の日程については「改めて発表する」としながらも、翌年は「代替わり」という皇室にとって重要な儀式などが目白押しであることから、「それら一連の儀式等が滞りなく終了した再来年になる見込み」とも言及していた。

篠宮ご夫妻「現在のままでは納采の儀は行えない」報道の重要性

 その後、小室さんはアメリカニューヨーク州の弁護士資格取得を目指して留学することとなり、フォーダム大学ロースクールへ向かうためにニューヨークへ出発する。その翌日の2018年8月8日、「朝日新聞」が眞子内親王との婚約が内定中の小室圭さんと母親に対し、秋篠宮夫妻が「現在のままでは(皇族の正式な婚約にあたる)納采の儀は行えない」と伝えていたと報じた。

 この記事は大変重要である。秋篠宮夫妻は金銭トラブルに関する記事が出て以降、小室さんや母親と面会、「結婚にあたっては日本国憲法に基づき当事者の意思を尊重すべきだ」と考えているものの、「皇室の一員としては広く国民の祝福と理解を得ることも不可欠と思っており、複数の週刊誌トラブルが報道され続けている現状では、正式な婚約や両陛下へのあいさつができる状態ではない、と考えたという」。

 この結婚は日本国憲法に基づくというフレーズは、今回の誕生日会見でも「憲法にも結婚は両性の合意のみに基づいてというのがあります」と述べられており、秋篠宮の考えがこの時から変化していないことを示している。結婚を認めるというのは個人としての自由を認めるというこれまでの教育方針、そして秋篠宮の生き方を反映したものでもあった。

シーソーのように皇太子家と秋篠宮家の関係性が逆転

 一方で、「広く国民の祝福と理解を得る」というのは、「平成流」に代表されるような戦後の象徴天皇制の流れでもあった。これもまた、今回の誕生日会見でも出てくる。秋篠宮のスタンスは、2018年以降、変化していないと見てよいだろう。そしてこの年の誕生日会見で、「今いろんなところで話題になっていること、これについてはきちんと整理をして問題をクリアするということ(が必要)になるかもしれません。そしてそれとともに、やはり多くの人がそのことを納得し喜んでくれる状況、そういう状況にならなければ、私たちは、いわゆる婚約に当たる納采の儀というのを行うことはできません」との宿題を課したのである。

 それを受け、翌2019年1月には小室圭さんから金銭トラブルについて説明した文書が公表された。ところが、週刊誌や情報番組での報道はそれで止むことはなかった。皇室、小室家に関する様々な動向が報道され、その姿勢が問われた。ネット上でも批判は続けられた。2019年5月の「代替わり」前後になると、皇太子家への注目が高まり、それと反比例するかのように秋篠宮家は停滞しているかのように見えた。まるでシーソーのように、平成期に見られた関係性が逆転したのである。即位を控えた皇太子への期待感からだけではなく、眞子内親王小室圭さんの結婚問題は、秋篠宮家のイメージに暗い影を落としたのではないか。

「結婚と婚約は違いますから」に込められた秋篠宮さまの思い

 そして一連の「代替わり」儀式が終了した2020年11月13日眞子内親王は結婚に関する「お気持ち」を表明した。「私たちにとっては、お互いこそが幸せな時も不幸せな時も寄り添い合えるかけがえのない存在であり、結婚は、私たちにとって自分たちの心を大切に守りながら生きていくために必要な選択です」と、皇族にとってはめずらしいほどに自分の意思を表現した文章とも言える。

 これを受けた秋篠宮の誕生日会見での反応は、やはり子どもの強い意思を受け止め、結婚を認めるというものであった。しかし、皇嗣として象徴天皇制のあり方を考えたとき、説明が必要だと強調したのである。父親として娘の意思は尊重しつつ、家としては認められない。その意識が、「結婚と婚約は違いますから」という言葉にあらわれたのではないだろうか。

(河西 秀哉/文藝春秋 digital

2017年9月3日、婚約内定記者会見での眞子さまと小室圭さん ©JMPA