毎月もらう給与明細や年末調整。天引きされるお金は何? よく理解しないまま、社会人人生を歩んでいないだろうか。「お金に関する知識を手に入れたくても、何から学べばいいのかわからない」…そんな貴方のために、今回はお金を持つために必要な「お金の知識」についての話を経済評論家の加谷珪一氏にわかりやすく解説してもらった。

◆大切なのは、「お金」を知ること。お金にはリスクを減らす力がある

 お金で幸せは買えるのか? 人間、一度は考える疑問だがその答えはさておき、お金を持つことで不幸になるリスクを減らすことは可能だ。例えば会社を辞めたいと思ったとき、「貯金があるからクビになってもいい」という人と「貯金もなく明日の食費にも困る」という人では気の持ち方に違いが出る。つまり、お金は人生に対する不安要素を消す材料となるわけだ。では、お金を持つために必要なものは何だろう。それは「お金の知識」であると経済評論家の加谷珪一氏は言う。

「今の日本で大事なことは、お金がいくらあれば大丈夫かより、どうやって不幸を避けるか。お金に関する知識があれば、心の余裕だけでなく、実益の部分でも大きく変わってきます」

◆第一に知るべきは国の制度

 具体的にどのような知識を得たらよいのか。加谷氏によれば、第一に知るべきは国の制度だという。

「日本のあらゆる制度を理解し、それをフル活用すると、びっくりするほど国から補助が出ていることを知れるでしょう。例えば、医療であれば日本は3割負担、高額治療の場合はほぼ全額返金。実質、ほぼ無料なんです。これを知れば、過剰な医療保険にお金をかける必要はないとわかるはずです」

 また、社会情勢や雇用にまつわるデータは、自身のマネーライフプランを立て直すための知識として有効である。それらを基に、加谷氏は今後の日本経済の未来予想図を語った。

「まず、コロナが収束するまでは、どの会社も売り上げ2割減が通常の状態になります。それでも終身雇用が原則ゆえ、企業はリストラよりも賃金を下げるほうに向かうでしょう。それに応じてか、副業の解禁を国も推奨しています。これは本業一本で生活できる時代は終わったという、国からのメッセージにほかなりません」

◆今後は40代以降に給与が上がることはなくなる?

 さらに、年金受給年齢の引き上げにより定年が上がり、就労人口が増え続けることで大きな弊害も生まれている。

「現在は55歳ほどで賃金のピークを迎えているのですが、今後は40代以降に給与が上がることはなくなります。定年が延長されてコストが増えた分、若い世代の賃金はどうしても引き下げられます」

 賃金の低下は、40代の役職者割合の減少にも見える。この動きは’00年代後半から顕著となっており、上のポストが詰まっていると同時に雇用者の昇進を遅らせることで人件費の削減を図っていると分析できる。

「これからの日本は40代で昇給がストップすることを踏まえた生活が当たり前になります。年功による昇給には期待せず、30代後半の生活水準を老後まで維持することを考えていくべきですね」

 今や「長く働けば働くほど、お給料は増える」という年功序列の賃金体系は崩れ、40代の「部長」「課長」の割合低下は続いているのだ。

◆老齢でも働く、年金も受け取る、個別の資産をつくる

 今後は、お金を稼いで、貯めて、増やす。これが生き抜くための必須事項となる。

「まず、老齢でも働くこと。年金も受け取ること。会社に頼らない個別の資産をつくって益を得るようにしておくこと。このうち一つでも欠けると確実に立ちゆかなくなります。自分の知識をビジネスとして価値のあるものに仕上げ、アウトプットするなどして、せめて60歳までにはひと財産つくっておくべきでしょう」

 このシンプルではあるが、失敗しないマネープランを実現するためにも、お金をもっと理解しなければならない。

経済評論家・加谷珪一氏】
日経BP記者や投資ファンド運用会社などを経て独立し、政府系金融機関などへのコンサルティング業務に従事。多分野での執筆活動を行う一方、億単位の資産を運用する個人投資家でもある。

<取材・文/週刊SPA!編集部 イラスト/今井ヨージ 図版/松崎芳則>

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