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11月の牛枝肉相場は、「和牛肉保管在庫支援緊急対策事業」関連の枝肉の確保が一巡した3週目以降、一服すると見られていた。実際に和牛4等級以下ではその雰囲気が見られたものの、関係者の期待ほどは下がらず、月間平均では和去A4が2,518円、A3で2,322円とそれぞれ前月から160円強値上がりし、前年相場を上回る結果となった。

この間の相場高で余分な在庫を持たなかったところが年末に向けていよいよ買いに入ったほか、輸出需要も堅調にあることが背景とみられる。前述の保管事業をはじめ「学校給食提供推進事業国」など、国・地方自治体の支援措置もあり、さまざまな方面で需要が広がったことも大きい。ただ、この相場高で一時期交雑から和牛にシフトしていたところが、再び交雑に回帰している動きもあり、交雑去勢B3は1,607円、B2で1,471円と、それぞれ172円、198円も値上がりした。

12月は基本的に、カット筋・問屋筋では、すでに契約した分の加工作業に入っているため、3週目からは枝の手当ても落ち着くとみられる。月前半は共励会も多いため、枝肉相場も早ければ3週目以降から徐々に緩む可能も高い。

〈供給見通し〉
農畜産業振興機構の牛肉需給予測によると、12月の成牛出荷頭数は和牛が前年同月比11.6%増の5.0万頭、交雑が同2.0%増の2.2万頭、乳用種が前年同の2.8万頭と予想している。これに対して輸入品はチルドで同2.9%減の2.1万tと少ない予想だ。輸入品は入船遅れが続いており、量販店への納品スケジュールにも影響している。このため、代替として乳雄を提案する問屋筋もあり、ロースを含めて在庫量は少ない状況となっている。

〈需要見通し〉
Go To キャンペーン効果でホテルや外食需要が回復の兆しを見せたものの、新型コロナウイルスの新規感染者増によって再び厳しい状況に置かれている。10月から東京都がGo Toトラベルの対象に加わって以降は、地方送りの動きが活発化したものの、いまはなくなりつつある。主要都市で3週間の営業時間の短縮要請があり、その後、要請が解除されてもクリスマスや忘年会などの需要は厳しいと推測される。

その半面、小売需要は家庭内消費の高まりや白菜などの野菜価格の値下がりも相まって、カタロース中心に鍋物需要は堅調となっている。今後も年末年始に向けて“プチ贅沢”“家族の団らん”を強調して和牛・国産を強化する量販店は多いとみられる。

ポイントは今月前半の末端消費の動向だ。カット筋は概ね28日まで稼働するが、ボーナス支給や巣ごもり需要の高まりから、追加の発注が来た場合、地方送り分も含めて4週目には、再び枝の手当ての動きが強まる可能性も考えられる。

とはいえ、12月下旬の作業は消費者の財布の紐が締まる正月休み明け以降のポジションも視野に入ってくるため、問屋筋もよほどの発注がない限りは、極力在庫(とくに和牛)は抱えたくないというのがホンネだ。そのため、12月後半は和牛よりも、比較的安価で、切り落としなど量販店で使い易い交雑や乳雄、和牛経産などの引合いが強まる可能性も高い。

〈価格見通し〉
12月は、前半が各市場で共励会も多いことから、前半は高値、中盤からじり安の展開と予想される。前述の通り、今月前半の末端消費の具合とそれを受けた追加発注の動き次第では、後半も一定の相場の下支えがありそうだ。

このため、12月の月間平均相場は和牛が前月から値下がりして、A5で2,750円前後、A4で2,450円前後、A3で2,250円と前後と予想する。交雑は頭数が少ないこともあり、B3で1,650~1,700円、B2で1,550~1,600円、乳去で1,000円前後と11月からやや値上がりすると予想する。

〈畜産日報2020年12月3日付〉