体外受精などで作られたものの使用されず、長い間凍結保存されていた胚(受精卵)で、米テネシー州の夫妻が2人目の赤ちゃんを迎えた。使われた胚は27年前に凍結されたもので、これまでの記録の中では最長だという。『New York Post』『WBTV Charlotte』などが伝えている。

テネシー州東部ノックスビルに暮らすティナギブソンさん(29)と夫ベンジャミンさん(36)の間に10月26日、モーリー・エヴァレットちゃん(Molly Everette)が3090グラムで誕生した。モーリーちゃんは1992年10月14日に凍結保存された胚(受精卵)を使って誕生しており、米テネシー大学・プレストン・メディカル図書館によると、27年の凍結期間は世界最長であるという。これまでの最長記録は、2017年11月25日に同じドナーの胚を使って誕生したモーリーちゃんの姉エマ=レンちゃん(Emma Wren、3)で24年だった

夫妻が最初に「受精卵(胚)の養子縁組(embryo adoption、以下EA)」を決めたのは、ベンジャミンさんが不妊の原因となる嚢胞性線維症を患っていたためで、たまたまティナさんの両親がテレビでEAの特集を見たことがきっかけだった。ティナさんは「初めてEAについて聞いた時は『クレイジーだわ』と思い、養子を迎えようとしていたのですが、なぜかEAのことが気になって仕方なかったのです。非営利団体『National Embryo Donation Center(国立受精卵(胚)提供センター、以下NEDC)』が地元ノックスビルにあったこともあり、『とにかく一度行ってみよう』と足を運び、そこで決断したのです」と当時を振り返る。

ティナさんは「エマ=レンの時は、NEDCにある300のプロファイルの中から、健康で私たちと同じように背が低いドナーを選びました。とにかく赤ちゃんが欲しかったので、特に選り好みをしたわけではありません。もちろんドナーは匿名でした」と明かし、こう続けた。

「胚が3つ、私の子宮に移植された日のことでした。この道の専門医であるジェフリー・キーナン氏(Jeffrey Keenan)に、こう言われたのです。『これは24年間凍結保存されていたものだよ』とね。それで初めて、凍結胚が世界最長記録であることを知ったのです。」

こうして移植された胚の1つが着床しエマ=レンちゃんが誕生した2年後、夫妻は第2子が欲しくなり、再びNEDCを訪れた。そして今年2月に同じドナーの胚2つが27年ぶりに解凍され、ティナさんの子宮に移植されたのだった。

夫妻は「まだ第2子が誕生したばかりですが、次は養子を迎えようと思っています。エマ=レンとモーリーのドナーの胚は全て使い切ってしまって、もう残っていないのですよ。ただNEDCには本当に感謝しています」と述べている。

一方でNEDCの研究所長で胚の解凍を行ったキャロル・ソマーフェルト医師(Carol Sommerfelt)は「胚が温度管理された液体窒素のなかにきちんと保存されていれば、少なくとも27年半を経過しても赤ちゃんの誕生は可能だということです。2人の誕生にかかわることができたことを非常に誇りに思っています」と語った。

なおNEDCによると、アメリカでは凍結胚の数は100万にものぼるそうで、余剰胚を破棄することを嫌がり、年間500~1000ドルを払ってでも保存を望むドナーもいるため10年を超える凍結胚も多いという。凍結胚の寿命は正確にはわかっていないが、解凍した胚が妊娠に至る確率は最新データで54%とのことだ。

ちなみに1991年4月生まれのティナさんは、モーリーちゃんの胚が凍結保存された1992年10月にはまだ1歳半だったことになる。もし保存されずに誕生していたら、モーリーちゃんはティナさんと同じ学校に通っていた可能性もあったわけで、ティナさんは最後にこんな感想を述べた。

「胚の解凍や妊娠については、医師を信頼してお任せしました。世界記録を更新と言われてもピンときませんが、EAは子供ができなかった私たちに希望を与えてくれました。可愛い2人の娘たちと今年のクリスマスを一緒に過ごすことを今からとても楽しみにしているんですよ。」

画像は『The Sun 2020年12月2日付「FROZEN IN TIME This incredible baby is ‘27 years old’ – just two years younger than her mother – after embryo was frozen in 1992」(Credit: Haleigh Crabtree Photography)』『National Embryo Donation Center 2020年11月30日付Facebook「The Gibson family has another history-making miracle to celebrate!」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 A.C.)

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