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就活生の身だしなみと言えば、黒無地のスーツが基本だ。そして女子の場合は、ポニーテール、ナチュラルメイク、ヒール付きパンプス。男子の場合も、額と耳周りが隠れない短髪が求められ、地味な色のネクタイを着用することなどが定番になっている。
就職活動をめぐる数々の”決まりごと”は当然のように男女別に用意されているが、こうした既存の就活スタイルに疑問を持つ団体「Smash Shukatsu Sexism」(SSS)が抗議の声を挙げるべく署名活動を行っている。
キャンペーンのタイトルは「#就活セクシズム をやめて就職活動のスタイルに多様性を保証してください!」。12月4日までにオンライン上で4000人以上が賛同しており、同様の疑問や不満を持っている人は多いようだ。
“女性らしさ”の押し付けに耐えられず就活断念
「男女どちらでもなく、ただ『一人の人間』として見てほしいタイプの人間です」
と自己紹介する水野さん(30代)もメンバーの一人。身体は女性だが、自身を女性でも男性でもないと考えているXジェンダーで「決してこの体が好きという訳ではなく、理想は男女どちらでもない身体です」と話す。
署名キャンペーンでは「男女二元論やジェンダー規範の押し付け」「マナー本などによる性差別的な指南」の2点の見直し求めている。訴えの背景の一つには、水野さん自身が就活時に体験した苦しい過去がある。
2013年に大学を卒業した水野さんは、男女二元論で”女性らしさ”を押し付けられる就活スタイルに精神的に追い詰められ、就活を続けられなくなったという。当時は「規範に合わせられないのは自分がマイノリティーであるせい」と思い込んでいたというが、
「『女性は化粧がマナーです』『ヒール、ストッキングがマナーです』『女性らしく』という指南を”女性”とされる人々に一律に押し付けることは、直感的に、『侮辱的だ』と感じていました」
と”女性らしさ”を強要されることに嫌悪感を抱いていたという。
それでも”新卒カード”の重みを感じていた水野さんは「今年就職できなければ終わり」「親に顔向けできない」という思いで就活を続けた。
そこで、体のラインを強調しない、できるだけ真っすぐなラインのスーツを探し回り、靴はフラットな革靴ではなく、紐革靴にヒールが付いているハイブリッドタイプに妥協。靴下も本当は履きたかったにもかかわらず、靴下丈のストッキングを着用するなど苦労しながら自分なりの妥協点を見つけていった。
面接当日はパンツスーツにネクタイをして、化粧はせず、フラットな革靴を履いて、志願先の最寄り駅まで行く。駅に着くと、トイレで簡単に化粧し、ネクタイを外して、ヒール付きの革靴に履き替えて面接に向かっていた。面接後は、逆の手順を経てから帰宅。”女性らしさ”を強要されている姿では、極力人目に触れたくなかったという。
「ジェンダー・マイノリティの方々は、私と似たような感じで乗り切っている方も多いと想像します」(水野さん)
その後は、自身のアイデンティティを偽っていたこともあり、十分に活動できないまま就活を断念した。周囲がジェンダー規範に飲み込まれていくのを見るのが怖くなり、大学や職探しの場から足が遠のいてしまったと振り返る。
「人を踏むのをやめてほしい」という主張
署名活動を通じて「男女二元論やジェンダー規範の押し付け」「マナー本などによる性差別的な指南」の見直しを掲げていることについて、水野さんは
「署名の宛先に訴え、就活指南の問題を解消してもらうことが第一ですが、まずは社会全体に署名で掲げる2点の問題について知ってほしいです」
と語る。あくまでも「自由にさせてほしい」と主張しているわけではなく、「人を踏むのをやめてほしい」と訴えていることを強調する。
だが、その一方で「この状況を作り上げたり加担したり、見過ごしてきた企業や団体、個人には変わってほしいですが、シレッと変わってほしくない気持ちもあります」と複雑な気持ちも吐露する。
「だからわざわざ声を上げ、良い意味で大騒ぎしようと思いました。『この規範、指南、状況は一部の人たちをずっと踏み続けてきた』という事実を認識した上で変わってほしいし、人々がしっかりと抗議したという事実を社会(歴史)に残したいです」
さらに、水野さんは『令和だから』『この時代だから』変わろうというのではなく、「苦しんできた人々はずっといて、それがやっと表面化しただけなんです」と主張する。だからこそ、現状を”なかったこと”にしてシレッと変わるのでなく、苦しんでいる人がいることをしっかりと認識してほしいという思いがあるという。
「既存のジェンダー表現にハマらない学生に二重の苦痛をもたらします」
現状の就活スタイルの問題点について、水野さんは「男女の『こうあるべき』というスタイルがワンパターンずつしか示されておらず、というより、それしか選択肢がないかのような提示がされています」と指摘する。
こうした特定の就活スタイルを指定することは、それ以外のアイデンティティ、ジェンダー表現をしている人たちの存在をないものにしたり、その人たちに望まぬジェンダー表現を強要したりすることにつながるという。また、その人の本来の能力の発現を阻害する可能性もある、と警鐘を鳴らす。
「これはアイデンティティの問題です。例えば現在のスタンダードでしっくりくる人が、無理やり真逆の服装をまとうことを強制される状況を想像してもらえると、理解の手助けになるかもしれません。自分に合ったジェンダー表現をしつつ、ビジネスの場に相応しい服装をすることは、両立できます」
決して”わがまま”でなく、やりたい放題の服装をしたいわけでもないと話す。
また、男女ともに抑圧的、性差別的なマナーや服装指南が当然のように受け入れられ、通用してしまっていることも問題だという。例えば、男性ならば「短髪」「黒髪」「鞄、靴の色は黒」「髭は剃る」といった指南がみられ、出世や幹部候補生を意識させるような文章も目にする。
女性であっても「化粧」「ヒール付きパンプス」「肌色のストッキング」が前提にされたり、マナーとして紹介されたりすることが多い。さらに、一律に「体の曲線的なライン」「女性らしいライン」を強調することを勧めるようなスーツ販売店の広告手法もある。水野さんは、
「これは、多くの女性だけではなく、既存のジェンダー表現にはまれない学生にも二重の苦痛をもたらします」
などと問題提起し、多様な選択肢を設ける必要性を説いた。
署名の宛先には、マイナビやリクルートキャリア、ディスコといった大手人材会社のほか、AOKI、青山商事、はるやまホールディングスなどのスーツ販売店などを指定している。理由については、これらの企業の就活生に向けた発行物にあるようだ。
「人材会社は書籍でも多くの指南本を出しています。それらは、大学など教育機関の生協店舗やキャリアセンターに多く置いてあり、嫌でも目に入ります。それらの人材会社が、教育機関に講師を派遣して、就活マナー講座を開き、今回問題としているマナーや服装を指南するということも多く行われています」
また、学生が就活用スーツを買うことが多い販売店では「女性向けにヒール付きのパンプス前提で勧められたり、裾上げをされたり。それ以外を履くつもりと言うと、あからさまに嫌な顔をされる場合もあります」と話す。これらの宛先に対しては、
「この商売の方法によって、多くの人の存在を無化したり、差別したりしてきたという事実を真摯に受け止めた上で、広告や販売の方法を再検討して頂きたいです」
と訴えた。
水野さんは、今まさに同様の問題に苦しんでいる学生に向けて「『あなたたちは何も悪くない』と伝えたいです」と力を込める。また、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、一般的になっている”オンライン就活”でも「ジェンダー規範の押し付けや性差別的な規範はオンラインでも変わらずだと思います」としている。
「私たちがこういった活動をしているからといって、無理に従来のスタイルから外れるリスクを取れ、とは思いませんし、とにかく自分を潰されずに生き延びる手段を取ってください。この署名で少しでも世の中が変えられるように頑張ります」
また、ハッシュタグ「#就活セクシズム」で、多様性を重視したスーツなどの情報を共有している人もいることにも触れ、「少しでも、自分のアイデンティティや尊厳を保って職探しをするために、このタグを活用してくれても嬉しいです」と呼び掛けた。

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