MOVIE WALKER PRESSスタッフが、週末に観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画。今回は、12月4日から今週末の公開作品をピックアップ。豪華キャストによるスリリングなサスペンス、女優・池田エライザが監督デビューを飾った青春映画、18世紀フランスが舞台の鮮烈な愛の物語など、話題の3本!

【写真を見る】東京・渋谷で起きる大規模な爆発シーンもリアルで衝撃的(『サイレント・トーキョー』)

■怒濤のジェットコースタームービー!…『サイレント・トーキョー』(公開中)

東京を舞台に無差別テロ事件を描いた本作は、“サイレント”という題名とは裏腹な怒濤のジェットコースタームービーだ。クリスマスイヴ恵比寿の商業施設で爆弾事件が発生。犯人は次の標的として渋谷ハチ公付近を指定する。捜査を進める刑事・世田は不審なIT起業家に目を付けるが、事件は意外な方向に動きだす。容疑者と刑事、思いがけず事件に巻き込まれてしまった人々…多彩な群像劇を繰り広げる本作、最初はバラバラだった点が線へとつながっていく様が、二転三転しながら100分間ノンストップで描かれる。オープンセットで再現した渋谷の大惨事などスペクタクルも圧巻だが、心奪われるのが佐藤浩市、石田ゆり子西島秀俊ら主要キャストの存在感。彼らが演じる傷を抱えた大人たちのせめぎ合いが映画に格や重さを醸しだし、派手さが先行しがちなこの題材を大人も楽しめるサスペンス映画に仕立てている。(映画ライター・神武団四郎)

■すべての画と音が脳裏に焼きつく、青春映画の傑作…『夏、至るころ』(公開中)

「少ししか携っていないのに、その映画の代表者みたいな顔をして舞台挨拶に立つのがもどかしくて。だから今度、監督をするんです」。昨年3月の主演映画『貞子』の取材時に池田エライザさんからそう聞いて以来ずっと楽しみにしていた本作だが、いや、驚いた。福岡県田川市を舞台にしたこの映画は、誰もが思春期のときに思う“幸せって何?”ということを2人の男子高校生の日常を通してまっすぐに見つめたもの。奇をてらった表現は一切せず、逆に撮るべきものをしっかり映し出すから、田川を象徴する2本の煙突も祭の風景やアーケードのシャッター街もどこか懐かしくて映像そのものがとっても豊かなのだ。それに、監督と原案を務めたエライザさんの実体験が反映されているからなのか、何気ない物語に説得力があるし、ふたりの高校生を演じた倉悠貴、石内呂依を始め全キャストがこの物語の住人としてそこにいるのも好印象。夜のプールのシーンなど攻めるべきところは大胆なショットで押し切り、蝉の鳴き声や太鼓の音を全編に散りばめた音響設計も効いている。さらに、クライマックスでは主人公の祖父を演じたリリー・フランキーのナレーションを巧みに使う堂々とした演出で魅せるから、そのすべての画と音がガンガン脳裏に焼きついた。何よりも田川に行ってみたいと思ったということは、この映画が成功している証だろう。『キッズ・リターン』(96/北野武監督)、『青 chong』(01/李相日監督)の流れをくむ、この新たなる青春映画の傑作の誕生を心から祝福したい。エライザさんの次の監督作が早くも観たくなった。(映画ライター・イソガイマサト)

■貴族の娘と女性画家の、燃え上がる愛の炎が胸に残り続ける…『燃ゆる女の肖像』(12月4日公開)

監督デビュー作『水の中つぼみ』(07)以来、思春期の少女たちが抱く性への憧れや葛藤をみずみずしく描いてきたセリーヌ・シアマの最新作。今回は18世紀末の時代に生きる大人の女性たちの純度の高い愛を描き、昨年のカンヌ国際映画祭で2冠に輝くなど、世界中の映画人を熱狂させた。フランス、ブルターニュの孤島を舞台に、伯爵夫人の娘エロイーズと、彼女の肖像画を依頼された女性画家マリアンヌが儚くも生涯忘れえぬ恋を経験する。シアマ監督の元パートナーでもあったエロイーズ役のアデルエネルが体現する内に秘めた情熱。マリアンヌ役のノエミ・メルランの心を射抜くような真っすぐな眼差し。彼女たちと共に時を過ごす召使ソフィの存在感も印象的だ。マリアンヌが一筆一筆、ゆっくりと絵を描いていくように、1シーン1シーンをまぶたに焼きつけながら、恋が生まれ、燃え上がり、その炎が胸の奥に残り続ける様を堪能してほしい。(映画ライター・石塚圭子)

週末に映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて!

構成/サンクレイオ翼

テロ事件の容疑者役に佐藤浩市、刑事役に西島秀俊、事件に巻き込まれた主婦役に石田ゆり子(『サイレント・トーキョー』)/[c]2020 Silent Tokyo Film Partners