11月7日から15日まで、『SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA 2020』が開催された。本稿では、10日に実施のカンファレンス「渋谷5GエンターテイメントプロジェクトNETWORKING」から、後半のパネルトークバーチャル渋谷から見えてきたこと」の一部を記す。

(参考:『バーチャル渋谷』はコロナ禍の、そして未来のエンタメを示すーーきゃりーぱみゅぱみゅライブに感じたこと

ハロウィンバーチャル渋谷で得た知見 一歩先への転換点

 登壇したのはKDDIの繁田光平(パーソナル事業本部・サービス統括本部5G・xRサービス戦略部部長)、Psychic VR Labの山口征浩(代表取締役)、クラスターの加藤直人(代表取締役CEO)。モデレーターは渋谷未来デザインの長田新子(理事・事務局次長)が務めた。

繁田:お客さんの声として反応が良かったのは、「道路の真ん中を歩いたりできない」「スクランブル交差点の真ん中でライブやるとかありえない」など。バーチャル空間なので全然できるが、アーティストが今までにないことをやってみるということに、お客さんも客観的に引いて見ているのではなく、惹き込まれて入り込んでいて、リアルで行われているような感覚になっていた。ある程度フォーマット化されたライブではなかったことが、没入していくきっかけになったと思う。

 ライブ後はアプリを閉じれば終わりだが、「ここからどうやって退出したらいいですか?」という書き込みが必ず出る。「右上のボタンを押せば退出できます」って書くと、右上を見る。つまりバーチャルに入り込んでしまっているので、右上が画面のではなく空間の中。後に退出する出口があれば、自然と後ろを向いて向かっていく。没入しているとリアルバーチャル、どっちがどっちだか分からなくなる人が大勢いたというのは、イベントのオペレーションを含めて工夫していかねばならない。

山口:企画する主催者も、そこで表現するアーティストも、それから参加する人たちも、XRが初めてという人が多かったと思う。バーチャルやXRの企画を初めてやったことで分からなかったことに気づいて、2周目になった段階が面白くなりそう。リアルな場所に集まらなくても楽しめる形だったり、1人1人がグラスをかけたり、タブレットスマホであったり、その人に最適化されたコンテンツを見せることができたり、色んなことを模索する機会になった。

 ライブにしてもリアルの型に引きずられているところから入ると思うが、そうではない可能性はいっぱいある。我々がプラットフォームを提供することで、テクニカルなところの敷居を下げられる。今まではチームの中で、技術が分かっている人がいたり、3Dが分かってる人がいたり、色んな人がいないとできなかったのが、個人で才能を持った人が、その才能を存分に発揮しやすくなってくる。そうすると、これまでXRに距離があったような新しい才能を持った人たちが参入してきた面白い世界が生まれてくると思う。

加藤:スゴくトリガーになって転換点になったのは明らか。今バーチャル渋谷などの取り組みをするようになって、まだコンテンツリアルに対して拙い部分がある。バーチャルリアルの違いは情報量だと思うが、リアルの情報量はデカい。ただバーチャルの良さはリアルを飛び越えることができる、リアルでは絶対できない表現ができるとか。それをいきなりみんなにぶつけてしまうと追いつけないが、物理的な限界を排除してその先に行く一歩手前にいるのを感じる。

 バーチャル渋谷でできてなくて惜しいと思うのが、ストーリーのジェネレーター。渋谷の何が良いのかというと、町を生産していく人たちがたくさんいて、その集合体が発展し続けているから楽しいし、色んな発見があること。また今の技術でもそこの住人たちが発展していく、そこに住むクリエイターが発展させていくことができると思うが、その一歩手前であるのでやれるようにしたい。

・自由度のあるプラットフォーム リアルバーチャルの垣根

 そうした話の流れを受け、長田は「技術的な部分の発展もありながら、カルチャーが発展するのが渋谷という町の魅力になっている。逆にそういうプラットフォームを引き出す可能性になっているのか」と、各氏に問いかけた。

繁田:例えばアバター制作のプログラムもそうだし、クリエイターイベントを作ってみるとか、そこに参加する人たちも自由度が上がっていくといい。あとヒトカラアイデアも出ているが、歌い始めると自分がスキャンされて、バーチャル渋谷にログインして路上で歌ってしまうとか、そうしたコンテンツの発信の仕方が山ほどある。そういったことに近いものだったり、違うものだったり、多くの人たちにとって自由なプラットフォームになっていけば、服を作る人たちが出てくるかもしれない。スキャンしているのでサイズも分かっているから、リアルアパレル展開していくことも含めて、開かれたプラットフォームを準備することがスゴく大事なんだと思う。

山口:アバターでもデフォルメされてても自分を投影するが、ただ肉体というものを引きずってるなと思う。バーチャルの世界であれば、肉体という概念から解き放たれたりすることができるはず。表現であっても物理的な法則であったり、金銭的な制約であったり、色んなものから開放されてチャレンジできるはず。僕らはリアルのものをバーチャルに持ってきたり、人間の後にAIを持ってきたりするが、僕らの後の世代、若くてクリエイティブに向き合っている人たちはその垣根がない世代だと思っていて、今の渋谷のカルチャーの先に、新しいカルチャーが生まれてきたら面白いと思う。今は過渡期だが、僕らは現実世界で行われているビジネスや経済の流れを、新しい世界に持っていける最後の世代かもしれない。この後も経済の考え方が変わってくると、根底から変わってくる。

加藤:渋谷に価値があるからバーチャルにも価値があるというのが金本位的。その段階ではリアルに引きずられているが、コンバーチブルではなくなる瞬間がくるはず。そうなると資本主義一気に発達するみたい感じで、リアルバーチャルでいうと後者の方が発展する。今の世界経済でいうと、バーチャルビジネスの方が10倍くらいデカい。その本質が金本位制から抜け出しているから、コンバーチブルではなくなった。でもリアルがあるからバーチャルを信用したわけで、金と交換できる。渋谷という町のバーチャルなんだと信じてクリエイティブな作業をした上で、リアルから抜け出してもいいんだと思って初めて、リアルを超えてバーチャルが跳ね上がるのではないか。

 KDDI12月1日、中国のNreal Ltd.(エンリアル)と共同開発したスマートグラス・NrealLightを発売。本カンファレンスの当日は、それに関して情報公開がなされた日でもあった。各氏は終盤、次のように語って来年に期待していた。

繁田:バーチャルハロウィンは日本だけじゃなくて、世界中から来てくれた。インバウンドを含めて厳しい状況の中、集まってくれた人々の期待を大きくしながら、1年後には少しづつでもリアルの渋谷にきてもらって、商店街のみなさんにも喜んでもらいながら、「久々に渋谷に来てみたらスゴいことになってるな」というのを、XR全般を使ってやっていけたらいいと思う。

山口:渋谷にテクノロジーアイデアを持ち寄って、実験的なことをやっていこうと。常識に縛られない表現やものづくりができる人たちを巻き込んで、その発想はなかったという新しい表現や価値が生まれるようにしたい。今は企画に合わせてXRのグラスやヘッドセットをかけたりしているが、渋谷に来た時には、すでにかけているような状態。未来はそうなっていると信じているので、そうなった時にどういうことができるのかを実験する形ができたらと思う。

加藤:自己発展かな。バーチャルの中で商店を開くことができるとか、コンテンツを作ることができるとかもそうだし、1年後のハロウィンとするなら、本質は仮装なので、仮装ができるようになっていてほしい。今年もアバターを用意すればということもあったが、簡単に仮装ができる状態にはなっていなかった。来年はハロウィンハロウィンらしく楽しめるようになっていたらいいなと思う。(真狩祐志)

『SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA 2020』内の「渋谷5GエンターテイメントプロジェクトNETWORKING」より