ベネズエラの経済状況は去年に引き続き、現在も深刻な状況にある。経済が破綻すれば治安も悪化し、悲惨を極めた国から次々と国民が脱出する事態が相次いでいる。
ハイパーインフレーションは、去年1月には268万%というインフレ率を記録し、もはやベネズエラの通貨「ボリバル」は何の価値も持たない紙切れになり下がってしまった。
そんな紙幣を使用して、少しでも生計に役立てようと財布や小物入れなどのクラフト品を作り、観光客に販売している人々がいる。『Al Jazeera』などが伝えた。
―あわせて読みたい―
世界の物価がわかる、「1ドル(100円)で買えるもの」
リアル世紀末都市。ヒャッハーな危険都市ランキング50。そのほとんどはラテンアメリカ諸国だった。
物価高騰で食糧が買えず飼い犬を手放す人が続出。あばら骨が見えるほど痩せ細った捨て犬たちの写真(ベネズエラ)
どの国に富が集まっているのか?世界各国の資産を地図で視覚化、アジアでは日本が2位に
今後20~40年以内に人類文明社会は90%の確率で崩壊する。理論物理学者が予測(英・チリ共同研究)
Colombia: Venezuelans make handbags out of worthless banknotes
ハイパーインフレーションが続くベネズエラ
南米の北端に位置するベネズエラ・ボリバル共和国は、南米大陸の中でも豊富な資源に恵まれ、原油埋蔵量は世界最大と言われるほど、自然の宝庫として知られてきた。
しかし、現在では人口の1割にあたる400万人が隣国コロンビアやペルーなどに国外脱出するほど、経済的な破綻を迎え悲惨な状況と化している。
特に2010年以降は、経済危機と政治的混乱が続き、治安も悪化。ハイパーインフレーションにより、2018年以降はインフレ率が170万%、去年1月には268万%という記録を打ち出し、ボリバル紙幣は急落。通貨としては、もはや何の価値も持たなくなってしまった。
ベネズエラでは、そんな紙幣を織り込んで小物やバッグなどのクラフト品を作成し、路上で売って生計を立てている人が目立つようになった。
ある男性は、母国を脱出し、コロンビアで紙幣のクラフト作品を作り、観光客に販売して得たお金で、一家を支えて暮らしている。
無価値のボリバル紙幣でクラフト品を作って売る男性
ベネズエラから脱出し、コロンビアのサンタ・マルタで家族と暮らすヘクター・コルデロさんは、母国が経済破綻し、生活に行き詰った多くの国民の1人だ。
私には、娘3人と息子1人がおり、どうしても家族でベネズエラで生活を続けていくことが困難になり、コロンビアに移住しました。ここに来なければ、生計の立て直しは不可能だったことでしょう。今は、クラフト品を売って稼いだお金を母国に残っている親戚に送金しながら、サンタ・マルタの仮設住宅で暮らしています。
ヘクターさんは、現在は既に流通していないボリバル紙幣を使用して、小物入れや財布、ハンドバッグ、ちょっとした飾り物などを作っている。
100ボリバル紙幣70枚で小銭入れができ、100枚使用すると財布、1200枚でハンドバッグが作れるそうだ。
財布は8ドル、ハンドバッグは12ドルでコロンビアにやってくる観光客に販売している。
ヘクターさんは、母国の首都カラカスで、誰かが作った紙幣のクラフト作品を見たり、ベネズエラ人仲間がアップロードした複数のYouTubeでチュートリアル動画を見て研究したりして、独学でやり方を学んだという。
ヨーロッパや北米から来る観光客たちは、ベネズエラの紙幣が使われたこれらのクラフト品を、記念品として持ち帰りたがります。紙幣をクラフトに使い果たせば、兄がベネズエラに戻ってまた大量に仕入れてきます。もう使われていない紙幣を持っている人は多く、彼らの必要なものと交換して購入しているのです。(ヘクターさん)
米ドルやユーロが普及しつつあるベネズエラ
現在、ベネズエラでは米ドルやユーロなど他国の通過が普及しつつある。ヘクターさんは、クラフトに使うボリバル紙幣を得るために、大抵は米ドルもしくは食料と交換しているそうだ。
Venezuela dollarisation: Use of American dollars increasing
今年のインフレ率は20万%というベネズエラでは、もはやボリバル紙幣を利用する人はほとんどいない。
スーパーや市場取引には米ドルが普及しつつあり、店の従業員も米ドルかユーロで賃金が支払われているが、それはごく一部であり、ほとんどの住民は生活品を得るために物々交換を主流にしているという。
無価値になったボリバル紙幣から創造的な方法で工芸品を作るという方法により、新たな価値を生み出しているヘクターさんたち。彼らの作る作品には、母国の復興を願う切なる思いが込められているといっていいだろう。
最後にヘクターさんは、このように語った。
母国の状況が変わることを願いながら、コロンビアで暮らしています。どこの国よりも快適に感じることができるのは、やはり母国だけです。また、いつの日か母国ベネズエラに家族で戻りたい。
written by Scarlet / edited by parumo
全文をカラパイアで読む:http://karapaia.com/archives/52297198.html
こちらもオススメ!
―料理・健康・暮らしについての記事―
この世には2種類の人間がいる。あなたはどっち?
子供たちの体が毛に覆われる事態に。胃薬と育毛剤を取違える医療ミスでおおかみ男症候群を発症した事例(スペイン)
世界初、実験室で培養された鶏肉が政府の承認を経て市販化へ(シンガポール)
コクがあるのにさわやかジューシー!絶品りんごバターの作り方【ネトメシ】
スターバックス、医療従事者とコロナ緊急対応員に1か月間コーヒーを無料で提供(アメリカ)
―知るの紹介記事―
困窮学生と家族のため、高校教室内に食料雑貨店をオープン。支払いは生徒の「善行」で(アメリカ)
迷子になって3週間、飼い主が働くスーパーを自力で探り当てた犬(アメリカ)
火星で酸素と水素が現地調達できる。塩水を電気分解する新技術が登場(米研究)
子供たちの体が毛に覆われる事態に。胃薬と育毛剤を取違える医療ミスでおおかみ男症候群を発症した事例(スペイン)
5日間で2か月分の雪が降った極寒の地、ロシア・ノリリスクの今
カラパイアの公式アプリがついにリリース!サクサク見やすい、使いやすいよ! https://t.co/0PBhJB1jK7 pic.twitter.com/M1QblHgKJ7
— カラパイア (@karapaia) 2017年12月9日
コメント