8日に行われたイングランド2部チャンピオンシップ第17節ミルウォール対QPR戦で、選手たちが人種差別の撲滅に向けたアクションを示した。9日、イギリスメディア『スカイスポーツ』が伝えた。

 イングランドのプロリーグでは6月のリーグ再開以降、5月にアメリカで黒人男性のジョージ・フロイド氏が白人警察官の拘束中に頸部圧迫で亡くなった事件を受け広がりを見せた「Black Lives Matter」運動に賛同し、人種差別に反対の意思を示す片ひざ立ちのポーズをキックオフ前に取っている。だが、5日に行われたチャンピオンシップ第16節ミルウォール対ダービー・カウンティ戦では、新型コロナウイルスによる中断後から約9カ月ぶりに本拠地『ザ・デン』へ集まったミルウォールのサポーターが、選手たちの“テイク・ア・ニー”が始まった瞬間に猛烈なブーイング。この行為が英国内で物議を醸していた。

「Black Lives Matter」については運動拡大当初の目的を失った政治運動と化しているとの指摘もり、象徴である片ひざ立ちポーズに対するブーイングを支持・擁護する声も上がっていた。一方、ミルウォールのギャリー・ローウェット監督はダービー戦後、「選手たちは(BLMについて)政治的な側面は支持しないと言っているものの、差別に反対する側面は支持している」と語り、ポーズはあくまでも反人種差別の象徴であることを強調。また、ミルウォールは観客の行為に失望を示す公式声明を発表した。

 そしてミルウォールは7日、QPR戦で人種差別に対するキャンペーンを行うことを発表。同クラブはQPRから選手たちが「差別禁止の取り組みへの支持を示す方法」として片ひざ立ちを行うことを明かし、「ミルウォールは人種差別やその他すべての形態の差別に対して『ゼロ・トレランス』の方針を持っており、このクラブに歓迎されないような見解を持っている人が誰かを今一度明らかにしたいと思います。ミルウォールのスタンスは、いつもと同様、人種差別的行為が認められた人は誰でもスタジアムに生涯出入り禁止になるというものです」と強硬な姿勢を示していた。

 QPR戦の試合前には両クラブの選手が一つとなり、「INEQUALITY(※INにスラッシュ)UNITED FOR CHANGE(平等:変化のために団結を)」と書かれたバナーを掲げると、スタンドからは拍手が起こった。そしてキックオフ前、QPRの選手たちがいつもと同じように片ひざ立ちを行なったのに対し、ミルウォールの選手たちは、立って拳を高く掲げたDFマーロン・ロメオを除いて、全員が立ったまま静かに待つことを選択。ここでも観客はブーイングを発することなく、拍手で選手たちを称えた。また、試合中では53分に先制点を決めたMFとともに片ひざ立ちを実施。試合後にはロメオが同試合で着用した胸スポンサー欄に「Kick It Out(※反差別のNGO団体)」のロゴが入った特別ユニフォームを高く掲げた。

 ダービー戦とQPR戦では、同じ2000人にチケットが割り当てられたという。『スカイスポーツ』によると、ミルウォールは「ザ・デン」の来場者に次のような書面を手渡していたようだ。

「UNITED FOR CHANGE 今日はミルウォールの歴史の中で最も重要な日の一つとなります。7日にクラブが発表した提案は、世界中のファンから満場一致で支持を得ました。その素晴らしいサポートを続けることは、今夜の観客の一人であるあなたの義務と責任です。私たちの選手とQPRの選手は試合前に差別との戦いに向けて団結と一体感を示し、アウェイチームは片ひざ立ちを行います。それらを尊重するようにお願いします。世界の目は今夜、私たち、つまり“あなたのクラブ”に向けられており、彼らは私たちの失敗を望んでいます。私たちは団結し、失敗は起こらないでしょう」

試合前には反人種差別のバナーが掲げられた [写真]=Getty Images