女優の新垣結衣と俳優の星野源が共演し、“恋ダンス”をはじめ社会現象を巻き起こした連続ドラマが、『逃げるは恥だが役に立つ ガンバレ人類!新春スペシャル!!』(TBS系/2021年1月2日21時)としてカムバック。連ドラから4年、待望の新作ではどんな“逃げ恥”ワールドが描かれるのか? また、新垣と星野らの撮影現場でのエピソードや演出面で意識したことを、連ドラ時から演出を務める金子文紀氏に聞いた。

【写真】みくり&平匡が帰ってくる! 『逃げ恥』新作解禁カット

★新作では「前ほどキュンキュンは売りにしちゃいけない」

 海野つなみの同名漫画を実写化し、2016年10月期に放送された『逃げるは恥だが役に立つ』。「職ナシ」「彼氏ナシ」「居場所ナシ」の主人公・みくり(新垣)が、恋愛経験のない独身サラリーマン・平匡(星野)と「仕事」として契約結婚。「夫=雇用主」「妻=従業員」の雇用関係で恋愛感情を持たないはずが、同じ屋根の下で暮らすうち、妄想女子とウブ男は徐々にお互いを意識しだす…というラブコメディーだ。今回の新春スペシャルドラマも野木亜紀子が脚本を担当し、連ドラ時におなじみのメインキャスト陣も再集結する。

 4年ぶりの新作。金子氏は「いつかいつかとずっと思っていて。『逃げ恥』は僕の大好きな作品で達成感もすごかったので、『やっとできる』という喜びがありました」と満面の笑み。

 スペシャルドラマでは、みくりと平匡が本当の“結婚”を決め、妊娠、出産など、次々と起きる人生の転機やどうにもならない困難に立ち向かい奮闘する姿を描く。当時は“ムズキュン”という言葉とともに胸キュンシーンも人気を集めたが、金子氏は「みくりと平匡の年齢、置かれた環境が変わったので、前と同じ“ムズキュン”をやるということではなく、みくりと平匡らしさ、『逃げ恥』らしさを大事に、2人がどう社会問題に向き合うかをしっかり描かないといけないと思って。家族になったら面倒くさいことや目をつぶれない諸事情が出てくる。家族のために生きるとなったとき、2人はどうするのかを見せるのが大事」と説明し、「なので、前ほどキュンキュンは売りにしちゃいけないなと強く思いました」と明かす。
 
 4年ぶりの現場。クランクイン時、特に新垣が緊張していたそうで、「みくりと平匡が妊娠を告げられるシーンでしたが、新垣さんの緊張がこっちにも伝わってきて、星野さんも僕たちも緊張していて。でも『妊娠してます』と言われたときの顔が、みくりと平匡だったんです。うれしくて涙が出そうになって。『とにかくこれでいいんだ』ということを2人に伝えないといけないという使命感があり、『いけてます』と伝えました」とほほ笑む。

新垣結衣星野源がもつ“謙虚さと誠実さ”

 新垣と星野の魅力を聞くと、「お2人自身が持つ謙虚さや誠実さ、相手に対する誠意、相手を悪く見ず好意的に向かうという資質、人柄の良さが、みくりと平匡にすごく出ていて。そこが連ドラでみんなが共感してくれたんだと思う」と断言。「日本人は基本的に勤勉で真面目で誠実な人が多い。そういう人は、一見つまらなく見えるのでドラマになりにくいのですが、そんな人を当時、演じきったことが支持されたのかと。新垣さんも星野さんも人気のスターですが、『逃げ恥』でやっていることはすごく地味。でも、そこがいいのかなと思いました」と、2人の魅力が今作の人気につながったという。

 連ドラ時は、みくりと平匡を取り巻く、石田ゆり子大谷亮平古田新太らが演じるキャラクターを通して、年齢差やLGBTなどさまざまな恋の形も描かれたが、それは新作でも同じ。金子氏は「『逃げ恥』はもともと『多様性を受け入れましょう。いろんな人がいていいんだよ』ということから始まっている話。今回もLGBTの話もあり、ある登場人物がカミングアウトすることで心が開放されるシーンもある。そういう『逃げ恥』らしさが大事だと思うし、そこは見てほしいです」と語る。

 そんな『逃げ恥』らしい世界観を作るときに意識していることを問うと、「社会派作品は真面目で説教くさくなると、一気に見る気がなくなるので、できるだけ気楽に見れて、身近な存在に見せられるようにしています」と答え、「特別な事ではなく、どこにでもあるという感覚で見てもらえた方が、視聴者は多様性を認めるという意味でも入りやすいはず。単純に面白く、ニコニコしながら見られるように作りたい」と意気込む。

 連ドラではみくりの妄想シーンも人気を集めたが、今回でもあるそうで「スタートの瞬間は特に楽しみにしていてほしい」とニヤリ。スタート5分前にはテレビの前にスタンバイし、見逃さないようにしたい。(取材・文:高山美穂)

 『逃げるは恥だが役に立つ ガンバレ人類!新春スペシャル!!』は、TBS系にて2021年1月2日21時放送。

『逃げるは恥だが役に立つ ガンバレ人類!新春スペシャル!!』場面写真 (C)TBS