詳細画像はこちら

スポーティな見た目をお好みのゴルフに

text:Kris Culmer(クリスカルマー)
translationKenji Nakajima(中嶋健治)

 
欧州のファエミリー・ハッチバックとして、定番のフォルクスワーゲン・ゴルフ。8代目に生まれ変わり、英国では幅広い仕様が選べるようになっている。その展開は、7代目の流れを受け継ぐ。

通常のゴルフのほかに、高性能なGTIも用意される。スタイリングの控えめな違いは、オーナーの自尊心をくすぐってくれる。

詳細画像はこちら
フォルクスワーゲン・ゴルフ1.5eTSI 150 Rライン(英国仕様)

その中間に位置するような容姿のゴルフも存在する。英国での人気が高い、Rラインと呼ばれるトリムグレードだ。

手頃で経済的なお好みのゴルフに、GTIに通じるザイン要素の一部を装備できる。なんちゃって、とも受け取れるが、見た目と経済性の両立とも考えられる。オーナーとしてはうれしい。

英国のトリムグレード展開では、Rラインはライフやスタイルの上に来る。標準のゴルフとして、3段階のトップ。フロントとリアバンパーの造形が異なり、サイドスカートや大きな台形のマフラーカッターで着飾られる。

Rラインには追加費用が必要ながら、車高の下がるスポーツ・サスペンションに17インチアルミホイール、可変レシオ・ステアリングなどが装備される。ベロア風素材で仕立てられた、スポーツシートも備わる。

エンジンは、109psの1.0リッター3気筒ターボガソリンを除き、Rライン以外のトリムグレードと同じ選択肢がある。丁度いい、150psの1.5L 4気筒ターボガソリンも選べる。デュアルクラッチATと電圧48Vのマイルドハイブリッドを搭載する。

Tロックと比較されがちなインテリアの質感

8代目のスタイリングは、ツイッターの反応を見る限り、可もなく不可もなくと受け止められている様子。7代目と比較して、ボディデザインは進化していると筆者は思う。素のゴルフも充分ハンサムだし、Rラインは違った雰囲気で、こちらもかなり良い。

インテリアの反応も同様のようだ。確かに、フォルクスワーゲンキャッチコピー「オール・ニュー、オール・デジタル」という言葉に偽りない。

詳細画像はこちら
フォルクスワーゲン・ゴルフ1.5eTSI 150 Rライン(英国仕様)

ダッシュボードには実際に押せるボタンが5つしかなく、最初はちょっと戸惑ってしまう。ほとんどの機能は、タッチセンサー式のインフォテイメント用10.0インチ・モニターで操作する。

多くをモニターへ集約するデザインに、否定的な読者は少なくない。操作が難しく、運転の集中を削ぐと感じているようだ。筆者も同感。ヘッドライトやエアコンの操作でも、前方から目をそらしてモニターやセンサーを見なければならず、安全性に疑問もある。

一方で若いセンスで見れば、タッチモニターの反応は良くグラフィックも美しい。素晴らしいインテリアの眺めだと思う。インフォテイメント・システムのソフトウエアは操作しやすい。実際に触れてみて、読者なりに感じてみてほしい。

知覚品質は、コスト削減感が否めない。Tロックのインテリアは、ソフトな触感の内装素材が積極的に用いられ、雰囲気が良いから比較されてしまう。

同価格帯のフォードフォーカスと比べれば、ゴルフのインテリアはワンランク上。でも、7代目から乗り換える場合は、少し不満を感じるかもしれない。

アダプティブ・ダンパーで乗り心地は改善

Rラインの走りで感じられる一番大きな違いは、乗り心地。扁平タイヤとスポーツ・サスペンションがクルマを支えることによる。

この試乗車には、ダイナミック・シャシー・コントロール(DCC)と呼ばれる785ポンド(10万円)のオプションが付いていた。人気の1つで、アダプティブ・ダンパーが装備される。

詳細画像はこちら
フォルクスワーゲン・ゴルフ1.5eTSI 150 Rライン(英国仕様)

英国編集部では、以前にゴルフ1.5 TSIのライフ・グレードに試乗している。「ライバルと比べて、ベースのゴルフが乗り心地の良い、一番快適なハッチバックとはいえなくなった」とまとめていた。特にリアシートの印象で。

Rラインは、基本的にその意見を変えない。150ps以下のゴルフには、マルチリンク式ではなく、トーションビーム式のリア・サスペンションが採用されるためだろう。

しかし、アダプティブ・ダンパーが装備されていれば、コンフォート・モードなら市街地でも乗り心地は改善される。高速道路に入れば、質感はさらに良くなる。

スポーツ・モードを選択すると、路面からの入力による振動は明確に大きくなる。クルマの姿勢制御は引き締まり、スポーティなハッチバックらしく硬い印象になる。

ゴルフには、インディビジュアル・モードが付いている。ダンパーとパワートレインコンフォート・モードにし、ステアリングはスポーツ・モードにするのが、筆者は良いと感じた。

ステアリングの操舵感は満足感ある重みがあり、シャシーの精度の高さを引き立てている。反応は正確で、フロントタイヤのグリップ力は高く、自信を持って8代目ゴルフを導いていける。

プレミアムなRラインにはDSGが合う

7速DSGは変速が滑らかで、マニュアルでの操作にもピタリと反応。ステアリングホイールのパドルを弾けば、AT任せで稀に感じるもどかしさも解消できる。

マイルドハイブリッドの1.5Lエンジンは、力強くレスポンスも良い。ただし減速時に、回生ブレーキの動作に伴う違和感が少しあるようだ。

詳細画像はこちら
フォルクスワーゲン・ゴルフ1.5eTSI 150 Rライン(英国仕様)

今回の試乗は市街地からスタートし、郊外の道を積極的に飛ばした。結果得られた燃費は10.6km/Lに留まってしまった。少なくともカタログ値では、マイルドハイブリッドではない1.5LにMTの組み合わせより、燃費は向上している。

際立った動的性能を必要としないなら、今回のゴルフ1.5eTSI 150 Rラインは、上質なファミリー・ハッチバックとして有力な選択肢になる。7速DSGも、プレミアム感の漂うRラインの雰囲気に、良く合っていると感じた。

アダプティブ・ダンパーを装備すれば、タッチモニターに振れるだけで、Rラインのゴルフを少しホットなハッチバックにもしてくれる。コンフォート・モードなら、経済的で実用的な、洗練された快適なゴルフとして乗れる。

できれば、リアがマルチリンク式のゴルフTSIも試したいところ。スポーツ・サスペンションなしで。Rラインでなければ、衝撃吸収性はさらに良くなるはず。ゴルフとして、スイートスポットの仕様になるのではないだろうか。

フォルクスワーゲン・ゴルフ1.5eTSI 150 Rライン(英国仕様)のスペック

価格:3万4165ポンド(461万円)
全長:4284mm
全幅:1789mm
全高:1456mm
最高速度:223km/h
0-100km/h加速:8.5秒
燃費:17.1km/L
CO2排出量:133g/km
車両重量:−
パワートレイン:直列4気筒1498ccターボチャージャー+ISG
使用燃料:ガソリン
最高出力:150ps/5000-6000rpm
最大トルク:25.3kg-m/1500-3500rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック


フォルクスワーゲンの記事
【プレミアム感をプラス】フォルクスワーゲン・ゴルフ1.5eTSI 150 Rラインへ試乗
【新型ゴルフRを作った男】フォルクスワーゲン、R部門のトップ退任 新会長との意見相違か
【電動モデルに集中】フォルクスワーゲン、モータースポーツから撤退 ID.Rプロジェクトも終了
【控えめで頼れるワゴン】フォルクスワーゲン・ゴルフ・エステート(ヴァリアント)へ試乗

【プレミアム感をプラス】フォルクスワーゲン・ゴルフ1.5eTSI 150 Rラインへ試乗