芥川賞作家・綿矢りさの小説を、同じく綿矢原作の『勝手にふるえてろ』が高い評価を得た大九明子監督が映画化した『私をくいとめて』が12月18日(金)に公開される。

自分の脳内にいる相談役「A」と楽しく会話しながら“おひとりさま”ライフを謳歌していた31歳女性のみつ子(のん)が、年下の営業マン多田くん(林遣都)に恋したことから日常が動き出す本作で、みつ子の同僚にして、ひとり異空間にいるような不思議オーラを醸し出しているカーターを演じている若林拓也。

雑誌「MEN’S NON-NO」の専属モデルとして活躍しながら、本作で映画初出演を果たし、俳優業にも活動の場を広げる若林に、本作出演の感想に始まり、小学5年から中3まで過ごしたイギリスから日本に帰ってきて感じたカルチャーギャップ、芸能界での憧れの先輩や今後の目標などを聞いた。

取材・文 / 望月ふみ 撮影 / ヨシダヤスシ

◆映画初出演に緊張。「不安もありましたが、髪形や衣装に助けてもらった」

ーー 映画初出演とのことですが、カーターは面白いキャラクターですね。

僕が演じたカーターは原作でも、映画でもそんなに登場しない役柄なんです。でも映画で役をいただけたことが純粋に嬉しくて、限られた登場シーンで、どうやって存在感を出していこうか、どう演じていこうかと考えて、撮影に挑みました。

ーー 確かに出演シーンは多くはないですが、ちゃんとインパクトがありました。大九監督とはどんなお話を?

現場に入る前に、たわいのない日常会話のようなお話を結構させていただきました。自分の話をして、自分がどういう人間かということをまず知っていただいた感じです。カーターについて、原作を読んで自分なりにどう思ったのかとか、原作でも描かれていない、会社以外でのカーターは何をしているのかとか、そういったことを一緒にお話してキャラクターを作り上げたうえで、現場に入らせていただきました。とにかく期待を裏切らないようにしないと!と思いました。

ーー 役を膨らめていくのは楽しい作業でしたか?

楽しかったです。それに自分としては割と掴みやすい人物だったんです。ひと言でいうと、“ちょっと変わった奴”ということになりますが、独特な動きを取り入れたりして、楽しんで作っていけました。

ーー 衣装も独特です。若林さんは普段は古着がお好きだそうですが、今回は全く違った派手な衣装でした。

そうなんです。僕自身は古着派です。でも今回も「着こなしますよ」って感じで(笑)。

ーー かなりパンチの効いた衣装でしたが(笑)。

僕も初めて見たときは、「うわー、これは結構やってますね」と驚きました(笑)。でも、普段の僕とは全然違うので、逆にスイッチが入りやすかったです。東京タワーでのデートのシーンでは、髪をおろしたり、衣装もまた変わっていて、さらにテンションが上がりました。俳優としての技術面もまだまだですし、初めての映画ということで撮影に入る前には若干不安もありましたが、髪形や衣装に助けてもらった部分は大きかったです。

ーー 現場で共演者の方とお話は?

ほとんどできなかったんです。共演シーンが多かった臼田(あさ美)さんとは、少しお話しました。

ーー 臼田さんが演じるノゾ美さんはカーターにぞっこんで、のちにデートするお相手でもあります。ふたりの感じがまた独特でよかったです。

そうなんです。撮影日数が少なくてあまり密になれなかったことが、かえってあの不思議な空気感を生んでくれた気がします。カーターはひとりで突っ走っていく感じなので、振り返って考えてみれば、皆さんと仲良くなれる時間がなかったのも、いい方に働いたのかなと思います。

ーー 先輩方のお芝居を見ていて何か感じたことはありましたか?

臼田さんが、社員証を使ってドアを開けるシーンがあるんですが、ちょっと変わった動きをするんです。そこのタイミングや手や体の動かし方に、監督から細かい指示が出ていました。そうしたリクエストにすぐに対応していく臼田さんを見て、すごいなと思いましたし、勉強になりました。

ーー ちなみに若林さん自身は、恋愛対象として年上の女性は?

憧れます。そもそも女の人って男の人より精神年齢が高いと言うじゃないですか。年上の女性となると、さらに上に感じるでしょうから……まずは、そんな大人な女性に魅力的だと思われる男になりたいと思います。

ーー なるほど。ちなみに普段は甘えたいタイプですか? それとも引っ張っていくタイプ?

両方ですね。男女とか、恋愛関係なく。あ、でもやっぱり甘えたいかなぁ。でもデートのときは引っ張っていきたいです。

ーー 劇中のような東京タワーデートはどうですか?

東京タワーの上まで階段で上るデートですよね? それは自分ならしないな(笑)。僕なら、何かあえて話さなきゃとか、遊ばなきゃとか思わなくてもいい相手がいいです。特別なことをするというよりは、普通に喫茶店でお茶したり、街をぶらぶらしたり。それが心地よく感じる相手がいいです。

◆憧れは菅田将暉。「一緒にお芝居できる日がきたら……。想像するだけで、ヤバいです(笑)」

ーー 本作の主人公・みつ子は自分の中に作り上げた「A」という存在と脳内会話しています。あの感覚は分かりますか?

分かります。実際に話をしたりまではしませんけど、気持ちは分かります。もうひとりの自分に、「それはしちゃダメだよ」とか「言っちゃダメだよ」とか注意されたり、「頑張れ!」って背中を押してもらったり。あと、今、家の電球が1つ切れてて点かないんですけど、変えなきゃいけないのは分かってるんですが、「まあ、まだいっか」ってもうひとりの自分と話してます(笑)。

ーー 電球?

2週間くらい暗いままなんです。切れてそのまま。「まだ、いいよね。暮らせないわけじゃないし」って言ってる自分がいます。

ーー そうなんですね(笑)。ちなみに若林さんは、小学校高学年から中学まで外国で過ごされてるんですよね。

はい。イギリスで。

ーー あれ、アメリカなのかと思ってました。

よく言われます。アメリカは生まれたときから3歳までで、小5から中3まではイギリスで過ごしました。

ーー 思春期イギリスで過ごしたことで、自分の性格に影響していると感じることはありますか?

ベースが明るいところかな。開放的なイギリスの土地で、多国籍な友達と過ごしていたので。僕、地元校ではなくてインターナショナルスクールに通ってたんです。だから、本当にいろんな国籍の人や、いろんな感性、性格の人がいました。そんな人たちと接していたからか、オープンなところがありますね。

ーー 日本に帰ってきたときに、戸惑ったことはありましたか?

中学3年のときに日本に帰ってきたのですが、給食のときに、男女がパカ~ってキレイに分かれたのを見て、ビックリしました。「な、なんだ!」って(笑)。自由に仲の良い友たちと食べてよかったんですけど、見事に男女で分かれるんですよ。先週まではカフェテリアで男女一緒にクッキーを食べていたのに、急に男女が一切話さないところに入って、「なんで話さないんだろう。何を恥ずかしがってるんだろう」とすごく不思議でした。カルチャーギャップを感じましたね。高校ではそれも馴染んでましたけど。

ーー 若林さんは女子と話すのも得意?

得意というか、分け隔てなく話せます。高校でも普通にみんなにハグしてました。

ーー 先ほど、脳内会話に理解はできるとお話されましたが、相談役Aのように何でも相談できる相手はいますか?

います。家族は何があっても味方ですね。でもちゃんと家族に相談するようになったのは、二十歳を過ぎてからかな。やっぱりそこには照れくささがありましたね。今は、仕事の話や人間関係の話をしたり、なんでも話します。

ーー 仕事の話もされるんですね。二十歳を過ぎてというと、お芝居を始めようと思うといったことも話されたのでしょうか。

「どう思う?」みたいなことは聞いたと思います。うん……。あ、なんか思い出しちゃった(笑)。

ーー 今までの作品も観てくれてますか?

はい。感想もたまに言われますよ「まだまだ硬いね」とか(笑)。今回は初めての映画ですし、とても楽しみにしてくれています。

ーー お芝居は楽しいですか?

めちゃめちゃ楽しいです。でも正直、最初のころは興味本位というか、「ちょっとやってみようかな」くらいの気持ちだったんです。でも実際にやらせていただいたり、先輩方とお話をしていて、一生満足できない、一生正解のない仕事だという感覚や緊張感に触れたりして、たまらない仕事だなと感じています。

ーー 正解のないものを追い求めるのが楽しくなってきた?

今までのめり込めるものがなかったんですよね。でもお芝居の緊張感にはハマり始めています。

ーー メンズノンノのモデルさんには、ほかにも役者業をされている方が多いですが、そうした先輩たちのことは意識しますか?

先輩というか、同士というか。同世代にはライバル心もありますし、メンズノンノというホームグランドを持った仲間のような意識で見ているところはあります。活躍している姿を見ると意識しますし、「自分も頑張ろう」と思います。

ーー どんな役者になっていきたいですか?

「すごい」と言われる俳優になりたいです。

ーー すごい? 巧さ?

巧さとはまた違って、でも人の感情を動かせる人。ひとりでも多くの人の心に響く演技のできる俳優になりたいですし、お芝居以外でも人に影響を与えられる人になれたらと思います。

ーー お芝居以外ですか? たとえばどういう人?

菅田将暉さんにずっと憧れてます。お芝居にとどまらずに、ファッションや音楽、多方面で影響力を持っていて、同じ人間なのにどうしてそんなにすごいんだろうと思うのですが、でも逆に考えると、同じ人間なのだから、自分にも絶対無理だということはないよなと思っています。

ーー 一緒にお芝居は。

したいです! めちゃくちゃしたい! 以前、1回ちょこっとだけ同じ空間にいたことはあるのですが、お芝居として絡んだことはまだなくて。一緒にお芝居できたらめちゃくちゃ幸せです。

ーー どんなシチュエーションがいいですかね。

いや、それを考えだしたらキリがないです(苦笑)。もし本当に一緒にお芝居できる日がきたら……。想像するだけで、本当にヤバいです(笑)。

ーー ぜひ期待していますね! 最後に、映画初出演の本作。カーターのここを見てください!とPRをお願いします。

ずばり歩き方です。ぴょんぴょん歩いているので、気を付けて見てください。あとは足音。こだわりました。よろしくお願いします。

(c)2020『私をくいとめて』製作委員会

メンズノンノモデル 若林拓也が映画初出演にして強烈なオーラを放つ!「多くの人の心を動かさせる俳優になりたい」【『私をくいとめて』インタビュー】は、WHAT's IN? tokyoへ。
(WHAT's IN? tokyo)

掲載:M-ON! Press