毎月支払っている年金の保険料。当たり前のように支払ってはいるけれど、実際に自分は老後いくら貰えるのだろうかと気になっている方は多いと思います。

特に定年退職が間近に迫っている世代だとなおさらでしょう。金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和元年)」によると、年金や保険が十分ではないからという理由で老後の生活を心配している人が73.3%もいることが分かっています。

今回は、厚生年金国民年金のそれぞれの仕組みや平均受給額についてみていきましょう。

国民年金はどのくらい貰えるのか 

まず日本における公的年金の仕組みについて説明すると、20歳以上の国民は基本的に全員「国民年金」に加入しています。後述する会社員や公務員の人たちは国民年金に加え、厚生年金にも加入しているのですが、それ以外の自営業者・学生・専業主婦(夫)・無職の人などは皆国民年金のみの加入となります。保険料納付が難しい場合には、免除や猶予という措置もありますが基本的に保険料は全員一律であり、その金額は毎年決定し見直されています。参考までに、「日本年金機構」の発表によると令和2年度(令和2年4月~令和3年3月まで)は月額16,540円の保険料となっています(第三号披保険者に分類されている専業主婦(夫)などには支払い義務はありません)。

さて、この国民年金は給付額も一律で、20歳から60歳までの40年間全ての保険料を納付していると、65歳から毎月満額の65,141円(令和二年度の場合:日本年金機構令和2年4月分からの年金額等について」を受給することができます。しかし、支払いをしていない時期がある場合などは、満額を貰うことはできません。厚生労働省の「厚生年金保険・国民年金事業統計 平成30年度 」によると、国民年金の平均受給月額は、約5万6,000円となっています。

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厚生年金はどのくらい貰えるのか 

次に、会社員や公務員国民年金に加え「厚生年金」にも加入しており、その厚生年金保険料は会社と従業員が半分ずつ負担して支払っています。

この厚生年金の年金受給額は、国民年金のように一律給付ではありません。年金を納付している月数、さらには収入によっても大きく変動してくるものになります。先ほどの厚生労働省の調査結果によると、平成30年度末の厚生年金国民年金分含む)の平均受給月額は、約14万4,000円であることが分かっています。この金額は男女でも大きく差があり、男性の平均受給月額は約16万4,000円、女性は約10万3,000円です。

また一部会社ではさらに年金が上乗せされる「企業年金」を取り入れているところもあります。企業年金とは私的年金の一部であり退職金を会社の外部に積み立てて、運用や管理を行い退職者に支払う仕組みです。公的年金と合わせて、老後の生活を支えるための資金としての役割があり、この年金に会社が加入している場合、会社員は国民年金厚生年金+企業年金に加入し老後はそれらを受給する形となります。

国民年金だけで生活するのは難しい

さて国民年金厚生年金の平均受給額をみると、やはり厚生年金に加入していると年金受給額が大幅にアップするということが分かりますね。例えば、自営業の夫と専業主婦の妻、という世帯構成であれば、基本的にはその世帯の年金受給額は最大で約13万円ということになります。もちろん自営業なので定年退職がなく65歳以降も働くつもりでいる方も多いかもしれませんが、やはり国民年金だけで生活していくというのは難しいと言わざるを得ません。

公益財団法人生命保険文化センターが実施した「令和元年度 生活保障に関する調査」によると、夫婦2人が老後を過ごすにあたり、必要になってくる最低日常生活費は平均22.1万円だという結果が出ています。国民年金国民年金の世帯であれば、10万円ほど足りない計算になり、さらに厚生年金国民年金の組み合わせであっても必要最低限の額の受給となってしまい、ゆとりのある老後を過ごそうとすると、それまでにいくら貯蓄できているかというところが重要になってきます。

自分で年金を作る国の制度を活用する

ここまで現在の年金の平均受給額をみてきましたが、今後少子高齢化が進むと年金の受給額の減少、さらには退職年齢の延長により年金の受給開始年齢の引き上げなどがなされるということは大いに考えられます。

もちろん、将来の年金受給額に不安を感じ普通預金で老後貯蓄をしているという方も多いかと思いますが、老後のために「自分で年金を作る」という国の制度にも目を向けてみてはどうでしょうか。その中でも、運用益に所得税がかからず、給付金を受け取るときも税制優遇が受けられ、さらには掛金が全額所得控除となるiDeCoは多くの人が加入している制度で、これから年金作りを始めようかと考えている人にはおすすめです。iDeCoは現在60歳未満が加入対象となっていますが、2022年には国民年金被保険者であれば65歳までの加入へと延長される予定です。

定年まであと少しの人であっても、今後会社員などで働き続ける予定であれば、老後の資金作りにラストスパートをかけ、なおかつ節税対策ともなるiDeCoに加入し、少しでもゆとりある老後に向けて動いてみてはどうでしょうか。

【参照】
金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和元年)
日本年金機構国民年金の保険料はいくらですか
日本年金機構令和2年4月分からの年金額等について
厚生労働省厚生年金保険・国民年金事業統計 平成30年度
統括表10(厚生年金).厚生年金保険(第1号)年齢別老齢年金受給権者平均年金月額
統括表13(国民年金).年齢別老齢年金平均年金月額
公益財団法人生命保険文化センター「令和元年度 生活保障に関する調査