独特の世界観とゲームシステムに定評のある日本一ソフトウェアより、ダンジョン探索RPG『ガレリアの地下迷宮と魔女ノ旅団』が発売された。本作は、2016年に発売された『ルフランの地下迷宮と魔女ノ旅団』の後継作となる作品で、前作に引き続き『魔女と百騎兵』などを手掛けた泉達也氏がディレクター&シナリオを務めている。“一人称視点の3D探索型RPG”というすでに確立されたジャンルに、「そんなのあり!?」という予想外のシステムを実装し、さらに少し毒がありつつも目の離せない魅力的なシナリオが見所だった前作。そこからさらにパワーアップした本作を、ネタバレしないように気をつけながら“面白さ”を抽出して紹介していく。

文 / 長戸 勲

◆邪魔な壁はぶっ壊せ! 谷は飛び越えろ!!

ウィザードリィ』を始め、『真・女神転生』や『世界樹の迷宮』などが人気のジャンル“3DダンジョンRPG”。これらをプレイした方ならば、一度は思ったことがあるだろう。「この壁の向こうに行きたいんだよコンチクショウ!」と。『ガレリアの地下迷宮と魔女ノ旅団』ならば、そんなゲームシステムをぶっ壊すような行為が可能なのだ。もちろんいきなり最初から使用はできないが、ダンジョンを探索し、物語を進めることで次々に便利な特殊能力“降霊灯スキル”を獲得していく。

壁をぶっ壊す「壁壊し」、拠点に戻る脱出口を作成する「泥の脱出口」、1マスの穴などを飛び越えられるようになる「ジャンプ」など、その種類は様々。とくに本作では、特定の地点から複数マスを飛び越えられるようになる「ロングジャンプ」や、水が張ったを箇所を潜れる「潜伏術」、特殊なジャンプが可能な場所が分かるなどダンジョンの魔法で隠された“何か”が見えるようになる「シャインライト」など、前作にはなかった要素が多数追加されており、探索がさらに奥深く楽しめるようになった。まるでプレイヤーが「こんなことができたら」という願いを叶えてくれるようで、新しいスキルを覚えるたびに世界が広がっていく感覚を覚える。このやりたい放題感は『魔界戦記ディスガイア』シリーズでも見られ、まさに日本一ソフトウェアのお家芸だ。そこが好き。

◆エグみが唯一無二の面白さを作るストーリー

魔女をテーマにした日本一ソフトウェアの作品といえば『魔女と百騎兵』『ルフランの地下迷宮と魔女ノ旅団』があるが、そのどちらのシナリオも心に刺さるエグさを持つ。主人公が傍若無人な振る舞いで周りを傷付けたりと、貶めたり、因果応報その逆もまた然り。ただし、そこだけに終わらず、徐々に明らかになっていく謎、張り巡らされた伏線など、予想ができないシナリオ展開に、気付けば心が奪われている。最初はエグいと思っていたものが、スパイスになってシナリオに深みを持たせているのだ。『ガレリアの地下迷宮と魔女ノ旅団』に関しては、従来のエグみは健在だが、徐々に明かされていく謎の部分が特に面白い。

前振りが長くなったが、本作の主人公はプレイヤー自身。謎に満ちた地下迷宮を攻略するため、魔女”マダム・マルタ”が所有する“降霊灯(こうれいとう)”に宿った魂として、ガレリア宮に眠る“奇品”を探すことになる。基本的に物語は探索助手の少女“ユリィカ”を中心に描かれるため、つい忘れてしまいそうになるが、あくまで主人公はプレイヤー自身だ。

ダンジョンを規定のポイントまで攻略すると、一度拠点に戻って報告を行う。その際にストーリーが進んでいくという形となっている。どちらも違った面白さがあるため、「ダンジョンの先が気になる! でも物語も気になる!」という、むずがゆさを味わうことになるだろう。

◆総勢40人+αで敵をボッコボコにしてやんよ

RPGのパーティといえば4人、多くて5、6人ほどだが、本作は総勢40名+α。いやいや、それ戦闘システムが破綻するでしょ、と思う方も多いだろう。実際、筆者もそう思っていたのだが、プレイしてみると絶妙なバランスで戦闘が成り立っている。本作はターン制のコマンドバトルで、戦闘を行うのは最大5つのカヴン(部隊)を持つ集団“魔女ノ旅団”。1つのガウンは一般的なRPGでいうパーティメンバーの1人に当たり、それが5組あるとイメージしてほしい。そして、1つのガウンには最大8名が所属できるため、5×8で40名となる計算だ。なお、戦闘に参加しない支援役“サポーター”の枠があるため、40人全員が攻撃するわけではない。

そんな数のキャラクターをどこで仲間にするのか。答えは「いなければ作ればいいじゃない」だ。戦闘キャラクターは魔女が作る“人形兵”と呼ばれるもので、必要なアイテムが揃っていれば拠点で作成できる。本作ではキャラメイクもかなり面白く、キャラクターのファセット(職業)、見た目、色、性格、好きなもの、音声、成長パターン……等々、細かく設定が可能。公式発表によると、全2億通りというから驚きだ。

ファセットには、攻守のバランスに優れた「アステルクロウ」、集団戦闘のプロフェッショナル「シノマシラ」、防御特化の要塞型重歩兵「ピアフォートレス」、回避力と行動速度に優れた後方型のアタッカー「ラピッドヴェネタ―」など、様々な特徴を持つものが用意されている。なかには旅団の援護&マスコットとして活躍する(?)「ファミュゥシーカー」という、どうみても猫なものも……! それぞれ得意武器や得意なポジション(前衛or後衛)があるが、組み合わせは完全自由。バランス良く組むのもいいが、攻撃特化にする、いやいや容姿優先が正義、というのもアリだ。

なお、総勢40人+αの”α”の部分に関しては、本作から追加された”ミラマキーナ”という戦闘中のみ召喚できるキャラクターを指す。“ミラマキーナ”を呼び出すと、各カヴンの前方に配置され、分かりやすく言うと”盾”となって戦闘をサポートしてくれるので、強敵相手に召喚することで、デコイのような形で活躍してくれるのだ。

キャラクターやガウンをどう組み合わせて戦うか、2億通りもあってなかなか決められないが、それを考える時間も非常に楽しい。

◆2からでも始められるのでぜひプレイを!

魅力やシステムを語り始めると、あと数十倍の文量が必要になるのでこのあたりで締めとさせて頂く。「前作をやっていないのにプレイしても大丈夫か?」という疑問に関しては、問題なく楽しめるといえる。(イチファンとしては前作の完成度も素晴らしいのでぜひプレイしてほしいが……!!)。ダンジョン探索の面白さ、そしてストーリー展開の面白さが相まって、他では味わえない唯一無二の作品に仕上がっている『ガレリアの地下迷宮と魔女ノ旅団』。一度ダンジョンに足を踏み入れたら、その面白さの虜になることだろう。

(c)2020 Nippon Ichi Software, Inc.

やめ時が行方不明になるダンジョン探索RPG『ガレリアの地下迷宮と魔女ノ旅団』先の読めないダークファンタジーが心に刺さるは、WHAT's IN? tokyoへ。
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掲載:M-ON! Press