長谷川博己主演の大河ドラマ「麒麟がくる」(毎週日曜夜8:00-8:45ほか、NHK総合ほか)にて、室町幕府最後の将軍・足利義昭を演じる滝藤賢一がコメントを寄せた。滝藤が演じる義昭は、もともと覚慶として仏門に入っていたが、兄である義輝(向井理)亡き後に室町幕府最後の将軍として擁立される。心優しき将軍で、駒(門脇麦)とともに貧しき人を救えるような世の中を目指していたが、信長(染谷将太)との確執が深まり、ついに第36回(12月13日放送)にて光秀らと“決別”する姿が描かれた。

【写真を見る】滝藤賢一が印象に残った第36回の光秀との“決別”シーン

滝藤は、義昭の人物像を「義昭は室町幕府の“将軍”ですが、貧しい人たちのために生きていたお坊さん・覚慶(かくけい)から描かれているので、その思いを大切にしながら芝居してきました。義昭の最初の思いは、“戦をなくしたい”だったと思うんです。でもそこは戦国時代です。この時代を生きるには、義昭は優しすぎたのかな、きっとお坊さんのままがよかったのかなと思ってしまいます」と分析した。

また、将軍へと駆け上がり、信長と対立していくその変化を、滝藤は「将軍になってからは、父から受け継いだ『麒麟が来る世の中』を目指そうとしますが、れっきとした武士だった父、そして兄・義輝とは違うので、自分ができることは何なのかとすごく悩んだと思うんです。結局、進むべき方向性が定まらず、いろいろな人たちを権力で押さえ込むようなことになってしまいました。そういった背景から、義昭は弱い人なんだとも考えられますね」と明かした。

そして、滝藤は「それを象徴するのが、同じ志を持つ駒が貧しい人や病気の人を助けようと集めたお金を、全部鉄砲に替えてしまった場面です。義昭は、信長を倒せば“麒麟がくる”と信じ、猪突猛進に突き進もうとしますが、ゴールすら見失ってしまいます。気持ちの面で弱さを感じた場面ですね」と語った。

滝藤賢一「いつかご一緒したいなって思っていました」

第35回(12月5日放送)では、義昭が幕府の執務を取り仕切る摂津晴門(片岡鶴太郎)を除外するという場面も。そのシーンを演じた際の気持ちを滝藤は「摂津がいないと幕府は回らないというのも、義昭は分かっていたと思います。ですが、信長が好き放題に戦を仕掛けているあの局面で、何を言ってもかわされ、周りも摂津の言うことにしか動かない。そうやって摂津に心を壊されていき、追い込まれるようなかたちになり、結局は光秀の言うとおりに幕府の古い体制を一掃、つまりは摂津を除外するしかなくなったんですよね。そうなってしまうと、義昭を守ってくれる人は三淵藤英(谷原章介)のみ。それはかなりの恐怖だったと思います」と語った。

また、信長と対立を深めていく義昭の心境を滝藤は「積もり積もったものもあったと思いますが、決定打は、信長が延暦寺へ侵攻した場面だと思います。お坊さん、女子どもも関係なく討ち取っていった、その非情な行動に、信長に新しい世を作るのは無理だ、戦だらけの世の中になってしまうと感じたのではないでしょうか」と分析した。

さらに、信長を演じる染谷の印象を滝藤は「映画『ヒミズ』など、染谷くんが出られている作品も拝見していて、いつかご一緒したいなって思っていましたし、染谷くんが信長を演じるって、新しくておもしろいなと思っていました。現場では、信長という役でも、俳優としても、静かに圧力をかけてくる感じがしていて、それがまたいいんですよ。たまに本当に集中されていて板場にずっと座っていたりするので、お尻が痛くならないのかなって心配しています(笑)」と明かした。

滝藤賢一「駒と義昭は、時代を先取りしすぎたんだと思います」

義昭と同じ志を持ち、交流を深めた門脇演じる駒との関係を滝藤は「同じ考えをもって、同じ世を目指した唯一の理解者だと思いますし、同士だったと思います。駒だけが義昭のことを分かってくれていて、心は完全に通じ合っているけど、義昭がその道からだんだん外れたんでしょうね」と分析。

続けて、滝藤は「戦をなくしたいというのが義昭の最初の思いでしたが、信長を倒すことに猪突猛進になり、信長を討たないと麒麟は来ないと思っていたと思います。戦国時代ですから、大名同士仲良くして、話し合いで収めてほしいと言っても、誰も言うことを聞かない。そういう中で、義昭の考えは理想でしかなかった。初めは訴え続けていたけど、いざ幕府に入ってみたら全くダメだった。義昭はいろんな人間に挟まれていじめられつづけますし、とても苦しかったんだろうなと思います」と明かした。

また、戦国時代に戦を避けようとした駒と義昭を「駒と義昭は、時代を先取りしすぎたんだと思います。戦国時代に生きるには義昭は優しすぎましたね。きっと覚慶のままの方がよかったのではないかと思います」と語った。

滝藤賢一「俳優同士しか分からない時間が生まれた」

これまでの放送で特に印象に残っているシーンを滝藤は「自分がその役の感情に突き動かされるという瞬間ってあるんですけど、そういうシーンがこの現場では数々ありますね。その中でも、第36回(12月13日放送)の光秀との決別のシーンは、長谷川さんの魂の叫びが聞こえて、俳優同士しか分からない時間が生まれたように感じました。光秀を感じているだけで感情が溢れ出てくるし、何もかも受け入れられる、そういった瞬間を経験することができました。互いの道がはっきりとした決定的なシーンでもあるので、最高の別れをしたという顔になっていたらいいなと思いますね」と明かした。

また、最終回までで滝藤自身が楽しみにしていることを「本能寺の変がどのように描かれていくのか楽しみですね。史実上、なぜ光秀が本能寺で信長を討ったのかっていうのは、有力説があるにしても、決定打はないですから、いろいろ解釈が広がりますよね。長谷川さんは惚れ惚れするようなたまらない芝居をされていて、ドラマの中でも精悍な顔に変わってきている、“長谷川光秀”のラストは期待しかないですね」と語った。

■第37回「信長公と蘭奢待(らんじゃたい)」(12月20日放送)

上洛間近の武田信玄(石橋凌)の進軍が、突然止まった。義昭(滝藤)は信玄や朝倉の援軍を得られず孤立、藤吉郎(佐々木蔵之介)率いる織田軍に捕らえられる。

二条城にいた幕臣・三淵(谷原章介)も捕らえられ、早々に信長(染谷)方についた弟・藤孝(眞島秀和)と苦しい再会を果たす。

菊丸(岡村隆史)より武田信玄が秘密裏に死んだことを知らされる光秀(長谷川)。その報告を受け信長は、後ろ盾を失った朝倉・浅井に対して兵を挙げ、一気に攻め滅ぼす。ついに権力の頂点に立った信長は、ある突拍子もない願いを朝廷に突きつける。

滝藤賢一演じる義昭が出陣!/(C)NHK