人類の先祖は冬眠をしていた可能性

人類の先祖は冬眠をしていた可能性 / Pixabay

 あまりにも寒い日々が続くと、布団から出るのがおっくうになり「このまま冬眠したい」「目が覚めたら春であれ!」と思うことはないだろうか?

 私はあったりなかったり、どっちかっていうとありまくりなのだが、冬眠はクマやリスの専売特許ではなかったようだ。

 40万年以上前、我々の祖先も厳しい寒さを乗り越えるため、実際に冬眠していた可能性があるという研究結果が報告された。

―あわせて読みたい―

人間は冬眠が可能なのか?訓練された人間ならば可能(米研究)
冬眠する10の動物(ただしクマを除く)※昆虫出演中
世界初の人工冬眠を利用した手術が行われる。血液を氷冷生理食塩水に置き換え急速冷却(アメリカ)
現生人類が残したものを見るのは感慨深い。約12万年前の人類の足跡が発見される(サウジアラビア)
ネアンデルタール人は人間の祖先と10万年間も戦争状態にあった(人類史)

我々の祖先が冬眠していた痕跡が発見された遺跡

 世界遺産にも登録されているスペイン北部アタプエルカの遺跡、その1つである「シマ・デ・ロス・ウエソス」(骨の採掘坑の意)という洞窟は、深さ13メートルの穴の下から数々の人骨が発掘されており、考古学的に最重要とされる場所だ。

 研究者によると、ここは巨大な墓場であって、かつて意図的に遺体が投棄されていたのだという。そうした遺体は40万年以上前にさかのぼることができ、ホモ・サピエンスだけでなく、初期ネアンデルタール人やホモ・ハイデルベルゲンシスと推測されるものもある。

 私たちの祖先が冬眠していたらしき証拠も、ここで発見された。『L’Anthropologie』(11月27日付)に掲載された研究によると、その人骨には、毎年数か月の間、成長が阻害されたことを示す痕跡が残されているという。

アタプエルカ遺跡の洞窟

アタプエルカ遺跡の洞窟 image by:public domain/wikimedia

初期の人類はは代謝を低下させて生き延びていた可能性


 スペインマドリード・コンプルテンセ大学をはじめとするグループによると、この痕跡は、初期人類が「食糧に乏しく、体に蓄えた脂肪しか頼れない低温環境で長期間生き延びやすくする代謝状態」にあったことを示している。

 同グループはさらに、日の光をあまり浴びなかったことに起因するビタミンD不足の兆候がある点や、人骨の成長停滞痕が冬眠する動物の骨で見られるものと一致している点を指摘。

 こうしたことから、大昔の人類は冬眠をしており、その痕跡が骨の成長の停滞という形で残ったと考えられると主張する。

初期人類の骨

iStock

多くの哺乳類に冬眠のメカニズムが隠されている


 研究グループは、この仮説が驚くべきことであることを認めながらも、ショウガラゴやキツネザルといった霊長類など、冬眠する哺乳類が数多くいることに言及した。

 このことは、代謝を低下させる遺伝子や生理学的な基礎が、人間を含む多くの哺乳類に保存されている可能性を示唆していると述べている。

 さらにシマ・デ・ロス・ウエソスでは冬眠中だったアナグマ(Ursus deningeri/絶滅種)の遺骨も発見されており、人間もまた同じことを行っていたという仮説に信憑性を与えているとのことだ。

人類の先祖

iStock

現代のイヌイットが冬眠しない理由は?


 この仮説に対しては、現代のイヌイットやサーミ人はスペインの祖先たちと同様、過酷な寒さの中で暮らしているが、冬眠などしないと反論できるかもしれない。

 研究グループはこれについて、イヌイットやサーミ人は冬の間に脂肪を豊富に含む魚やトナカイを食べることができるので、あえて冬眠する必要はないのだと説明する。

 50万年前のイベリア半島は乾燥しており、そのような食料に恵まれなかった。だから当時そこで暮らしていた人々には冬眠が必要だったのだそうだ。

現時点では仮説の段階。ゲノム研究で真相が明らかになるかも

 ロンドン自然史博物館のクリス・ストリンジャー氏は、クマのような大型哺乳類は厳密には冬眠しているわけではないとコメントする。

 同氏によると、そうした哺乳類は体が大きすぎて、中核体温を十分下げることができない。そこで、冬眠の代わりにそれよりやや眠りが浅い「トーパー(鈍麻状態)」という状態になる。しかし、人間のような脳では、トーパーになったとしてもエネルギー需要は相変わらず大きく、別の生存上の問題に直面するだろうという。

 冬眠仮説の真偽については、シーマ人やネアンデルタール人などのゲノムを分析し、トーパーに起因する遺伝的な痕跡があるかどうか調べることで明らかにできるかもしれないとのことだ。

References:theguardian/ written by hiroching / edited by parumo

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52297647.html
 

こちらもオススメ!

―人類についての記事―

休校になるのは-52度を下回った時のみ。世界一寒い村で暮らすオイミャコンの子供たちの日常(ロシア)
コロナ自粛中に少女が作った「妖精の庭」が妖精を運んできてくれた!孤独な心を埋めていく友情物語(アメリカ)
双子の赤ちゃんに小さなタトゥーを入れた母親。それにはこんな事情があった。
「じゃあ俺がやるよ!」人間はロボットにあおられると危険を承知で行動してしまうことが判明
5年前に出会いゆっくりと恋に落ちた。ブリーフケースと結婚した女性(ロシア)

―歴史・文化についての記事―

ヘロデ大王の要塞宮殿「ヘロディウム」遺跡の一部が新たに公開される
16世紀のヨーロッパってどんな臭い? AIでその臭いを再現
ニュートンはエジプトのピラミッドが「ヨハネの黙示録」の謎を解くの鍵となると考えていた
楽しんでいただけただろうか?連続殺人犯「ゾディアック」の暗号が51年を経て解読に成功
フランス軍が人体改造で能力を強化する「拡張兵士」の研究を承認
初期の人類は冬眠をしていた可能性。遺跡でその痕跡を発見(スペイン研究)