ガストブランドの「アトリエ」シリーズ最新作となる『ライザのアトリエ2 ~失われた伝承と秘密の妖精~』が、2020年12月3日に発売された。前作『ライザのアトリエ ~常闇の女王と秘密の隠れ家~』は、発売前から主人公・ライザの“ふともも”などに注目が集まり、シリーズ最大の売り上げ(全世界累計出荷50万本以上)を記録。大人気作の続編ということもあって、本作も発売前から話題に事欠かず、見事初週の出荷本数が15万本を突破した。『ライザのアトリエ』では15万本突破の時点で大喜びしていた筆者だが、それを初週で達成してしまうとは……シリーズファンとして嬉しい限りだ。

本稿では、そんな発売後も話題沸騰中である『ライザのアトリエ2』を紹介。ふとももだけでなく、システム面などにも磨きがかかった最新作の魅力をお届けしよう。



文 / 長田雄太

◆田舎の錬金術士、ついに都会デビュー

ライザのアトリエ』の3年後が描かれる本作は、シリーズでは初となる、前作と同じくライザを主人公として物語が展開。仲間達と別れ、ひとり田舎の島・クーケン島に残っていたライザは、錬金術の修行に行き詰まりを感じていた。そんな時、幼馴染であるタオの誘いで王都へと足を運ぶ。タオの提案で遺跡の調査を始めたライザの前に現れたのは、不思議な生き物フィー。王都で再会したかつての仲間に新たなメンバーを加えて、再びひと夏の冒険へと向かう。

本作でカギとなるのは、謎多き遺跡を巡って伝承を解き明かす“遺跡探究”。遺跡には過去その場所にいた人々の“記憶の粒子”や遺跡の謎を解くカギとなる“遺跡の欠片”、“遺跡の結晶”が点在しているのだが、これらを集めて遺跡の情報をまとめて“探究手帖”で推理を進めていくことで、遺跡が作られた理由や過去に起こった出来事などが明かされていくのだ。

前作のように神秘的な遺跡を探索できるというだけでも十分満足だった筆者にとって、この謎解き要素は嬉しいサプライズ。物語の進行とともに遺跡の謎が解き明かされていく前回よりも、自分の手で謎を解いていくという実感が得られるようになり、探索の楽しみも増した。また、謎解き自体は長時間頭を抱えて悩むほど難しいものではないので、誰でも気軽に楽しめるはずだ。

錬金術で広がる冒険

アトリエ」シリーズをプレイするうえで欠かせないのが、フィールドでの素材の“採取”と錬金術での“調合”、そして魔物との“戦闘”。続編となる本作では、『ライザのアトリエ』で好評だったシステムをベースに、各要素とも見事なパワーアップを遂げている。

まず素材の採取についてだが、筆者が個人的に嬉しかったのが、各採取ポイントでどんな素材が採れるのかが事前にわかるようになった点。フィールドには木や石、草といった素材採取が可能なポイント(シンボル)が多数点在しているのだが、そのポイントに近づくと、どんな素材が採れるのかが吹き出しとなって現れ、ほしい素材が手に入るポイントがひと目でわかるようになったのだ。「アトリエ」シリーズといえば、何百種類もある素材を集めて様々なアイテムを作るのが大きな魅力だが、素材の数が多いぶん、どうしても「あの素材はこの辺りで採れたはずだけど……」と記憶が曖昧になって手当たり次第に採取してしまうことがあった。だが、採れる素材が事前にわかるようになったことで、必要な素材を効率よく採れるように。また、入手したことがない素材についても「?」の吹き出しが出るため、見逃すことなく集められるようになった。正直大きな変化だと言うほどではないが、個人的には非常にありがたい。

いっぽうで、大きな変化としてはライザが泳いだり、崖を登ったりできるようなった点だろう。これまでも主人公が崖を飛び越えたりなどはできたが、本作には崖を登った先や水の上にも採取ポイントがたくさんあり、採取はもちろん、冒険する楽しさが一気に増した。

さらに、物語を進めて錬金術の腕を磨いていけば、なんと魔物(乗り物)に乗ったり水中を泳げるように。魔物に乗ればフィールドを素早く移動できるほか、特定のポイントでは土を掘って素材も見つけてくれるなど、探索では大いに活躍してくれる。水中探索に至っては、シリーズ初となる未知の冒険。まだ見ぬ素材に出会ったり遺跡の入り口を発見したりと、とにかくワクワクが止まらない!

◆スキルツリーで自由度がアップ

素材を集めたら、次はそれらを調合してアイテムを作成する。3年前の冒険である程度錬金術を極めたといってもいいライザだが、舞台が王都へ移り環境も変わったため、再び簡単なものから調合を始めていくことになる。そこで重要になってくるのが、新要素の“スキルツリー”だ。

本作では、調合でアイテムを作成した際などにSP(スキルポイント)を入手。これを消費することで、前作で調合可能だったアイテムのレシピなどが習得でき、調合できるようになる。さらに、解放されたレシピから枝分かれする形で、ほかのレシピなども解放できるようになっていくため、SPを貯めれば貯めるほど、様々なアイテムを調合できるようになるというわけだ。

また、スキルツリーの中にはレシピ以外にも、習得することで採取の際に手に入る素材の品質が良くなるスキル、調合で投入できる回数が増えるスキルなども存在。解放可能であればどのスキルからでも覚えられるため、「とにかく色々なアイテムを作りたい!」「まずはいい素材を入手することが先決」など、その人に合ったより自由なスタイルでのプレイが可能となっている。ちなみに、筆者は高品質のアイテムを作りたい派なので、まずは採取にまつわるスキルを中心に適宜レシピも習得。その結果、かなり早い段階から高品質のアイテムが調合できるようになり、新要素のありがたみをしっかり感じることができた。

なお、調合そのものについては先述した通り『ライザのアトリエ』のシステムがベース。レシピごとに複数の“マテリアル環”という枠があり、そこに指定された材料を投入することでアイテムが作成できる。レシピごとに材料の投入回数は決まっており、各マテリアル環には品質を上げる、使用時に追加ダメージを与えるなど、条件に合った材料を投入するほど完成品に様々な効果を付与してくれるため、限られた回数の中でどのマテリアル環に材料を投入するか、極めるほど奥深いシステムだ。いっぽうで、各レシピには最低限材料を投入しなければいけないマテリアル環が決められているのだが、逆に言えば、そこにさえ材料を投入すれば難しく考えなくとも調合が可能。新要素でシリーズファンを喜ばせつつも、初心者にもやさしい親切設計なのは前作から変わっていない。

◆戦術の幅が広がったバトルシステム

「秘密」シリーズではリアルタイムで進行する戦闘によって疾走感のあるバトルが展開。フィールドを徘徊する敵シンボルに接触するとバトル画面へと移行し、表示されるタイムライン上のアイコンが先に中央へ達したキャラクターから行動していく。操作キャラクターの行動を選択している間も時間は止まらないため、素早い戦況分析と的確な行動が求められるが、そのぶん展開がスピーディーで、戦術がかっちりハマった時の気持ちよさは「アトリエ」シリーズでも指折りだ。

そんな戦闘システムも、本作でさらにパワーアップ。敵に通常攻撃を当てると溜まるAP(アクションポイント)を使って強力なスキルを発動できるのだが、新たにスキルの連続使用“スキルチェーン”が可能となっており、APが溜まっているぶんスキルを発動してたくさんのダメージを与えることができるようになった。さらにスキルを使うと、今度はCC(コアチャージ)が溜まり、消費することでアイテムが使用可能に。「アトリエ」シリーズのアイテムと言えば、戦局を変えてしまうほど強力なものもあるが、CCが十分にたまっていればなんとこれも4回まで連続使用(アイテムラッシュ)が可能になり、「味方を全快させてステータスも上昇。加えて敵には大ダメージを与えて複数の状態異常を付与……」など、恐ろしい戦術も立てられるようになったのだ。

また、新要素の“コアクリスタル調整”を利用すればCCがある程度溜まった状態で戦闘を開始することもできるようになるので、序盤からアイテムを使って畳みかけるような戦い方もできるように。スキルを連発して前作以上の疾走感を味わうもよし、CCをじっくり溜めてアイテムラッシュで気持ちよく勝利するのもよし。戦術のバリエーションが大幅に増えたのは言うまでもない。

前作からさらなるパワーアップを遂げた『ライザのアトリエ2』。より深みが増した調合、戦術の幅が広がったバトルなど、ベースは『ライザのアトリエ』と同じながらも、あらゆる面で程よい肉付けがされ魅力的なゲームに仕上がっていた。特に、探究手帖を使った謎解きや、水中に潜ったりできるようになったフィールド探索に関しては、今までのシリーズにはなかった新鮮な体験ができ、過去作をプレイしてきたファンにとっても申し分ない出来栄えだ。エボルブリンクで調合の沼も深くなったので、筆者はクリア後もしばらくは納得のいく最高のアイテムづくりに熱中してしまうことだろう。

遺跡調査から始まるライザの新たな冒険だが、物語が進むにつれ王都周辺にある遺跡についてはもちろん、謎の生物で大切な仲間・フィーについても様々な真実が明らかになっていく。各遺跡には古代の人々を苦しめた“悪魔”についての伝承もあり、物語は3年前のように次第と壮大なものに……。今後はアップデートやダウンロードコンテンツの販売などで、作品をより楽しめるようになると思うので、ぜひ本作で冬の寒さも忘れるような、ひと夏の冒険を味わってほしい。

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進化したのはふとももだけじゃない! 『ライザのアトリエ2』より広く、深く、親切になったシステムでプレイヤーの心を鷲掴みには、WHAT's IN? tokyoへ。
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掲載:M-ON! Press