(筆坂 秀世:元参議院議員、政治評論家

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 2020年は本当に酷い年だった。今年の正月には、こんな事態はまったく想定していなかった。と言うより私が生きている間に、新型コロナウイルスによって、恐怖のどん底に落とされることなど予想だにしなかった。長く生きているといろんなことがあるものだ。どんなに嫌でも受け入れるしかない。

 政治も酷いものだった。「度し難い(どしがたい)」という言葉がある。「どうしようもない。救いようがない」といった意味だ。これに当てはまる政治家が今年もやはり多かった。思いつくままにあげてみる。

収賄容疑の吉川貴盛元農水相

 農水相時代に、鶏卵生産・販売大手の「アキタフーズ」から500万円の現金を受け取っていたということで、東京地検特捜部と広島地検が収賄容疑や政治資金規正法違反容疑で関係先の家宅捜索もすでに行っている。この問題が明るみに出るとすぐに衆院議員を辞職した。体調不良を理由にしてはいるが、それは表向きだろう。元農水相の西川公也内閣官房参与にも金が渡っていたという疑惑が出て、辞職に追い込まれた。

 鶏が狭いケージに閉じ込められ、ひたすら卵を産み続けさせられるという残酷な環境をテレビなどでよく見る。その都度、「酷い飼い方だな」と思ったものだ。バタリーケージというらしいが、B5判程度の広さしかない。だがこの飼い方は、世界基準と大きく違うものだった。EUでは禁止されている。世界では、動物のストレスを減らす飼育方法を目指すアニマルウェルフェア(AW)の国際基準があるのだが、日本の鶏卵業界団体はこの基準の強化に強硬に反対してきた。吉川氏らへの献金はそのためのものだったという。

前例のない派手な買収~河井克行・案里夫妻

 数十年前ならまだしも、最近の選挙でここまで派手に買収を行った例を私は知らない。広島県議や市議への現金供与を「当選祝い」などと釈明しているようだが、当選した地方議員にお祝い金を出すなどということも初めて聞く話だ。これもあり得ない。

 それにしても安倍晋三前首相や菅義偉首相も罪な人たちだ。同じ自民党の溝手顕正氏を落選させることを目的に、党本部から1億5000万円という巨額資金を河井夫妻に提供した。ちなみに溝手氏には、10分の1の1500万円だった。溝手氏が安倍氏に批判的だったためだ。安倍氏は溝手氏の選挙の時だけ参院広島選挙区に自民党から2人立てようとした。2013年選挙では、石破茂当時幹事長に反対されてあきらめたが、2019年選挙でこれを実行した。思惑通り溝手氏は落選、案里氏が当選した。

 だが案里氏当選の3カ月後には、克行氏が選挙スタッフに法定の上限額を超える報酬を渡していたことが明るみに出て、法相を辞任することになった。今年(2020年)6月には2人とも東京地検特捜部に逮捕された。2人とも議員辞職をせずに、国会議員としての仕事も一切しないで、高額の歳費や賞与だけは受け取っている。

IR汚職の秋元司衆院議員

 秋元司衆院議員が逮捕された事件も露骨なものだった。カジノを含む統合型リゾート(IR)事業をめぐる汚職事件である。

 それにしてもこの秋元という人物は、お粗末な人だ。偽証工作を行い、それをビデオに撮られてまたまた罪を重ねてしまった。それでも議員は辞めないで、歳費を受け取り続けている。税金を食い物にする愚かな人だ。

 そもそも日本にカジノを誘致することには、大反対である。政府は、いまだに「観光立国」を掲げているが、現在のコロナ問題ひとつを取ってみても、もはやそれは不可能である。「観光立国」の柱の1つは、クルーズ船観光だったが、このコロナ禍で世界では、クルーズ船の廃船が進められている。

 そんな時に、カジノという博打場を作るなどとんでもないことだ。こんな浮ついた政治ではなく、いまこそ非正規雇用を減らし、賃金を引き上げ、世帯の収入を増やす方向にもっと知恵を絞る時である。

「桜を見る会」釈明がまったく不十分~安倍晋三前首相

 安倍晋三前首相は、本当に何をやってきたのか。

 まずは昭恵夫人を“野放し”にした罪である。森友学園問題は、昭恵夫人が余計なことをしなければ、こんな大問題にはならなかった。文書改ざんや近畿財務局職員の自殺は、首相夫人が関わっていたのである。

 安倍前首相は新型コロナ対策でも、専門家の意見を聞くこともなく全国の学校いっせい休校をやってみたり、あまり役に立たない「アベノマスク」を配布したり、無駄なことばかりをやってきた。口では「先手、先手」と言いながら、実際には「後手、後手」ばかりだった。

桜を見る会」の補填問題では、国会で100回以上嘘をついてきた。衆参の議院運営委員会で質問を受けたが、結局「全部秘書にまかせていた。私は知らなかった」と言い逃れをしただけだ。

 そもそもホテルニューオータニやANAインターコンチネンタルホテル東京で、1人5000円パーティーできるわけがないニューオータニの立食パーティーは、最低でも1人1万1000円からだ。そこに疑問を持たないとすれば、あまりにも世間常識を知らなすぎる。しかも、国会で何十回も追及されてきた。ホテル側に確認するのが普通だろう。それを一切せずに、秘書の言い分だけを聞いて国会を欺いてきた。

 なぜ政治資金収支報告に、補填額を記載しなかったのか。『週刊文春』(12月17日号)によれば、安倍氏が首相に返り咲いた翌年の2013年分の政治資金収支報告には、補填分が安倍氏の資金管理団体「晋和会」の報告書に記載されているそうだ。その額は約83万円でANAインターコンチネンタルホテル東京を運営する「パノラマ・ホテルズ・ワン」に支出されているそうだ。

 ではなぜ翌年から記載を止めたのか。国会でも追及されたが2014年には、小渕優子経産相(当時)が後援会員らを、明治座での観劇会に格安で招き、政治資金でそれを補填していたことが暴露され、小渕氏が経産相を辞任するという事件が起こっていた。この二の舞を避けるためにホテル側と口裏合わせを行って、補填はないように見せかけていたのである。参加者名簿を速攻で廃棄処分にするなど、ともかく安倍内閣のもとで姑息なやり方が蔓延した。

桜を見る会」は、もともと各界で功労、功績があった人たちを慰労するためにものだった。だからこそ税金でまかなわれている。そこに自分の地元から大量に支持者を呼び寄せるなどということ自体、「桜を見る会」を変質させるものであり、政治の私物化に他ならない。年々規模を拡大し、欣喜雀躍(きんきじゃくやく)とした姿で招待者の間を走り回る首相の姿は、滑稽としか言いようのないものだった。こんな馬鹿げた行事が今は中止になっているが、結構なことだ。

 忘れられているし、知らない国会議員も多いと思うが、1985年に衆院でも参院でも「政治倫理綱領」が決議されている。その一部を抜粋すると次のように述べられている。

「われわれは、主権者たる国民から国政に関する権能を信託された代表であることを自覚し、政治家の良心と責任感をもつて政治活動を行い、いやしくも国民の信頼にもとることがないよう努めなければならない」

「われわれは、国民の信頼に値するより高い倫理的義務に徹し、政治不信を招く公私混淆を断ち、清廉を持し、かりそめにも国民の非難を受けないよう政治腐敗の根絶と政治倫理の向上に努めなければならない」

 安倍前首相はこの文書をよく読んで、議員辞職すべきである。

やはり器ではなかったのか~菅義偉首相

 読売新聞社が12月26~27日に実施した全国世論調査新型コロナウイルスへの対応について、菅首相が指導力を「発揮している」と思う人は16%で、「そうは思わない」が77%と圧倒的多数を占めた。政府の新型コロナ対応を「評価しない」は62%(今月4~6日調査49%)と半数を超え、「評価する」の32%(同42%)を大きく上回っている。

 当然の評価だろう。会見を見ていると自信の無さがもろに出ている。これではリーダーシップの発揮は難しいだろう。

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