年末といえば「大掃除」。100円ショップなどでも手軽に買えるようになった「重曹」「セスキ炭酸ソーダ」「クエン酸」を使って、効果的に掃除をしようと考える人もいると思います。しかし、家の中にはさまざまな種類の汚れがあるため、これらの使い分けに悩む声も少なくありません。ネット上でも「重曹は万能選手のイメージがあるけど本当なのかな」「それぞれの得意・不得意な汚れが知りたい」「消臭効果も期待できるのはどれ?」などの疑問を持つ人は多くいるようです。

 家庭の大掃除に役立つ「重曹」「セスキ炭酸ソーダ」「クエン酸」の上手な使い分け方について、ハウスクリーニングアドバイザーの有賀照枝さんに聞きました。

3種とも常備すると便利

Q.重曹/セスキ炭酸ソーダクエン酸とはそれぞれ、どのような特徴・成分を持ったものですか。

有賀さん「重曹は『炭酸水素ナトリウム』のことで、医療用・食用・掃除用の3種類があります。掃除の用途以外に食品としても使いたい場合は、食用を購入すると用途が広がります。セスキ炭酸ソーダは『セスキ炭酸ナトリウム』ともいい、重曹と炭酸ナトリウムで作られたものです。重曹に比べて水に溶けやすく、洗浄力も優れています。

また、クエン酸は疲労回復にも役立つ成分としても知られていますが、純度の違いで食用と掃除用に分かれます。重曹と同様、食品としても使いたい場合は、食用の購入がおすすめです。

人にも地球に優しいとされる『ナチュラルクリーニング』『エコ掃除』などの言葉が広く知られるようになってから、これら3つとも100円ショップやホームセンター、通販サイトなどどこでも入手しやすくなりました。一部はスプレータイプもありますが、多くは粉末状で販売されていて、比較的安価で購入できます。水で薄めて使えばコストパフォーマンスがとてもよいですし、粉末だからこそできる使い方もあります」

Q.重曹/セスキ炭酸ソーダクエン酸はそれぞれ、どんな汚れが得意・不得意なのでしょうか。掃除での使い方とともに教えてください。

【重曹】
重曹は中性に近い弱アルカリ性の性質を持つので、軽い汚れであれば、いろいろなタイプの汚れに広く対応できます。重曹を水に溶かして「重曹水スプレー洗剤」として使うこともできますが、どちらかというと水に溶けにくい性質なので、掃除ではクレンザーのように鍋の焦げや茶渋、シンクや五徳などの汚れを落とす研磨剤として使うのがおすすめです。使う前に、目立たないところで試してから使うようにしましょう。ただし、漆器や銅製品など軟らかい素材には、傷を付けてしまうので使えません。

また、脱臭剤としての利用もおすすめです。瓶や布袋に詰めた重曹を靴箱やごみ箱など、トイレ以外で臭いの気になる場所に入れておけば、中和反応で臭いを消してくれます。重曹が硬くなったら、新しいものと交換しましょう。

【セスキ炭酸ソーダ
セスキ炭酸ソーダは、やや強めのアルカリ性で水との相性もよいので、溶かして「セスキ水」にし、スプレー洗剤のように使うのがおすすめです。油や皮脂、血液などタンパク質の汚れを落とすのが得意です。洗濯では襟元の黄ばみや皮脂汚れ、血液を落とすのに向いており、キッチンではコンロや換気扇などの油汚れにセスキ水をスプレーすれば、気持ちがよいほどスルスルと汚れが取れていきます。

大掃除ではキッチンの換気扇やレンジフード本体のしつこい油汚れに、セスキ水を浸したキッチンペーパーを張り付けておきましょう。油汚れが軟らかくなり、ゴシゴシこすらなくても落ちやすくなります。ただし、アルミや亜鉛、スズ製品など一部の金属は化学反応を起こしてしまい、黒く変色するなど素材を傷めるので使用しないでください。

クエン酸
クエン酸梅干しレモンなどのかんきつ類でもおなじみの物質で、酸性です。水あかやせっけんかすを落としたり、トイレのアンモニア臭を消したりするのが得意です。お風呂の鏡や蛇口、キッチンのシンクや電気ケトル、加湿器などに付いた白いカリカリした汚れ(水あか)に効果があります。「クエン酸水」を吹き掛けるだけではカリカリした汚れはすぐに取れないので、ラップやキッチンペーパーを使って、汚れとクエン酸の成分を密着させ、しばらくしてからこすり落とす、を繰り返しましょう。

きれいになった後はしっかりすすいで、クエン酸を洗い流してください。すすぎが足りないと素材を傷める可能性があり、特に金属はさびてしまうこともあるので要注意です。また、酸に弱い天然素材や大理石にも使わないようにしましょう。

Q.ハウスクリーニングアドバイザーとして、家庭の大掃除で特に役立つと思われるものや、家に常備しておくものとして特におすすめなのはどれですか。

有賀さん「個人的には、特にセスキ炭酸ソーダがお気に入りで、数日サボってしまったガスレンジ回りの拭き掃除や皮脂汚れが気になる洗濯のときに活躍してくれています。ただ、普段から、これら3つとも常備しておくと大変便利です。わが家でもこの3種類は常備しています」

クエン酸と塩素系洗剤の併用は危険

Q.これら3つについて、掃除に使う際に注意した方がよいことや、やってはいけない使い方、保管時のポイントを教えてください。

有賀さん「セスキ炭酸ソーダは手荒れする可能性があるので、使うときはゴム手袋をしましょう。また、クエン酸は酸性なので、塩素系洗剤と一緒に使わないのが鉄則です。混ぜて使用すると有毒ガスが発生するため、大変危険です。いずれも、保管の際は高温多湿、直射日光を避け、密閉して冷暗所に置いてください。

私もついやってしまいがちなのですが、パッケージに記載された説明書きを読まずに使用するのはNGです。保管方法や、どんな場所に使えるのか、または使えないのかなどの詳しい記載があるので、使用前によく目を通しましょう。

また、ネット上には『重曹とクエン酸を混ぜて使う』などさまざまな方法が紹介されていますが、『重曹=研磨と消臭』『セスキ炭酸ソーダ=油汚れ』『クエン酸=水あかのカリカリ汚れ落とし』というように、それぞれの特徴を生かしたシンプルな使い方をするのが最も無駄がなく、用途に合ったよい使い方だと思います」

Q.これら3つのいずれでも落ちない汚れはあるのでしょうか。

有賀さん「残念ながら、これら3つはカビには効きません。カビには塩素系カビ取り剤を使いましょう。一般的な塩素系カビ取り剤には漂白作用もあり、基本的には黒カビもきれいに落とせます。

また、アルカリ性のセスキ炭酸ソーダ、酸性のクエン酸でも落とせない頑固な汚れには、よりpHの高い専用洗剤や道具を使う必要があります。汚れの度合いによっては、ハウスクリーニングなどの専門業者に依頼した方がよい場合もあります。汚れは長く放置すればするほど、どんどん落ちにくくなるものです。重曹やセスキ炭酸ソーダクエン酸でも落とせない汚れがあることを理解した上で、これら3つを効果的に生かすためにも、早め早めに、汚れに対処するのが正解です」

オトナンサー編集部

重曹などをどう使い分ける?