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スピッツの単独公演「スピッツ コンサート 2020 “猫ちぐらの夕べ”」のオンライン上映が、2020年12月21日よりスタートした。

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スピッツ新型コロナウイルス感染拡大の影響で全国ツアー「SPITZ JAMBOREE TOUR 2019-2020 "MIKKE"」のホール公演が延期となる中、昨年11月に一夜限りのワンマンライブ「スピッツ コンサート 2020 “猫ちぐらの夕べ”」を東京・東京ガーデンシアターで開催。公演は飛沫対策のため全席着席形式で行われ、セットリストも“ほぼ全体がゆったりとしたもの”で構成された。この公演の模様が2020年12月21日1月31日まで各配信プラットフォームでオンライン上映されており、本稿ではその公演の様子をレポートする。

開演時刻を迎えると、草野マサムネ(Vo, G)、三輪テツヤ(G)、田村明浩(B)、崎山龍男(Dr)の4人と、サポートメンバーのクジヒロコ(Key)がステージに登場。5人は「恋のはじまり」でライブをゆったりとスタートさせる。続けて草野がエレキギターからアコースティックギターに持ち替え、5人は「ルキンフォー」を披露。ゆっくりとしたテンポながら力強さのみなぎるこの曲を、彼らはじっくりパフォーマンスした。さらにスピッツは大ヒットナンバー「空も飛べるはず」を演奏し、会場をやわらかな空気感で包み込んだ。

草野はMCでひさびさのライブに対する不安を語りながらも「楽しい夜にしますんで、ごゆるりとお楽しみいただけると」と挨拶する。続けて披露されたのは田村のうねるようなベースの音が際立つ「あじさい通り」。サビでは崎山がコーラスを担当し、儚い世界観が作り上げられた。その後、冬にぴったりな「スカーレット」を経て、草野のギターとボーカルから始まった「小さな生き物」では、徐々に三輪のアルペジオ、田村と崎山が作り出すビートが加わり、たくましいアンサンブルができあがる。さらにスピッツはファンに人気の楽曲「魚」を畳みかけ、透明感のあるサウンドと歌声で観客を魅了した。

草野は「バンドマンとしてのアイデンティティの揺らぎがあった」とコロナ禍での心境を明かし、「このライブでバンドマンとしてのアイデンティティがよみがえってきた」と語る。その後「ひさしぶりにやる曲です」という言葉に続けて披露されたのは、2000年発表の楽曲「ハートが帰らない」。サビで草野の伸びやかで美しい高音が響き渡り、観客はその音に酔いしれるように聴き入った。さらに彼らは人気曲「猫になりたい」を間髪いれずにプレイ。「君だけを」では、4人のバンドサウンドとクジのキーボードの音が有機的に絡み合った壮大なサウンドスケープが描き出される。サビでの大胆な転調が耳を引く「僕のギター」では、草野が「君を歌うよ 小さなことが 大きな光になってくように」という言葉を、祈りを込めるようにまっすぐ歌い上げた。

ライブ中盤にスピッツは今年リリースされた新曲「猫ちぐら」を披露。音数の少ない穏やかな演奏で、ゆったりとしたあたたかなムードを醸し出した。直後に、三輪の特徴的なギターリフが鳴り響き「フェイクファー」が始まる。さらにスピッツはクジのピアノの音に乗せて代表曲の1つ「楓」を演奏。その後披露された「みなと」では、ミラーボールがゆっくり回転し、会場は幻想的な雰囲気に包みこまれた。ライブが終盤に差しかかると、彼らは「魔法のコトバ」「正夢」をプレイ。それまでの切なさに満ちた空気から一転、晴れやかなステージングを見せ彼らは舞台をあとにした。

しばらく続くアンコールの拍手に応え、スピッツは再びステージに。みずみずしい恋心を歌った「初恋クレイジー」では、間奏で草野がハーモニカを演奏しバンドサウンドに彩りを添えた。草野は「いい空間を作ってくださって、1人ひとり全員にお礼を言いたいです。今日来てくださった1人が欠けても、今日のライブはできなかったと思うので」と感謝の気持ちを述べる。そしてスピッツは三輪の繊細なアルペジオと草野のコーラスが情緒的な「ウサギのバイク」を経て、ラストに「ハネモノ」をパフォーマンス。草野のハスキーな高音、崎山の手数の多いタム回し、ステージを所狭しと動き回る田村の骨太なベースライン、三輪が爪弾くリフにクジのキーボードの音色、そして観客の力強い手拍子が1つになり、公演は大団円のうちにフィナーレを迎えた。

スピッツ コンサート 2020 “猫ちぐらの夕べ” 2020年11月26日 東京・東京ガーデンシアター セットリスト

01. 恋のはじまり
02. ルキンフォー
03. 空も飛べるはず
04. あじさい通り
05. スカーレット
06. 小さな生き物
07. 魚
08. ハートが帰らない
09. 猫になりたい
10. 君だけを
11. 僕のギター
12. 猫ちぐら
13. フェイクファー
14. 楓
15. みなと
16. 魔法のコトバ
17. 正夢
アンコール
18. 初恋クレイジー
19. ウサギのバイク
20. ハネモノ

※「崎山龍男」の「崎」は、たつさきが正式表記。

「スピッツ コンサート 2020 “猫ちぐらの夕べ”」より。(撮影:中野敬久)