2021年は無観客開催となった「箱根駅伝」、その100km以上にもおよぶコースを、路線バスでたどってみました。バスの座席からランナーの気分でコースを「走って」みましょう。まずは「花の2区」まで。

箱根駅伝のコースを路線バスで走る!

毎年1月2日、3日に開催されている「箱根駅伝」。往復217.1kmにも及ぶコースは、ランナーの通過に合わせて順次規制されますが、それ以外の時間帯は普通の道路として使用されるため、当日でもコースの大半を路線バスでたどることができます。

今回は1区(復路10区)から2区(同9区)までの、考えられる乗り継ぎルートの一例を紹介しつつ、名場面をたどります。

【1区/10区】東京を抜けて神奈川県へ!

・区間:読売新聞大手町ビル(東京都千代田区)~鶴見中継所(横浜市鶴見区)、21.3km
・大会区間記録:1区/1時間1分6秒、10区/1時間8分40秒

●乗り継ぐバス路線
都営バス「東43」:大手町~東京駅丸の内北口
東急バス「東98」:馬場先門~内幸町(新橋駅北口まで450m徒歩)
・港区コミュニティバス「ちぃばす」芝ルート:新橋駅北口~浅草線三田駅
・港区コミュニティバス「ちぃばす」高輪ルート:浅草線三田駅前~高輪一丁目
都営バス「反96」:高輪一丁目~品川駅高輪口
東急バス「品94」:品川駅~青物横丁
京急バス「井19」:青物横丁駅~ 南大井文化センター
京急バス「森22」:南大井文化センター~大森海岸駅(大森本町1丁目まで500m徒歩)
京急バス「森21」:大森本町1丁目~大森警察(大森警察署前まで200m徒歩)
京急バス「蒲67」:大森警察署前~京急蒲田駅入口・京急バス「蒲30」:京急蒲田駅入口~日ノ出通り(蒲田警察署前まで300m徒歩)
京急バス「蒲40」:蒲田警察署前~東六郷1丁目(六郷神社まで1.1Km徒歩)
京急バス「蒲74」:六郷神社~六郷橋
京急バス「空51」:六郷橋~宮前(新川橋まで500m徒歩)
臨港バス「川29」:新川橋~池田1丁目
(池田1丁目~鶴見中継所 400m徒歩)

スタート地点の読売新聞本社ビル前には、歴代の優勝校を記したプレートや駅伝選手の銅像などが建ち、小さなスペースはちょっとした記念公園のような雰囲気です。出発してすぐ日比谷通り(国道1号)を左折した先にある都営バスの大手町バス停から、路線バス乗り継ぎの旅をスタートさせましょう。

とはいっても、このバス停から発車する「東43」系統は500mほど先でコース上から外れ、左側に江戸城を臨みながら東京駅丸の内口の駅前通りに入っていくため、駅伝のコースをたどるには、東急バスに2区間だけ乗車したあと、芝公園周辺を走る「ちいバス」に乗り継ぎましょう。ランナーがまっすぐ進む日比谷通りから各所へ寄り道しつつ、東京タワーや増上寺周辺を進みます。

このあと駅伝コースとなる第一京浜道路(国道15号)は、すぐ近くを京急本線が並走していることもあり、まっすぐ直通するバスがありません。第一京浜沿いの三田駅前から鶴見中継所まで、実に11路線の乗り換えが必要で、ところどころに徒歩が必要な区間もあります、寄り道をしながら、京急本線およびJR線を越える新八ツ山橋や、多摩川を渡る「六郷橋」(最寄バス停:六郷橋)など、駅伝でおなじみの中継スポットを訪れるのも良いでしょう。

多摩川を越えて神奈川県に入り、川崎市内を乗り継ぎつつ、池田一丁目バス停を降りて第一京浜をさらに進みます。横浜市との市境を越えてしばらく歩くと歩道橋が見え、その下(上り線側)にランナーのブロンズ像が建っているあたりが、開催時に「鶴見中継所」として使用されるスペースです。

このあと、中継所の最寄りバス停「市場」からしばらく、横浜市営バスの路線を連続して乗り継ぐので、可能なら事前に1日乗車券を入手しておくと良いでしょう。

【2区/9区】平地から一転急坂「花の2区」 涙の名場面で途中下車!

・区間:鶴見中継所(横浜市鶴見区)~戸塚中継所(同・戸塚区)、23.1km
・大会区間記録:2区/1時間5分57秒、9区/1時間8分13秒

●乗り継ぐバス路線
横浜市営バス「16」市場~鶴見中央4丁目(注:市場から鶴見駅方面へのバスは平日1本のみのため、逆方向のバスで回り込む)
横浜市営バス「18」:鶴見中央4丁目~生麦
横浜市営バス「86」:生麦~横浜駅
横浜市営バス「105」:横浜駅前~高島町
横浜市営バス「106」:高島町~権太坂上
横浜市営バス「横17」:権太坂上~品濃口
神奈中バス「横43」:品濃口~戸塚駅東口(戸塚バスセンターまで約200m徒歩)
神奈中バス「戸50」:戸塚バスセンター~大坂上
(大坂上~戸塚中継所 約300m徒歩)

2区(復路は9区)は最長の区間で、「花の2区」と呼ばれるほどエースの投入が多く、早大・瀬古利彦選手(1977~1980年/現・日本陸上競技連盟理事)や同・渡辺康幸選手(1993、1995、1996年/現・早大陸上部監督)など、過去には錚々たる面々が走っています。往路の9区も、テレビドラマ「陸王」でマラソン競技者を演じるなど、俳優として活躍する日大・和田正人選手(2012年)などが活躍しています。

鶴見から続く横浜市街地周辺の平坦な道のりは、時として日大・ギダウ・ダニエル選手が20人を抜き去った「ごぼう抜き」(2009年)のような展開もしばしば見られるものの、難関はこのあと。コースは保土ヶ谷から大きく起伏を描き始め、切り立った崖の下を走る「権太坂」(最寄バス停:権太坂上)など、一転してひたすら地形に揺さぶられる起伏が続きます。必死の形相でランナーが通過する坂をバスの車窓に眺めつつ、数々の名場面を思い出すのも良いでしょう。

そしてこの坂の先にある「児童公園入口」交差点(最寄バス停:児童遊園地入口)付近は、2013(平成25)年に怪我のため出場できなかった東海大のエース・村澤明伸選手が、給水要員としての役割を果たした場所でもあります。チームメイト・早川 翼選手(東海大・この回は関東学連選抜として出場)にボトルを渡すために並走しつつ、怪我がなければ自らが担ったであろう区間を50mほど走ったのは、記憶に残るドラマでしょう。ここはバスを降り歩いてみたいものです。

この先、駅伝のコースは東海道国道1号)からJR戸塚駅周辺をバイパスする山側の「横浜新道」を経由します。横浜新道は歩道があるので徒歩で向かうことは可能ですが、戸塚中継所までバス路線は途切れてしまいます。

横浜新道開通前のルートである東海道沿いに、バスを乗り継ぎ戸塚駅を経由する形で戸塚中継所へ向かってみましょう。戸塚駅の北側にある戸塚踏切は長らく開かずの踏切として知られ、かつてはランナーを足止めする難所でしたが、2016年、この上をまたぐ橋の完成とともに姿を消しました。テレビ中継でもよく目立つ「タックルベリー 戸塚中継店」の近くにある戸塚中継所には、神奈中バスの大坂上バス停から300mほど急な坂道を登ると到達できます。

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路線バスの座席から眺める箱根駅伝のコースは乗用車よりも高く、少しだけランナーに近い視点を楽しめます。ちょっとした起伏など、テレビの中継ではわからない発見もあるでしょう。何度も乗り換えながら、さまざまな駅伝の聖地を巡るのも良いのではないでしょうか。

ランナー通過前に2区/9区の権太坂を走るバス。例年、沿道には多くの人が詰めかけた(2017年1月、乗りものニュース編集部撮影)。