2つの手すり設置した後のトイレ

介護用品を初めて設置するときは、どこに依頼すれば良いのか、費用はどれくらいかかるのか、分からないことだらけ。お母様のために介護用の手すりをレンタルしてトイレに設置したという日刊住まいライターもそのひとり。なぜレンタルにしたのか、どんなメリットがあるのかについて語ります。

介護用手すりの設置はレンタルの方がスムーズだった。気になる費用や使い勝手は?

介護用手すりには「レンタル」と「工事による設置」という2つの選択肢がある

手すり設置前のトイレ

トイレに設置した手すりの例を中心にご説明しましょう。まず、手すりを設置する前のトイレをご覧ください。介護士さんの話によると、トイレを使うときに大変なのが便座に腰をおろしたり立ち上がったりする行為。これを補助するために体を支える手すりを設置するのが良いということでした。

手すりの設置には2つの選択肢があります。「レンタルの手すりを借りる」という選択肢と「介護用の手すりを工事会社に依頼して設置する」という選択肢です。

レンタルの場合はレンタル料金がかかりますが、介護保険で料金の9割の補助を受けることができ、実際に支払うのは1割のみです。一方、工事によって手すりを設置する場合は工事料金がかかりますが、こちらも20万円までの工事なら1割の負担で済みます。

どちらの場合も金銭的な負担はかなり軽く済みます。

「設置工事」は手続きが多くて時間がかかるのが難点

僕はマンションの大家として何度もリノベーションを経験していることもあり、いつもお世話になっている工事業者さんに依頼して壁に手すりを設置するほうが使いやすいものができるのではないかと思いました。母よりも高齢の父がいるので、レンタルでなく工事で手すりを設置すれば、闘病中の母だけでなく、父にとっても役に立つと判断したからです。

手すり設置位置のイメージ

まず、手すりを設置する場所を示した画像を作成してみました。手すりがL字になっているのは、座ったときと立ったときでつかむ場所を変えられるようにするためです。細かいサイズにはこだわらず、さっそく設置工事に入りたいところなのですが、これがなかなか簡単ではありません。

介護保険を利用して工事する場合、「工事代金の見積もり」はもちろんのこと「どんな工事を行うかという図面」「介護保険を申請するための書類」も作成してもらう必要があります。いつものマンションのリノベなら、イメージ画像を渡して「あとはおまかせで」と工事を進めてもらうこともできますし、急ぎのときは概算の金額だけ聞いて、おまかせで工事をしてしまうこともあります。

ところが、今回のケースでは手続きをしなければならない書類が多く、テンポよく工事を進めることができません。先ほど書いたとおり、20万円までの工事なら補助を受けることができる以上、きちんとした手順を踏むことが求められるのは仕方ないことです。

しかし、病気は申請書類がそろうのを待ってはくれないのです。ひとりで歩くのが辛そうになってからの母の病気の進行は驚くほど早く、もはや工事に必要な書類を待っていることはできないと判断し、介護用の手すりをレンタルしようと決めました。

「レンタル」は設置までのスピードがとにかく早い

レンタルをお願いしてからの展開はあっという間でした。午前中、ケアマネージャーさんにご紹介いただいたレンタル業者さんに連絡すると、その日の夕方には業者さんが介護用品を持ってきてくれました。

僕は「まず現場を見て下見してから、適当な介護用品のあたりをつけて、後日設置する」という手順かと思っていたのですが、こちらが伝えた情報から「設置できそうな介護用品を持ってきてくれた」のでした。

うちの母の病状が急に悪化したこともあるのかもしれませんが、こういう判断の早さは大変助かりましたし、大家としても勉強になりました。

手すり設置後のトイレ

設置していただいたのは2種類の手すり。こちらは便座の横に設置した置き型の手すりです。重みがあるので体重をかけてつかむことができ、便座に腰をおろすのがだいぶラクになります。

突っ張り式の手すり

一方、入口ドアのすぐそばには突っ張り式の手すりが設置されました。先ほどのイメージ画像でいうとL字のタテ棒の部分の役割を果たします。ドア近くにあるおかげで、足元の段差などを避けて便座まで安全にたどりつくための助けにもなります。僕も実際に手すりをつかみながら便座に腰を下ろしてみましたが、たしかに座りやすいと感じました。

当初の予定では、このレンタルの手すりを使用しながら、工事書類の申請を進めて業者さんに手すりを設置してもらうつもりでしたが、ほどなくして母の体調が急変して自宅で息を引き取ることとなりました。

2つの手すり設置後のトイレ

結局、母が手すりを使った回数は数えるほどでしたが、最後までできるかぎり自分だけで用を足したいと言っていた母にとっては本当に助けになったと思います。設置工事にこだわらず、レンタルの手すりを設置してよかったと感じました。

ちなみにレンタル料金は手すり2点で月々4500円。ただし、要介護認定の基準を満たしていれば10%の「450円」で済み、それ以外の出費は必要ありません。

介護用品を購入するケースもある

手すり設置前のお風呂

介護用品を購入するケースもあります。わが家の場合、お風呂に設置した手すりがそれにあたります。設置前のお風呂をご覧ください。浴槽の横にも手すりがありますが、体力が衰えた人間にとって大変なのは浴槽をまたぐこと。勧められたのは、浴槽を挟んで固定する手すりでした。

浴槽に設置した手すり

これをつかめば足腰の弱った状態でも、自分の力でまたぐことができるのです。取り外し可能なので不要になったら外すことができますし、便利だなと感じました。

購入前にひとまずデモ機を借りて、良さそうなら購入するという流れでした。残念ながら、このお風呂用手すりを設置した時点で、母にはもはやひとりでお風呂に入れる体力は残っておらず、結局使われることなくデモ機は返却しました。

請求がなかったので正確な金額は覚えていませんが、価格は25,000円前後だったと記憶しています。こちらについても購入金額の9割が補助されるため、もし購入したとしても約2500円ほどで済んだはずです。レンタル同様、負担はかなり少ないと考えていいと思います。

わが家ではこのほかにも、居間のソファの脇に置き型の手すりを設置したり、寝室に介護用ベッドを置いたりとさまざまな介護用品をレンタルしました。用途によって選び方も変わってきますが、やはりレンタルのメリットはスピード感だと実感した次第です。

ここでご紹介したのはあくまで一例です。介護を受ける人間の体調や病状によっても事情は異なると思いますので、ケアマネージャーさんや介護士さんとよく相談して決めることをおすすめします。

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