海外の研究者を集める中国の「千人計画」。読売新聞によれば、日本から優秀な研究者が少なくとも44人が参加していることが確認されたという。

 公的な資金を受けとった研究者が中国軍に近い大学で教えていたケースもあったとされ、安全保障面など重要な分野での技術流出が危惧(きぐ)されているようだ。中国メディアの環球時報(電子版)は6日、なぜ日本の研究者が中国に渡っているのか、中国で働く日本人研究者の見解を伝える記事を掲載した。

 記事は中国で働く複数の日本人研究者に取材を行っている。そして、日本人研究者の見解として「金や報酬のために国を売っているという批判もあったが、決してそうではなく、中国に渡るしかなかった」のだと伝えた。これらの日本人研究者が中国に行ったのは「日本に仕事がなかった」ためで、ある専門分野では、日本の国立大学で働きたいと思っても5ー6人分しか枠がないと指摘。少ない枠を巡って激しい競争が繰り広げられ、ここに入れなければ自分のやりたい研究はできないのが日本の現状だとした。

 また、日本には研究者として一番望んでいる「研究に没頭できる環境」が整っていないと語っていることを紹介。日本では研究者が学生への講義などもする必要があるが、中国ではほとんどしなくて良いそうだ。また、研究に欠かせない設備にも格差があり、これは国の「研究開発予算」の違いによるとした。記事によると、「中国には日本の7倍も豊富な資金がある」そうだ。

 研究者の立場からすると、中国の研究環境が魅力的であるのは事実だろう。しかし、優秀な科学者の流出は頭を悩ませる問題だ。これを機に日本は日本人研究者を取り巻く環境を見直す必要があるのかもしれない。(編集担当:村山健二)(イメージ写真提供:123RF)

日本人研究者はなぜ中国に渡ったのか「金のためじゃない」=中国メディア