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ドライバー・フレンドリーな運転環境

translationKenji Nakajima(中嶋健治)

 
フェラーリローマには、実用的なリアシートが付いてくる。2+2のスポーツカーを、これまでフェラーリが作らなかったわけではない。過去に1度だけ、ベルトーネ・デザインの308 GT4が1974年に発売された。それ以来、久しく作られていない。

【画像】フェラーリ・ローマ 競合ハイパフォーマンス・モデルと比較 全150枚

モンディアルはずっと柔らかいクルマで、カタチもずんぐり。それ以降の2+2は、456から612スカリエッティ、FF、GTC4ルッソまで、V型12気筒を搭載したビッグ・クーペのグランドツアラーだった。ひと回り小さいローマは、新しい一手となるだろうか。

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フェラーリローマ(英国仕様)

運転環境は、かなりドライバー・フレンドリー。メーターパネル周りは、ハイブリッドスーパーカーのSF90ストラダーレと共通だと思われる。むしろ、ローマの方がしっくり来るように見える。

写真をご覧いただきたい。とても見事な仕上がりで、フェラーリらしさもちゃんとある。

F8トリブートのメーターパネルは、かなりシンプルなデザインだ。裏に隠れる構造は、458イタリアを起源とする。その理由で、操作はやや複雑に感じた。だが、ローマはその真逆といっていい。

モニターの表示は少し複雑に思えるものの、極めて高精細。操作はとても直感的に行なえ、わかりやすい。この流れでタッチモニターの反応がアイパッドのように正確になれば、エキゾチック・モデルとしては新しい次元に届いたと思えるだろう。

技術者から説明を聞いたが、試乗車のタッチモニターの反応はまだ不十分な様子。フェラーリは、改良を重ねているという。

喜びと驚きで満たしてくれるローマ

12月のイングランド南部は、暗く霧雨が降っていたが、フェラーリローマでゆったり道を流すだけで、とても豊かな気持ちになれる。流麗なスタイリングと穏やかな振る舞い、伝統あるブランドだというすべてが、人生を豊かにしてくれる。

しかし、それだけではミスリード。ローマはそれ以上のことを与えてくれる。外に出たくないほど寒い午前3時に、目覚ましアラームを設定したいと思わせてくれる。

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フェラーリローマ(英国仕様)

マネッティーノのチョイスは、悩む必要なし。スポーツ・モードはサーキットでは不満足でも、一般道を熱く走りたいドライバーには丁度いい。たとえ多少濡れていても。

トラクションがウェットでは足りていないという事実は、とても残念。しかし、タイヤには敏感なようで、ミシュラン・パイロットスポーツ4Sの方が、ピレリ・Pゼロよりはるかに優れた挙動を示していた。

いずれにせよ、アクセルペダルさえ丁寧に扱えば、ローマは喜びと驚きで満たしてくれる。まず、ボディが実際よりコンパクトに感じられることに驚かされる。

全幅は1974mmだから、確かに大きい。でもコンパクトであるかのように、狭い道を完璧にトレースできる。F8トリブートの良くない特性の1つ、ステアリング切り始めの超が付くほどアグレッシブな反応が、一歩穏やかになっていることにも驚いた。

動的性能にも感心しきり。フェラーリ基準でいえば、特にパワフルでもないし、ライバルと比べれば特に軽量なわけでもない。しかし、これ以上誰が不満を感じるのかと疑問を覚えるほど、鋭く加速する。

スポーツカーであり、グランドツアラー

ローマで道を進むだけで、至福が味わえる。フェラーリといえば、秀でたエンジンで名を馳せてきた。だが近年はシャシー開発でも、技術者の才能が花開いているようだ。

相当にチャレンジングな道でも、極めて速い。それでいて巧みな走りで、不安感がない。

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フェラーリローマ(英国仕様)

新しい8速デュアルクラッチATは、この方式では改善のしようがないほど優秀。7速までは異なるマッピングが与えられ、ツインターボV8エンジンから魔法のようなパワーデリバリーを引き出してくれる。

少し不機嫌そうなサウンドは、ミドシップ・フェラーリにぴったり。ローマには、少し場違いに思えた。

結局のところ、フェラーリローマスポーツカーなのか、グランドツアラーなのか。唯一の答えとして、見事にどちらも両立させているという結論にたどり着いた。

実際は、筆者がこれまで目を通した試乗レポートより、不完全さを感じさせるクルマではある。グッドウッドイングランド南部を、雨混じりの寒い12月にドライブしたことで、少しの弱みも発見できたのだろう。この機会に感謝したいと思う。

しかし、フェラーリローマはとても美しい。そして、極めて幅広く深遠な能力を兼ね備えている。その実力を考えれば、筆者の発見など小さなものに過ぎない。

メルセデスAMGポルシェ、アストン マーティンを含む、ベントレーからマクラーレンまでがライバルとなる、新しいフェラーリローマ。自らの手でどんな戦いを生み出したのか、フェラーリは恐らく気付いてはいるのだろう。

フェラーリ・ローマ(英国仕様)のスペック

価格:17万984ポンド(2393万円)
全長:4656mm
全幅:1974mm
全高:1301mm
最高速度:320km/h
0-100km/h加速:3.4秒
燃費:8.9km/L
CO2排出量:255g/km
車両重量:1570kg(オプション込み)
パワートレインV型8気筒3855ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:620ps/5750-7500rpm
最大トルク:77.4kg-m/3000rpm
ギアボックス:8速デュアルクラッチ・オートマティック


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