「6日経ってもこれじゃ、どこも苦労するわよね」そんな風に私が納得していたのは金曜日、未だに雪で真っ白なマハダオンダ(マドリッド近郊)のグラウンドを見た時のことでした。いやあ、実はその日、アトレティコワンダメトロポリターノでセッションをしており、はい、クラブ広報からのメッセージをちゃんと読まなかった自分が悪いんですけどね。先週末の大雪の後、すでにどの通りにも人が歩く幅程度の道ができているセントロ(市内中心部)とは違い、セロ・デ・エスピーノは車道以外、パス停のある歩道ですら、雪が積もりっぱなし。おっかなびっくり練習場に近づいたところ、入り口前の駐車場には雪かきに使うブルドーザーしかなく、ようやく自分の間違いに気づくというのも何ですが、大丈夫。

だってえ、アトレティコは来週木曜まで試合がないんですよ。1回ぐらい、セッションを見損ねたから何よってもんですが、せっかく遠出したので、グラウンドがどんな具合か、ちょっと敷地周りを歩いてみることに。すでに水曜には練習ビデオが上がっていたメイングランドは綺麗になっていたようですが、角地のグラウンドなどはまだ雪かきも手付かず。中央部にある人工芝グラウンドではすでにユースチームがトレーニングしていたため、必要性の高いところから順々に除雪していっているようですが、この近所に練習場があるラージョ・マハダオンダ(アトレティコ練習場のミニスタジアムで試合をする2部Bチーム、ラージョ・バジェカーノと経営関係はない)など、スタッフ、ボランティアのファンまで駆り出して、グラウンドを使えるようにしていましたしね。

こうなると、同じマドリッド郊外にあるヘタフェが、まあ彼らも月曜にエルチェに勝った後、次の試合が来週水曜のウエスカ戦と間が空きますからね。先週、ビジャレアルから河岸を変え、レンタル移籍した久保建英選手など、心待ちにしていたはずだったチーム練習を土曜まで行わず、ミニバケーションって、もしや練習場の積雪が自然消滅するのを狙っている?まあ、暴風雨フィロメナが去った後も寒波が続き、毎晩気温が零下になる首都圏だけにそれは無理そうですが、大変なのはこの週末、コパ・デル・レイ32強対決を控えているマドリッドの2部の弟分チームたちなんですよ。

ええ、皆相手が格上の1部チームのため、ホーム開催になるんですが、木曜にようやくシュダッド・デポルティバ・ブタルケの除雪を終え、今週最初のセッションを行ったレガネスは、うーん、おそらくスタジアムの方まで手が回らなかったんですかね。早々に土曜午後8時(日本時間翌午前4時)からのセビージャ戦のため、兄貴分に助けを求め、柴崎岳選手もワンダメトロポリターノでプレーできることに。同日、レバンテを迎えるフエンラブラダもエスタディオフェルナンド・トーレスの除雪を諦め、スペインサッカー協会の厚意により、ラス・ロサス(マドリッド近郊)の協会施設グラウンドを試合会場として使わせてもらうことになりました。

そして日曜にバレンシアと対戦するアルコルコンはサントドミンゴの整備ピッチを上げているそうですが、タイムリミットが迫っているのはこの32強対決のトップバッターとして、土曜正午にエルチェと当たるラージョ。ええ、木曜などは練習場がまだ使えないため、兄貴分レアル・マドリーがさすがの機動力で除雪したバルデベバス(バラハス空港の近く)のグラウンドを借りて、セッションを行っていましたが、エスタディオ・バジェカスも未だに雪で埋まっているのだとか。結局、スタジアムは間に合わないだろうと、金曜になって練習場の除雪を急ピッチで始め、そちらで試合を午後4時に遅らせて開催するようですが、さて。こんなアクロバティックな会場変更も全ての試合が無観客だけに、ファンに影響がないのが救いとはいえ、フエンラブラダこそ、月曜のスポルティング戦の後、ヒホン(スペイン北部のビーチリゾート)に残って練習してきたからいいんですけどね。リーガ戦は延期、練習もようようでききていない、他3チームにはそれこそ、見習うべき手本が身近なところに。

え、それは先週末、アスレティックがマドリッドに来られなかったため、せっかくワンダメトロポリターノのピッチを暖房ランプで積雪から守りながらも試合ができず。それでも火曜には支障なく、延期されていた1節のセビージャ戦をプレーしたアトレティコのことかって?いやあ、これが練習らしいことといえば、月曜に1回ぐらいしかできなかったシメオネ監督のチームにも関わらず、思わぬ効率の良さを発揮したんですよ。まずは前半17分、FIFAがFA(イングランドサッカー協会)の課した10週間サッカー活動禁止処分に一時停止命令を出してくれたおかげで先発に復帰したトリピアーがエリア内に送ったパスをコレアが受け、繋ぐかと思いきや、クルリと回ってシュート。GKボノとゴールポストの狭い隙間を通って、先制点になっているんですから、ビックリしたの何のって。

残念ながら、再びトリッピアーが上げたクロスから、ルイス・スアレスが放ったvolea(ボレア/ボレーシュート)はボノにparadon(パラドン/スーパーセーブ)されてしまったため、1-0のまま、ハーフタイムに入ったんですが、やはりキックオフ前にすでにマイナス5℃となっていたスタンドで待機していた控え選手たちは相当、辛かったんでしょうね。後半になると、座席のない奥のスペースに並べたエアロバイクを漕ぎながら、電気ストーブで暖を取っていましたが、ピッチでは「En la segunda parte no pudimos tener la pelota e hicimos un gran trabajo defensivo de todos/エン・ラ・セグンダ・パルテ・ノー・プディモス・テネール・ラ・ペロータ・エ・イシモス・ウン・グラン・トラバッホ・デフェンシボ・デ・トードス(後半、ウチはボールをキープすることができなくて、全員が素晴らしい守備の仕事をした)」(シメオネ監督)という展開に。

セビージャレアル・ソシエダに3-2と競り勝ったばかりでしたし、あまり相性も良くないため、このままだと遅かれ早かれ、追いつかれるんじゃないかと私もヤキモキしていたんですが、21分にはシメオネ監督がレマルとカラスコジョアンフェリックスとサウールに交代。これが功を奏したか、その10分後にはスローインから始まったプレーマルコス・ジョレンテが持ち上がり、右サイドからラストパスを送ったところ、ゴール正面でボールをコントロールしたサウールが2点目のゴールをゲットって、いやもう、大船に乗った気でいていい?

何せ、サウールと言えば、今季はなかなか本調子になれず、コパ2回戦でコルネジャ(2部B)に敗退した後など、メンタル的にいけてないと当人も告白していたため、私も結構、心配していたんですけどね。シメオネ監督も「Como todo en la vida, primero el que tiene que querer salir de la dificultad es uno mismo y Saúl lo quiere/コモ・トードー・エン・ラ・ビダ、プリメーロ・エル・ケ・ティエネ・ケ・ケレール・サリール・デ・ラ・ディフィクルタッド・エス・ウノ・ミスモ・イ・サウール・ロ・キエレ(全ての人生においてそうであるように、困難な状況から抜け出すには、自身が望まないといけなくて、サウールはそれを望んだ)」と言っていたように、「Es el primero gol que le puede dedicar a mi mujer y a mi hija que pronto va a nacer/エス・エル・プリメーロ・ゴル・ケ・レ・プエデ・デディカル・ア・ミ・ムヘル・イ・ア・ミ・イハ・ケ・プロントー・バ・ア・ナセール(彼女ともうすぐ生まれてくるボクの娘に捧げられる最初のゴール)」(サウール)という、この今季初得点、6月のバルサ戦以来のゴールがきっと、以前のような溌剌としたプレーを取り戻すキッカケになってくれるんじゃないでしょうか。

結局、「ウチは前の試合の後、3日しか経ってなくて、相手には7日あった」(ロペテギ監督)というセビージャは最後まで得点することなく、アトレティコは2-0で勝利したんですが、この展開はまさにファンが思い描いていた通り。ええ、2位のお隣さんと3位のバルサは来週ミッドウィークの19節をスペインスーパーカップ参加に伴い、前倒しで消化しているため、来週末までリーガ戦がありませんからね。その時にはエイバル戦の勝ち点3を足して、それぞれ7差、10差とアトレティコが独走態勢に片足をかけることになっているかもしれませんし、何より、昨年は週2試合ペースが延々と続き、クリスマスもろくろく休めなかった選手たちには一息入れる、いい機会かと。

折しも木曜には冬の戦力補強として、電撃退団したジエゴ・コスタの代わりを務めるFW、24才と若いムサ・デンベレがオリンピック・リヨンからレンタル移籍で加入。すでに同胞のコンドグビアとマハダオンダで練習していましたし、金曜のワンダでのセッションにも参加と、昨年12月半ばに骨折した腕もほぼ完治しているのは朗報でしょう。セビージャ戦でネンザしたエルモーソもこれだけ次の試合までに間が空けば、大丈夫かと思いますが、時間があっても解決しないのは5枚目のイエローカードをもらったコケの出場停止処分。まあ、エレーラのリハビリも終わりに近づいているようですし、どちらにしろ、まだ先のことですから、今は気にしても仕方ありませんって。

そして水曜にはまず、女子のスペインスーパーカップ準決勝でアトレティコバルサと1-1で延長戦突入の末、PK戦にもつれ込む死闘に。これがまた、どちらも失敗しまくって、3-1で勝ったアトレティコがレバンテと土曜に決勝戦をプレーという結末になったんですが、男子の準決勝の方もメッシを負傷で欠いたバルサがオジャルサバルのPKでレアル・ソシエダに1-1に追いつかれ、こちらも延長を経てPK戦となったのはただの偶然。バウティスタ、オジャルサバル、ウィリアム・ホセが決められなかった相手に対し、デ・ヨングとグリーズマンがミスしながらも最後はリキ・プッチが沈めて、2-3でバルサ勝利というのも珍しいんですが、まあ、スペインスーパーカップでは昨季、アトレティコもサウールトマス(現アーセナル)が次々と失敗し、マドリーPK戦4-1でタイトルを持っていかれたなんて前例もなきにしろあらず。

それだけにもう1つの男子準決勝、木曜のマドリーvsアスレティック戦ももつれるんじゃないかと、バル(スペイン喫茶店兼バー)の営業時間を考えて、不安になったんですが、いやいや。こんな日に限って、出ちゃったんですよ。「Ellos han salido muy bien y a nosotros nos ha costado al principio/エジョル・アン・サリードー・ムイ・ビエン・イ・ア・ノソトロス・ノス・ア・コスタードー・アル・プリンシピオ(彼らはとてもいいスタートを切って、ボクらは序盤、試合に入るのが難しかった)」(アセンシオ)という、彼らの悪い癖が。そう、先週末はマドリッド上空まで来て着陸ができず、「no jugar en el Wanda el fin de semana nos vino francamente bien/ノー・フガール・エン・エル・ワンダ・エル・フィン・デ・セマーナ・ノス・ビノ・フランカメンテ・ビエン(週末にワンダプレーしなかったのは正直、ウチにとって良かった)」とマルセリーノ新監督も言っていた通り、雪のまったくないレサマ(アスレティックの練習場)でみっちりトレーニングしてきた相手は滅多にないタイトル獲得のチャンスとばかり、一気呵成にスタート。

逆に大雪中の強行フライトでストレスを溜め、パンプローナ(スペイン北部)でのオサスナ戦でも寒さと雪で実力を発揮できずにスコアレスドローで終わり、その後も丸1日、足止めされたマドリーは、いえ、月曜からはマドリッドと比べれば、春のようなマラガで練習していたんですけどね。まったく勢いに乗れないどころか、前半18分にはカルバハルの負傷で右SBを務めていたルーカス・バスケスが自陣で敵のダニ・ガルシア目掛けて真っすぐパス。まるで、どこぞのチームを連想させるミスですが、そのボールが12月のリーガ戦ではエスタディオアルフレド・ディ・ステファノ(RMカスティージャのホーム)で前半早い時間に退場。チームが3-1と負ける戦犯となり、リベンジに燃えていたラウールガルシアに渡ったのが運の尽きでした。

彼のシュートが決まり、先制点を挙げたアスレティックはそれからもアクセルを緩めず、38分には再び、ルーカス・バスケスにエリア内でイニゴ・マルティネスが倒され、PKをゲット。これもラウールガルシアがゴールに変え、0-2でハーフタイムを迎えるとは一体、どういうこと?いえ、バランがケガしてナチョが頭から入った後半、28分には何とか、バルベルデ、カセミロと繋いだボールをベンゼマがゴール前から決めて、VAR(ビデオ審判)にオフサイトを取り消されるというラッキーもあったものの、1点差に追い上げたマドリーだったんですけどね。37分のベンゼマのゴールはオフサイドのままとなり、同点には至らず。最終兵器、CFセルヒオ・ラモスもこの日はアップ中に左ヒザをケガし、痛み止めを打ってのプレーだったせいか、そのヘッドも外れるばかりと、トレードマークである根性のremontada(レモンターダ/逆転劇)もできずにあっさり、1-2で負けてしまいましたっけ。

うーん、ジダン監督はこの結果にも「No es un fracaso porque lo hemos intentado/ノー・エス・ウン・フラカソ・ポルケ・ロ・エモス・インテンタードー(これは失敗ではない。我々は勝とうとしたのだから)」と言っていたんですけどね。もう2試合連続先発となりながら、チェルシー時代の面影もないアザール、そして木曜にはヨビッチが古巣のアイントラハト・フランクフルトレンタル移籍、いつの間にか、第2CFに昇格していたマリアーノの投入も残り1分になってからと、その日はシュートを2度、枠に当てていたアセンシオ以外、最近の著しい決定力不足にまったく光明が見出せないのは困ったものかと。試合後はラ・ロサレダ(2部マラガのホーム)から、空港に直行し、6日ぶりにようやく帰京できたチームも日曜まで練習休みと、いきなりヒマになってしまったんですが…。

そんなマドリーの次の試合は水曜日、スペインスーパーカップ参加組が来週ミッドウィークプレーするコパ32強対決アルコジャーノ(2部B)戦となるんですが、何ですかねえ。2回戦で敗退したアトレティコ、ヘタフェも今週末は試合がないとなると、日曜午後9時(日本時間翌午前5時)からのスペインスーパーカップ決勝バルサvsアスレティック戦を私もまったり見るしかないってこと?ここはとりあえず、エイバルと戦う2部Bのナバセラーダを含め、マドリッドの2部4チームができるだけ多く、生き残ってくれることを祈るばかりでしょうか。


【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
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