2020年は芸人が本格的にYouTubeに参入する1年だった。今やYouTubeテレビで活躍する人気芸人だけではなく、無名な若手芸人にとっても重要なツールとなっている。

 2019年8月にスタート以来、わずか1年半で8万人以上の登録者を抱える人気チャンネル「岡田を追え!!」の岡田康太さん(30)は、他の芸人には見られない独特のコンテンツを発信し、大きな注目を集めている。

岡田
「岡田を追え!!」の岡田康太さん
 前後編の2回にわたってお送りする今回のインタビュー。前編では、2021年大活躍間違いなしの岡田さんにこれまでの活躍や今後の展望について聞いた。

YouTubeの手応えは「あまりない」

「岡田を追え!!」では、岡田さんが料理をしながらトークする動画や、岡田さんとゆかりのあるゲストを交えたコラボ動画を見ることができる。8万人超の登録者数を抱えるまでになったが、岡田さん本人はYouTubeでの手応えをどう感じているのだろうか。

「正直あまりないですね。たまに視聴者さんから声をかけられることがありますが、実感は湧かないです。たぶん、最初とやってることが変わらないからかなと思います」

 本人は意外なほど実感がないらしく、インタビュー中もちらほら芸人特有の逆張り精神が顔をのぞかせる。

「逆に見られすぎても怖いな、みたいなことも思ってます。小さなコミュニティでやっておきたいという複雑な心境もあります」

YouTubeをはじめようと思ったきっかけ

岡田
※岡田さんのYouTubeチャンネルより
 現在ではほぼ毎日動画が投稿されているが、チャンネルをはじめたのは、意外なきっかけだった。

「当時はお金がなさすぎて、住所を公開して自宅でトークライブをすることになりました。それで、家でライブしている時に今YouTubeを撮ってもらっている佐野(コウ生)君が来て、僕を密着したいと相談してきたんです。

 佐野君は当時大学生だったので、大学生が芸人に毎日密着するみたいな動画を撮ったら面白いと思って、チャンネルをはじめることにしたんです」

岡田さんと佐野さんの不思議な関係

 岡田さんの動画を語る上で欠かせないのが佐野さんの存在だ。当時大学生だったが、今は岡田さんの右腕としてチャンネルを支えている。

「佐野君は最初、作家志望だったので、作家と並行して仕事をしていました。でも、2週間くらいで向いてないと思ったらしく、本格的にYouTubeの仕事に取り組むようになりました。そこで、2人で話し合い2021年までに登録者数1万人いかなかったらやめようと決め、活動をスタートしました

 2019年から岡田さんに密着し続けた佐野さんは、大学を卒業して2020年3月に岡田さんの隣の部屋に引っ越すことになる。そのときの様子はYouTubeでも見ることができる。

 次に、「岡田を追え!!」の運営実態や金銭事情について聞いてみた。これまで佐野さんが岡田さんに密着するという形式で撮影されてきたが、岡田さんは「自分のチャンネルという認識がない」と言う。

「厳密にいうと、僕に密着している佐野君のチャンネルですね。彼が言うには、佐野君が画面に映っていないYouTuberで、その佐野君が芸人としての岡田さんを追っているというコンセプトになっているんだそうです。実際に動画撮影時に会議をしたことは一切ありません。編集もどんなツッコミが入っているのかも確認していません」

スマホで撮影された動画の魅力

岡田

 会議はチャンネルをはじめる前に一度だけで、その後は一切、2人で会議をしたことがないというのは驚きだ。撮影もぶっつけ本番ということで、まさに芸人に密着したドキュメンタリーのような展開を楽しむことができる



 具体的な撮影の流れを聞くと、驚くほどシンプルだ。

「例えば前に投稿した動画を例にあげると、牛丼を作るということを佐野君に伝えるだけです。食材の準備ができたら、あとは佐野君を呼んで、そのまま撮影がはじまります。細かい段取りや台本などは一切ありません

 動画は全てスマホ撮影という手作り感もチャンネルの持ち味だ。実際『ファストライク!』(ABCテレビ)で地上波に出演した際も、普段通りスマホで撮影された岡田さんの姿を見せたという。

岡田康太のギャグづくりのテーマ

「岡田を追え!!」では、岡田さんの日常生活だけでなく、数々のギャグを見ることができる。撮影自体は台本なし、一発撮りということだが、ネタについてはどう考えているのだろうか。

「あらかじめ思いついたものをメモしています。よく中毒性があると言われますが、自分自身がしつこいギャグが好きすぎるんですよね。『まだ言ってるやん! もうええって!』というくらい何回も言ってるのに、本人ははじめてかのように言っている。そういうネタが好きなんですよ。」

 確かに、複数の動画で似たようなネタが繰り返され、その反復がクセになる。たとえば料理などでレモンを使うとき、岡田さんはそのたびに「レモンの皮にはリモネンという成分が含まれていて……」などとウンチクを言う。動画のテロップではツッコミが入るが、本人は気にする素振りもなく、淡々とうんちくを言う。そのシュールな姿が癖になるのだ。

岡田

 しかし、これらのギャグはあくまで自分の好みであり、決して登録者数を増やそうと考えだしたものではないと言う岡田さん。

「まさかここまで登録者数が増えるとは思わなかったですね。逆に、どんだけバズらさんとこうかみたいなことも思ってて。だから、登録者数が1万人を超えて以降は自分で何も企画はやらないようにしてたんです。そしたら先輩のAKIさん(元芸人のFXトレーダー)に自然にお祝いしてもらえるようになって、それが2万人、3万人……と恒例になりました」

YouTubeの流行はあえて追わない

 最近のYouTubeでは動画の長時間化が進んでいる。長時間の動画はそれだけ広告を多く入れることができるため、収益が得やすい構造になっているためだ。しかし、「岡田を追え!!」ではこのようなトレンドをあえて意識せず、自分のスタイルを貫いている。

僕たちの動画はほとんど4分くらいの動画になっているんです。佐野君とは最初に言ったことを変えないでおこうと話してます。ロケっぽくするとか、企画っぽくするとか、そういうのはやらない。単純に僕が面白いと思ったことをその場でやって、佐野君がテロップを入れるやり方を貫いています」

 動画の質感は「作りこみすぎない」という彼らの考えによって作り出されている。本格的な撮影環境を用意するYouTuberが増える中、このような手作り感が人を惹きつけているのかもしれない。

YouTubeの収益はおもしろいことに

岡田

 最後に現在の収入についても聞いた。チャンネルの収益は岡田さんと佐野さん二人で折半だというが、それでも若手芸人にとっては大きな収益を得ている。

正直、収益は結構あります。でも、その収益は自分で使うというよりは、おもろいことに使いたい。この前みたいに家賃と同じ値段の生ハムの原木を買ったり(笑)チャンネルに出てくれる後輩芸人の入院費を全額負担するなどしています」

 収益の使い道はやはり芸人だ。岡田さんは、収益がさらに増えても現在の家に住み続けるという。この先も「岡田を追え!!」の風景は変わることがなさそうだ。

 近日公開予定の後編では、「岡田を追え!!」にたびたび登場する豪華な芸人たちとの関係性について掘り下げる。

<取材・文・撮影/江連良介>

【岡田康太】
1990年生まれ。「なかよしビクトリーズ」のコンビ時代を経て、2020年10月よりピン芸人に。港区西麻布の一等地にある家賃3万7千円のアパートに住むYouTubeチャンネル「岡田を追え!!」が話題に。自身のファンクラブ「岡田とシェアハウス」も開設
Twitter:@morumokoko

【江連良介】

ライター編集者。書籍・WEB問わず、テクノロジー、福祉、環境、法律、政策分野などで多数執筆している。硬めの話題が多いが、最近はソフトな記事にも挑戦中。北海道から働き方を考える日々。ツイッター(@ezure_ryosuke