ワームホールが宇宙に潜んでいる可能性

ワームホールが宇宙に潜んでいる可能性/iStock

 一般相対性理論によって、時空という物理学の基本的コンセプトに関する理解は根本から変わってしまった。だからといって、宇宙の謎がすべて解けたわけではない。

 その謎の1つが、時空のある1点と別の1点をつなぐという「ワームホール」という存在だ。

 現時点でワームホールは仮説上の存在で、現実に観測されたことはない。だが、ここ最近の研究によるならば、その発見も間もなくだろうという見解もあるという。

 さらにこれまで多くの科学者が夢見ながら、いまだ成し遂げられていない量子力学一般相対性理論の統一を進める鍵である可能性もある。

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ブラックホールとワームホール

 ワームホールブラックホールは、アインシュタイン方程式の特殊な解で、重力によって時空が大きく曲げられることで出現する。

 たとえば、ある物体が超高密度になると、光すら逃げられないほどに時空が曲がってしまう。これがブラックホールだ。

 このように、一般相対性理論では、時空は曲がったり伸びたりするものと想定している。

 そこでアインシュタインとネイサン・ローゼンは、2枚の時空の布を合わせて宇宙のある場所と別の場所とを橋渡しできないだろうかと考えた。これを「アインシュタイン-ローゼンブリッジ」という。すなわちワームホール(の一種)だ。

ワームホール

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ワームホールを通過してワープする


 そうしたワームホールは中を通過できる可能性がある。そしてこれができるならば、人間ははるか彼方の宇宙まで近道して移動することができるだろう。

 しかしそのためには、通行中にワームホールが重力で閉じてしまわないようにしなければならない。それに必要になるのが、時空を外側に広げてくれる「負のエネルギー」だ。

 ワームホールと同様、負のエネルギーもまた仮説上の存在のように思えるが、じつは少量ならすでに作り出すことに成功しているという。また宇宙の膨張を加速させている力であることも分かっているとのことだ。

ワームホール

Pixabay

ワームホールの存在を証明するには?


 ではワームホールの存在を証明するにはどうすればいいだろうか? ロシア天文学者の研究によれば、ガンマ線が手がかりになるという。

 その論文の計算によれば、ワームホールに入ろうとしている物質がそこから出てきた物質と衝突すると壮大なガンマ線が発生するのだという。これを観測することができれば、それがワームホール存在証明になる。

 またそうした放射線は、ワームホールブラックホールを区別する手がかりになる可能性もあるようだ。

 これまで外見から両者を区別することはできないとされてきたが、ブラックホールの場合はガンマ線が少なく、ジェットとして放射する。一方、ワームホールならそれは巨大な球の中に閉じ込められると考えられるそうなのだ。

観測されたブラックホール


ワームホールはどこにあるのか?


 その研究によれば、ワームホールは非常に明るい銀河の中心にある可能性があるという。そうしたワームホールは通行可能だが、決して快適なものではない。

 というのも活動銀河の中心に近いために、熱で何もかもが焼き尽くされてしまうからだ。だが、もっと銀河の中心から離れたところにあるワームホールなら、そんな酷い目に遭わなくてもすむかもしれない。

 なお銀河の中心にワームホールがあるという説は、新しいものではない。たとえば天の川銀河の中心には超大質量ブラックホールが鎮座している。

 このことは、その周辺で重力の影響を受ける星々の軌道を丹念に観察することで明らかにされた(なお、これを発見した研究者には2020年ノーベル物理学賞が贈られている)。

ワームホール

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ワームホールによって重力が生じている可能性


 中国とアメリカグループによる研究は、そうした重力がワームホールによっても生じている可能性があると述べている。

 ブラックホールと違うのは、ワームホールの重力はその反対側から漏れているということだ。そしてそれが銀河中心の近くにある星々の動きにわずかな影響を与えているだろう。

 これを検出できれば、それもまたワームホールの証明になる。近い将来、観察機器の性能がもう少し改善すれば、そうした影響を観察できるようになるそうだ。

 ちなみに最近になって「不規則電波サークル」というものが発見されている。

 それは巨大でありながら、目に見える天体の中には関連するものがないという奇妙な現象だ。従来の宇宙理論でうまく説明することができておらず、その原因としてワームホールを指摘する声もあるらしい。

ワームホールが量子力学と一般相対性理論をつなぐ鍵に

 ワームホール量子力学一般相対性理論をつなぐ鍵になるかもしれないという。

 たとえば量子力学では、何もない空間から粒子がパッと出現し、またすぐに消失することがあると説明されている。実際、この現象はいくつもの実験で確認されている。

 そして宇宙の初期においては、そうやって現れては消える粒子の泡からワームホールが形成された可能性もあるのだという。

 さらに最近の「量子テレポーテーション」の実験で行われたことは、ワームホールでつながれた2つのブラックホール不気味なほどの類似点がある。

 それどころか「ブラックホール情報パラドックス」(ブラックホール内部で物理情報が消失すると考えると、情報は不滅とする基本的物理法則と矛盾する)を解決しているかのような印象すらあるという。

 このようにワームホール量子力学一般相対性理論のどちらとも関連している。ミクロの世界とマクロの世界を扱う両理論は、それぞれの分野では物理現象を完璧なまでに説明してくれるにもかかわらず、互いにうまく調和しないことで悪名が高い。

 しかしワームホールは量子と重力の深いところにあるつながりを示唆しており、両理論を橋渡しできる可能性がある。もしかしたら、それが万物の理論を完成させるヒントになるかもしれないそうだ。

References:Wormholes may be lurking in the universe – and new studies are proposing ways of finding them/ written by hiroching / edited by parumo

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52298416.html
 

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