◆一律現金給付の効果で、GDP押し上げ・失業率低下

 新型コロナウイルス感染拡大で、リーマンショック時をはるかに超える大きな打撃を受けている日本経済。厚労省によれば、2020年1月から2021年1月6日までの失業者数は8万人を超えたとのこと。さらに、1月8日に発令された2度目の緊急事態宣言で経済の落ち込みは深刻化し、失業数が増えることが危惧されている。

 こうした中、2020年2月から何度も政府に対して国民全員への現金給付を求めてきたのが、「日本経済復活の会」会長で、日本ベーシックインカム学会理事の小野盛司氏だ。同氏は国内で最も歴史が長く信頼性の高い経済シミュレーションツール「日経NEEDS 日本経済モデル」を用い、政府が国民への現金給付を行った場合の経済予測を行っている。

 小野氏は「少なくとも日本経済が完全に復活するまで、政府支出で毎月10万円、国民全員に現金給付を行うべきです」と強調する。「給付が行われなければ、落ち込んだ日本経済は復活しません。もし給付が行われたら、GDPが押し上げられて失業率も低下します」と訴えている。

◆現金給付の額が多ければ多いほど、日本経済の回復は早くなる

 日経NEEDSを用いた経済予測・分析による政策提言を2002年より行い続けてきた小野氏。コロナ禍を受けて、同氏は「現金給付こそが日本経済の復活のカギである」と、その主張を著書『毎年120万円を配れば日本が幸せになる』扶桑社)にまとめた。

「政府からの1人あたりの年間給付額を、40万円(月3.3万円)、80万円(月6.6万円)、120万円(10万円)と、パターンごとにシミュレーションを行いました。その結果は劇的なものでした。

1人あたりの現金給付の額が多ければ多いほど名目GDPは上昇する。Q1=1~3月、Q2=4~6月、Q3=7~9月、Q4=10~12月。(『毎年120万円を配れば日本が幸せになる』より)

 2020年の10~12月から給付したと仮定した場合、年40万円のケースでも約1年後の2022年の1~3月には、日本の名目GDPコロナ以前の日本の名目GDP(約550兆円)まで回復します。年80万円のケースならさらに早く、2021年の4月~6月か7月~9月頃には、コロナ以前の水準まで戻ります。つまり、給付額が多ければ多いほど日本経済の回復は早くなるのです」(小野氏)

◆給付が行われなかった場合、経済の落ち込みは長期間にわたる
 一方、給付が行われなかった場合、コロナ禍による経済の落ち込みは長期間にわたるという。

コロナ以前の水準には、今後2年経っても、つまり2023年の1~3月になっても戻らず、日本経済は低迷し続けます」(小野氏)。

 失業対策としても、給付金は効果的だ。個人消費が伸び経済が活性化することによって求人が増えるからである。

失業率も、年間給付金額が多ければ多いほど早く下がっていく。Q1=1~3月、Q2=4~6月、Q3=7~9月、Q4=10~12月。(『毎年120万円を配れば日本が幸せになる』より

シミュレーションによれば、2021年の1~3月の失業率は3.8%。給付なしの場合では、2年後の2023年1~3月でも失業率は3.4%と深刻です。これに対し、1人あたり年間80万円給付の場合には、2023年の1~3月には、失業率は2.52%まで低下するとの結果を得ています。

 年間120万円の場合は、2022年10~12月以降は日経NEEDSでも計算不能ですが、少なくとも給付1年で失業率が大幅に低下することは確実です」(小野氏)

◆企業にお金をばらまくよりも、個人に直接ばらまいたほうが効果的

「政府が広く給付金を各個人に配るべき」という小野氏の提案に対して「財源はどうするのか」という指摘は当然あるだろう。日本政府として財政健全化を目指す中で、特に財務官僚やその影響を受けた政治家メディアは「ばらまき」に対して批判的だ。

 だが、前掲の書籍『毎年120万円を配れば日本が幸せになる』の共著者である井上智洋・駒澤大学経済学部准教授は「実は、企業に対する『ばらまき』はこれまでも行われ続けてきたのですよね」と指摘する。

「日銀やGPIF年金積立金管理運用独立行政法人)は、ETF(上場投資信託)を大量に買い入れ、株価をつり上げるということがこの間、ずっと行われているのです」(井上氏)

実はコロナ以前から、企業・株主へのばらまき=経済的支援は行われていた。(『毎年120万円を配れば日本が幸せになる』より)

 つまり、政府と日銀は公的資金を用いて日本株を「爆買い」して、支え続けてきたということなのである。特に日銀の年間ETFの買い入れ限度額は拡大され続け、12兆円にも達している。企業や株主にばらまくのがOKなら、国民全体に直接ばらまいて生活を支えてもいいのでは?

「日銀などのETF買いを全面否定はしませんが、『生活を守る』という点においては、政府が人々へ給付を行ったほうが有効なのではないかと思います。財源は国債を発行すれば良いでしょう。大量に発行された国債を、いったん民間銀行を介しつつ最終的には日銀が引き受けるということも、この間行われ続けていますから」(井上氏)

 コロナ禍は「100年に1度の経済危機」と言われたリーマンショックの倍以上の経済的な損失を日本経済にもたらしていると言われる。それならば政府としての対策も、それに相応する思い切ったものであるべきだろう。小野氏や井上氏が求めている国民への継続的な定額給付を、緊急に検討することが必要なのではないか。

<文/志葉玲(ジャーナリスト) 図/ジェイマップ

【志葉玲】
戦争と平和、環境、人権etcテーマに活動するフリージャーナリスト。著書に『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、共著に『原発依存国家』(扶桑社)、 監修書に『自衛隊イラク日報』(柏書房)など。