離婚の理由は夫婦によってそれぞれ異なるが、中にはなかなかにヘビーな出来事がきっかけで別れを選択することもある。

 今回話を聞いたのは関西で地方公務員として務める沢田美沙さん(仮名・32歳)。学生のときはいわゆる「ギャル」で遊びまくっていたという沢田さん。しかし、高校のときに両親の離婚を経験。苦労する母の姿を見て猛勉強の末、大学を受験して安定した公務員への道へと進んだ。

◆23歳で結婚

「夫とは23歳のときに結婚しました。知り合ったのは学生のときで、彼はすでに水道会社の契約社員として働いていました。私が大学を卒業して今の職場に勤めてからは、職場が遠いのであまり会えなくなってしまって。母も彼のことを気に入っていてくれていたし、安心させたいという気持ちもあって入籍したんです」

 沢田さんは新卒ということもあり、結婚当初は夫のほうが稼ぎが良かったという。しかし、夫はいつも決まってこう言うのだった。

「夫はすごく向上心の高い人で、常に『稼ぎたい』というのが口癖でした。契約社員とはいえ、子供がいるわけではないし十分に生活できるほどの収入はあったので、私は特に不満はなかったんです。でも、夫からすれば、あと数年も経って私の年収のほうが多くなることを不満に思っていたようです。『美沙はこれからどんどん稼ぐようになるけれど、俺はボーナスすらもらえない。嫁に養ってもらうなんてまっぴらごっめんだ』と、よく漏らしていました」

◆夫が転職。収入増も…

 夫が転職したのは、結婚してまもなくしてからだった。

「夫の知り合いに仕事を紹介してもらい、転職することになったんです。仕事内容を聞くと『不動産』とだけ言っていました。夫はビルの管理を任されるようになったようで、収入も今までとは比べ物にならないほどもらえるように。

 でも、不思議なことに給料を銀行に預けずに、金庫を買って家で保管するようになったんです。どうして銀行に預けないのかと尋ねると『これは会社の金で預かっているだけだから』と言うんです。私は不動産のことはよく分からなかったし、それ以上聞こうとすると夫も不機嫌になるので、少し変だなと思いつつも夫をどこかで信じていたんです」

 ちょうどその頃から、夫の金遣いが荒くなったという。

「それまで夜遊びなんて興味なかったのに、毎晩遅くまで飲み歩き泥酔して帰る日が増えたんです。夫いわく、仕事を紹介してもらった人に恩があるから飲み会は絶対に断れないとのこと。その頃、私はそろそろ子供を作ることを考えていたのですが、夫がそんな生活になってしまったのでなかなか言い出せず。

 それに、私自身がお酒好きで酔っ払って夫に面倒を見てもらっていたこともあったので強く注意することもできませんでした。夫は子供について『俺は今の生活で満足しているし、子供を作るとさらに金が必要になる』と協力的ではありませんでした」

◆突然の、税務署からの任意調査

 夫の様子を不審に感じながらも、それ以上詮索することはしなかった沢田さん。しかし、事態は一変する。

「夫の会社に税務署からの任意調査が入ったのです。自宅でお金を保管していたので、私が家に帰ると夫は慌てて金庫を持ち出そうとしているところでした。問い詰めると、実は夫が管理していたビルの一室は特殊詐欺のアジトだったんです。

 でも、夫はそのことを知らなかったようで『ただ、お金が欲しかった……』とひたすら泣いて謝られました。それを聞いたとき、夫は知り合いに騙されていただけだと知ったんです。でも、私の公務員という立場を考えると、黙って離婚の道を選ぶしかありませんでしたね」

◆元夫は消息不明

 それからまもなくして離婚は成立。沢田さんが後に聞いた話によると、夫が働いていた不動産会社は摘発され、その後の夫の行方はわからないという。

 離婚から数年経ったいま、沢田さんは別の男性と再婚して子供にも恵まれている。夫婦格差がきっかけで生んでしまったこの離婚体験。彼女自身の経歴に直接、影響がなかったことだけが唯一の救いなのかもしれない。<取材・文/結城>