一般的に離島の漁港といえば、海に面した場所に比較的こぢんまりと存在するイメージですが、沖縄県にある絶海の離島、南大東島には、その概念を覆すような立派な漁港が存在します。作り方も超レアな漁港はなぜ生まれたのでしょうか。

離島の離島に出現する「要塞漁港」

多島国家である日本は、有人島であれば必ずと言ってよいほど港があり、そこにはたいてい漁船が係留されていることが多いです。そのため、離島の漁港というと、一般的には比較的こぢんまりと存在する……というイメージが多いかもしれませんが、沖縄の本島からさらに約350km東に位置する絶海の離島、南大東島には、その概念を覆すような、島の規模に比べ、あらゆる意味で立派に整備された漁港が存在します。

南大東島の北側に位置する南大東漁港は、南北100m超、東西500m超の広さを持つ巨大なもの。それだけではなく、高低差は数十mにわたり港自体が塀に囲まれているようにも見えます。そのさまは、まるで要塞のようなつくりといえるほどです。

要塞に思えるような構造なのは、全国でも類のない「大規模な岩盤掘り込み方式」の工法で整備されたからとのこと。掘り込んだ岩量は、東京ドーム2杯分にも相当する、約250万立方メートルにもなるそうです。ちなみに、同島から15kmほど離れた北大東島にある分港(南大東漁港北大東地区)も、同じ工法で造られているといいます。

要塞みたいな巨大漁港 なぜ離島に出現?

なぜ、ここまでの大工事をして港を整備したのか、沖縄県によると、南北の両大東島周辺は、マグロ・ソデイカ等の回遊魚が豊富な海域ではあるものの、両島とも外周が絶壁という特有の地形により、港湾機能が貧弱であったことから漁業活動が制限され、漁業振興を妨げていたからとしています。

しかも漁港整備前は、船舶が直接停泊できなかったことから、漁船はクレーンで陸地に上げていたとのこと。これだと漁船のサイズもクレーンの重量制限に左右されるため、大きなものは使えなかったそう。それが、現在のような港が整備されたことで状況が大幅に改善されたほか、これまでより大きな漁船も使えるようになったとのことです。

漁船の大型化は漁獲量の拡大だけでなく、耐波性の向上ならびに船舶無線や救難装備の充実化など、漁師の安全性向上にも寄与します。よって、一見すると島の規模には不釣り合いに思えるような大規模な港ではあるものの、島民の暮らしを守るという意味では必要だったといえるでしょう。

南大東漁港。外洋の荒波から船を守るための整備もしっかり行われている(2020年12月、乗りものニュース編集部撮影)。