東京建物株式会社(以下、東京建物)、株式会社TOKAIコミュニケーションズ(以下、TOKAIコミュニケーションズ)、株式会社内田洋行(以下、内田洋行)は、東京建物八重洲ビル7階の東京建物ビル事業本部のオフィスフロア(以下、本フロア)にて、AIによる空調制御の実証実験を実施しました。今回の実証実験では、本フロアにおける温度ムラの解消と約5割の消費エネルギーの削減を達成しています。
■実証実験の背景
個別空調を採用しているオフィスビルでは、ゾーンごとに空調機が設置され、それぞれの空調機が人によって好みの温度に設定できるようになっています。しかし直近では、在宅勤務テレワークの進展、フリーアドレスの導入など、オフィスワーカーの働き方の多様性が広がり、ゾーンごとの滞在人数やパソコン等の稼働熱量などは日々異なります。そのため、個人による空調温度設定では、日々刻々と変化する多様なオフィスワーカーのニーズに即時に合わせることが難しくなっています。また、隣接する空調機がそれぞれに異なる設定温度を維持しようと干渉し合ってしまうと、不要な負荷が発生し、空調費用の増加などの課題が生じてしまうことがあります。

■実証実験の今後の展開について
本実証実験では、上記課題を解決するため本フロアに65個の無線センサーを設置し、それらのデータを基にAIが本フロアの39台の空調機制御を行なった結果、夏期と秋期における温度ムラの解消と秋期における約5割の消費エネルギー削減に至りました。今後は四季を通してAIによる空調制御を実現させるために、冬期から春期における実証実験の実施やオフィスの人口密度などの要素が変わった場合でも、同様の効果が得られるかを検証する予定です。加えて、東京建物八重洲ビル内で実証実験対象フロアの拡大も予定しています。実証実験の検証結果を踏まえ、AIによる空調制御に用いるパラメータの調整を行い、更なる快適なオフィス空間の提供と省エネルギーの達成を実現してまいります。


          <図1:オフィスでのAIによる空調制御の実証実験システム構成図>



■実証実験の概要
1.オフィス空調機器の課題
・個別空調方式では、空調機とセンサーが1対1の関係で温度制御を行う方式が一般的である。隣接する空調機が
 それぞれに異なる設定温度を維持しようとした場合、相反する運転となり、空調費用が増加してしまう可能性
 がある。
オフィスワーカーの人数やパソコン等の熱負荷の変化があった場合、即時に追従できない。
・AIを用いずに多数のセンサーデータで多数の空調機を制御しようとした場合、制御ロジックが過剰に複雑化して
 しまう。

2.実証実験の詳細
本実証実験は第一段階として位置付け、夏と秋の空調を対象に実施しました。下記の利点を享受できるAI技術により、AIの事前学習を行った後、2020年7月27日11月27日の期間に、本フロア全体が26℃を中心に±2℃の範囲を維持するようにシステムを設計・運用しました。なお、無線センサーは、ワイヤレス通信の技術を用いて、立って仕事をする場所や座って仕事をする場所などに合わせて、オフィスワーカーが温度を体感できる位置に設置しています。
・室内に設置した多数の無線センサーのデータをもとに、多数の空調機をAIにて制御する空調機の群管理が可能
・無線センサーからデータを収集、インターネットを経由してクラウド上のAIへ送信、AIが空調機に対する操作指
 令を送信することで空調操作の自動化を実現
・大量のデータを基に統合的に空調機の群管理を行うことで、個人の感じ方の差に影響を受けず、データに基づい
 た制御を行うことが可能
・AIは強化学習モデルを利用しており、運用を続けることにより空調制御の精度が向上
<7階フロアの様子>
<個別空調をAIにて制御>


■結果詳細
今回の実証実験では、1.「夏期における温度ムラの解消」と2.「秋期における消費エネルギーの削減」を達成しています。

1.「夏期における温度ムラの解消」(7月27日から8月31日まで実証)
AI制御の場合、室内の利用状況の変化等によって、一時的に26±2℃の目標温度帯を外れてしまう箇所が発生したケースでも、目標温度帯に速やかに復帰しています(表・図2:「AI制御時」参照)。
一方で、人が室温設定操作をした場合、暑く感じたオフィスワーカーが20℃に設定したケースでは、長時間にわたり26±2℃から外れたエリアが発生しました(図2:「手動制御時」参照)。
このように、AIが多量のデータを分析し、手動制御よりも高頻度(6分間に1回)での温度変更を行うことで、人が操作することを前提とした従来の空調制御では対応しきれなかったような環境変化にも追従できたものと判断しています。

<表:手動制御とAI制御による温度調整差異>


<図2:本フロアにおける空調の手動制御とAI制御による室温変化>

2.「秋期における消費エネルギーの削減」(10月5日から11月27日まで実証)

下記グラフの通り、10月と11月の秋期において、AIによる空調制御を行った7階の空調消費電力は、東京建物が同規模の面積を利用している8-10階の平均と比べて消費エネルギーを50%程度に抑えることが出来ました。早朝以外暖房を使わずほとんどの時間を冷房モードのみで26±2℃の目標温度帯を維持することが出来ました。個人の感覚ではなく、データを基に不要な暖房を減らせたことが消費エネルギー削減の要因です。

      <東京建物八重洲ビルフロア別消費電力の変化(オレンジが本フロア消費電力)>


■本実証実験の各社取組経緯
各社の強みやノウハウを活かして、本実証実験を三社協働で推進しています。今後は、本実証実験で得られた成果を活かし、更なる快適なオフィス空間の提供と省エネルギーの達成を目指してまいります。

1.東京建物
オフィス、商業施設等の多様な不動産の開発、運営・管理事業において、新しいデジタルテクノロジーの活用によるお客様満足度および事業収益性の向上に取り組んでおり、毎年「ビル環境・スタッフ対応についてのお客様満足度調査」を実施しています。昨今の調査では、「空調温度、湿度の設定・管理」についてのご意見・ご要望が多数あり、当社としても改善の余地があると考えていました。
本実証実験において、当社のオフィスを実証実験の場として環境整備し、提供するとともに、全体の取りまとめを行うことで、施設管理現場の課題解決・生産性向上に向けた様々なデジタルトランスフォーメーション(DX)活動を更に強化してまいります。

2.TOKAIコミュニケーションズ
豊富なシステム開発実績やクラウド導入実績をベースに、データセンター事業者に向けて、AIを利用したサーバルーム空調機の自動制御機能を構築、空調機電力量を最大30%削減するという実績をあげてまいりました。また、同時に各種センサーデータの見える化を実施し、AIと合わせデータセンター運用のDXに貢献してまいりました。
今般AIの自社開発とシステム構築を通じ、クラウドエンジニアとAIエンジニアの技術力向上にも取り組んでいます。本実証実験において、空調制御を行うAIの構築と調整を行いました。

3.内田洋行
クラウドを用いたビルの多棟管理、空調や照明など各種設備の遠隔稼働監視、異常検知、さらにはビル設備を手元のスマートフォンやタブレットで操作するなど、IoTインテグレータとしてスマートオフィスの実現を支援しています。本実証実験において、無線センサーの設置とセンサーデータを収集するシステムの構築に加え、制御信号をAIから受信し、空調機へ送信をするシステムの構築を行いました。


【各社概要】
■東京建物株式会社
本社所在地       :東京都中央区八重洲1-4-16
創立          :1896年10月1日
資本金         :924億円
代表取締役 社長執行役員 :野村 均
従業員数        :655名
主な事業内容      :オフィスビル・商業施設等の開発、賃貸及び管理、マンション・戸建住宅の開発、
販売、賃貸及び管理、不動産の売買、仲介及びコンサルティング・駐車場の開発、
運営、リゾート事業、資産運用事業、海外事業、不動産鑑定業
ホームページ      :https://www.tatemono.com/

■株式会社TOKAIコミュニケーションズ
本社所在地       :静岡県静岡市葵区常磐町2-6-8
創立          :1977年3月18日
資本金         :12億2,148万円
代表取締役社長 :福田 安広
従業員数        :1,268名
主な事業内容      :通信事業、データセンター事業、システムインテグレーション事業等
ホームページ      :https://www.tokai-com.co.jp/

■株式会社内田洋行
本社所在地       :東京都中央区新川2-4-7
創立          :1910年2月
資本金         :50億円
代表取締役社長     :大久保 昇
従業員数        :3,184名(連結)
主な事業内容      :民間・公共向け環境構築関連事業、民間・公共向けICT関連事業
ホームページ      :https://www.uchida.co.jp/

配信元企業:東京建物株式会社

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